新日本原発紀行 鹿児島・川内/温排水による海水温上昇/塩素の垂れ流し/磯焼け

2011-05-22 | 政治

<新日本 原発 紀行> 鹿児島・川内
2011年5月21日中日新聞【特報】
 福島の原発事故は、南西に千二百キロも離れた日本最南端の原発、九州電力川内原発を抱える鹿児島県をも揺るがせている。事故の風評被害により、同県を訪れる外国人観光客は激減。そうした影響からか、保守系が強い県議会の改選で、反原発を掲げる革新系新人が当選するという「番狂わせ」が起きた。さらに川内原発(同県薩摩川内市)の3号機増設は凍結が決まった。このうねりは本物なのか。(鈴木伸幸)

最南端でも風評被害 外国人観光客激減 ブリ輸出 ストップ
 緑が目にまぶしい、広いフェアウエー。見上げれば抜けるような青空が広がる。南国情緒あふれる九州の名門「かごしま空港36カントリークラブ」(同県霧島市)。ここにも、東日本大震災が襲った三月十一日から異変が起きていた。
 「一年間で一万二千人もいた韓国人客がゼロになった。キャンセルが相次いで壊滅状態」と金永出(キムヨンチュル)国際部長は顔をしかめた。「福島からの距離、コースで測定した放射線量に変化がないことを示しても、来てもらえない」
 養殖ブリで知られる同県長島町も風評被害にさらされた。韓国、台湾への輸出が止まった。東町漁協の海江田美治常務は「海外では福島と鹿児島を区別してくれない。『日本は日本』という感覚。それを再認識した」と話した。
 震災は、その翌日に全線開通した鹿児島中央と博多を結ぶ九州新幹線にも水を差した。「記念式典は注目されず、自粛ムードで、観光客は予想以下」と鹿児島市内の観光業者は首を振った。
 福島の事故で安全神話は崩壊。そして、地元への風評被害も後押しとなって、川内原発の反対運動には弾みがついた。
 「鹿児島は保守的。問題意識はあっても、お上相手に声を上げてくれない。でも、福島の事故後は、応援の声を掛けられるようになった」
 川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長(62)はそう語る。
 「反対運動の参加者が高齢化する中、若い人が入ってきてくれた。それがうれしかった」
 九電は九州最大の企業だ。関連事業や取引先を含めれば、地域経済への影響力は大きく、盾突くことはタブーだった。
 そんな“怪物”を相手に「九電と原発」など原発を批判する書籍を出版してきた「南方新社」(鹿児島市)の向原祥隆社長(54)も「問い合わせが殺到している。こんな経験はなく、手応えを感じる」と笑顔を見せた。
 その向原社長がここ数年、最も気掛かりなのが、川内原発の周辺海域での環境変化だ。
 「原発が出す温排水の量は、九州南部で最大の川内川の流量に匹敵する。その影響で海水温が上がっている。原発周辺の砂浜には、イルカやサメなどの死骸が打ち上げられるようになった」*画像≪砂浜に打ち上げられた体長約80㌢のサメ。砂浜の向こう側に川内原発がある。=薩摩川内市で≫
 最初に死骸の急増に気付いたのは、薩摩川内市委託のウミガメ観察員、中野行男さん(53)だ。 「五年ほど前から、ほぼ毎日、原発周辺の浜辺を歩いている。そのころから大型魚類の死骸漂着はあったが、数が増えてきたので、二〇〇九年にサメを数えたら二十九匹。他の海岸ではそんな話を聞かない。何らかの警告ではないのか」

「問題なし」一辺倒 増幅する九電への不信 3号機 事実上の凍結
 温排水については原子力安全協定で「取水口と放水口における海水の温