目黒女児〈船戸結愛ちゃん〉虐待死事件 母親判決 詳報 2019.9.17

2019-09-18 | 身体・生命犯 社会

 【目黒女児虐待死、母親判決詳報】(上)懲役8年判決 大好きだった実母からも苛烈な食事制限…裁判長「苦しみ、悲しみ、絶望感は察するに余りある」
 2019.9.17 17:00|
 
《東京都目黒区で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=が両親から虐待を受けて死亡したとされる事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里(ゆり)被告(27)の裁判員裁判の判決公判が17日午後3時、東京地裁で始まった》
 《守下実裁判長の合図で優里被告が入廷した。上下黒のスーツに黒いブラウスを着用。裁判長に着席を促されると小さくうなずき、着席後は無表情に下の方を見つめた》

 裁判長「被告人は証言台の前に来てください」

 裁判長「主文、被告人を懲役8年に処する。未決勾留日数中300日をその刑に参入する」

 《その後、裁判長により量刑理由の読み上げが始まった。まずは、虐待の苛烈(かれつ)さが指摘された。結愛ちゃんへの食事制限は、平成30年1月23日に一家が香川県から上京して以降、極端に厳しくなったという。結愛ちゃんの体重は1月4日時点で16・6キロだったのに対し、死亡時には約12・2キロだった》

 裁判長「わずか1カ月あまりの間に体重の約25%が失われたことになる上、解剖時の所見や現場に駆けつけた消防隊員の証言からも、被害児童がほおがこけ、骨が著しく浮き出ると言った異常なやせ方をしていたことが認められるのであるから、被告人らによる食事制限は明らかに不相当で苛烈なものであったといえる」

 《裁判長は、優里被告と、夫だった雄大被告(34)=同罪などで起訴=の行為を厳しく指弾した。次に、結愛ちゃんを保護しなかった「不保護」についての説明が行われた。優里被告らは香川県の関係機関に転居先を教えず、品川児童相談所の訪問は優里被告自らが対応して拒絶した》 

 裁判長「さらに、上京後は2回のごみ捨て以外、被害児童を外出させることもなかったのであるから、被害児童の生存の維持はひとえに被告人らに委ねられている状況にあった」

《しかし、結愛ちゃんが亡くなるまでの約3日間、結愛ちゃんが嘔吐(おうと)し、異常なやせ方をしていることを認識していたにもかかわらず、医療措置を受けさせなかった》

 裁判長「不保護の態様は悪質で、その意思決定も強い非難に値する」

 《結愛ちゃんの遺体には新旧混在する多数の皮下出血などがあった》

 裁判長「被告人において、雄大によるこうした暴行をどの程度認識していたかについては、必ずしも明確ではない。しかし、少なくとも、被害児童が要保護状態に陥る前に、雄大によって被害児童の顔面がひどく腫れるような暴行が行われたことを認識しながら、『やめて』とは言ったものの、それ以上に適切な措置を講じず、結果的に雄大の暴行を容認する状態になっていた」

 《最後に、結愛ちゃんの受けた身体的、精神的苦痛についての言及がなされた》

 裁判長「大好きだった実母である被告人からも苛烈な食事制限を受けた上、やせ細り、嘔吐し、体が食事を受け付けなくなり、意識も薄れ重篤な状態になってもなお医療措置を受けさせてもらえないまま死亡するに至り、被害児童の感じたであろう苦しみ、悲しみ、絶望感は察するに余りある」 

 《結愛ちゃんはノートに「きのうぜんぜんできていなかったこと…」などと書いており、優里被告は裁判の中で、結愛ちゃんが雄大被告から怒られるのを防ぐために結愛ちゃんと一緒に書いたと供述していた》

 裁判長「この中には『分かったね』などと大人が言ったことをそのまま書いたような部分があったり、被告人が誤字などを添削した箇所があるなどの点は、同供述を裏付けているといえるから、その信用性は否定されない。そうすると、このノート片の記載内容から被害児童の当時の心情をそのまま認定することはできないというべきであるが、この記載がなくとも被害児童の受けた虐待の態様などから、その心情が十分に推し量れる」

 《裁判長は3つの量刑理由を説明した上で、こう断じた》

 裁判長「本件は児童虐待による保護責任者遺棄致死の事案の中でも、重い部類に属するというべきであり、被告人もその中で相応の役割を果たしたといえる」

【目黒女児虐待死、母親判決詳報】(下)「裁判が終わってもしっかり考えて、人生をやりなおしてください」 裁判長の説諭に静かに「はい…」 
 《東京都目黒区で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=が両親から虐待を受けて死亡したとされる事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里(ゆり)被告(27)の裁判員裁判の判決公判は、8歳年上の元夫、雄大(ゆうだい)被告(34)=同罪などで起訴=からどの程度の心理的影響があったのか、裁判官による説明が始まった。弁護側が、雄大被告から心理的DV(ドメスティックバイオレンス)を受け、「強固な心理的支配下にあった」と主張していたためだ》
 《優里被告が結愛ちゃんに対して苛烈(かれつ)な食事制限などを行い、必要な保護を与えなかった点について、判決では「看過できない雄大からの心理的影響があったと認められる」とする》

 裁判長「雄大からの心理的DVの影響により被告人が雄大の意向に従ってしまった面があることは、量刑上、適切に考慮すべきである」

 《しかし、判決ではそうした状況下にあってもなお、優里被告が雄大被告の虐待から結愛ちゃんの苦痛を和らげようとした行動について言及する》
 《雄大被告に暴力を振るわないように言う、離婚を切り出し抵抗する、早起きの課題をごまかしてやる、体重が増えない限度で食事を与える…。優里被告は、そうした行動を取っていたとされる》

 裁判長「(優里被告は)雄大の言動で受け入れられないことがあった場合に、自らの意思に基づいて行動することができていたといえる。従って、雄大からの心理的DVにより逆らいにくい面はあったにせよ、最終的には、自らの意思に基づき指示を受け入れた上で、これに従っていたと評価するのが相当である」

 《そして、こう結論づけた》

 裁判長「弁護人が主張するように、被告人が雄大により心理的に強固に支配されていたとまでは言えない」

 《結愛ちゃんは心肺が停止するまで一度も医療措置を受けさせてもらえなかった。優里被告は公判で、雄大被告から報復を恐れたとの趣旨の証言をしている》
 《しかし、判決が指摘するように、優里被告は雄大被告の言動に対して消極的な抵抗を試みている》

 裁判長「(報復が)被害児童の重篤な状態を知ってもなお医療措置を受けさせようという動機を形成することが困難であったといえるほどに切迫したものであったとは認められない」

 《裁判長はこうした状況を踏まえ、結論へと言葉を続ける》

 裁判長「雄大の意向に正面から反しない範囲ではあるが、被害児童の苦痛を和らげようとする努力は行っており、不保護の場合でも、添い寝をしながら看病をしており、全く放置したわけではないことからすれば、検察官が主張するような極めて強い非難が妥当する事案とまではいえない」
 「そして、このような犯情に加え、被告人は、わが子を死に至らしめたことを深く悔やみ反省していること、雄大とは離婚し、被害児童の弟の親権者となっており、今後その子を扶養すべき責任を負っている」

 《裁判長はそれらの理由を列挙した上でこう締めくくった》

 「主文の刑(懲役8年)が相当であると判断した」

 《うつむく優里被告の表情は黒い髪に隠され、伺うことができない》
 《「その場所でいいから聞いてください」。裁判長がそう語りかけると、優里被告は小さくうなずいた》

 裁判長「結愛ちゃんは戻ってきません。裁判が終わってもしっかりと考えて、人生をやりなおしてください」
 優里被告「はい…」

 《静かな声でそう応えた優里被告は、刑務官にうながされ、足早に法廷を後にした》

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
――――――――
目黒女児〈船戸結愛ちゃん〉虐待死事件  母親に懲役8年 東京地裁判決 2019.9.17  
目黒女児〈船戸結愛ちゃん〉虐待死事件  初公判 2019/9/3 母親「夫の報復怖かった」
―――――――――
* 「もうおねがい ゆるしてください」5歳女児虐待死 2018/3 父親・船戸雄大容疑者と母親・優里容疑者「虐待発覚恐れ病院行かず」

    

――――――--------
野田市虐待死 栗原心愛ちゃんと船戸結愛ちゃん事件に共通する父親の過剰な家族依存 2019/2/5 dot.
* 船戸結愛ちゃん・佐々木拓夢ちゃん・斎藤理玖くん・坂本愛羅ちゃん・栗原心愛ちゃん…「幼い命を見殺しにした児童相談サボタージュ職員の大罪」 
----------------------
埼玉県蕨市 新藤力人ちゃん「お水を下さい」哀願の声響く 相次ぐ虐待、行政救えず 悔やむ周辺住民
◇ 桜井市 吉田智樹ちゃん(当時5歳)餓死事件 奈良地裁 虐待の母に懲役9年6月
-----------------


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。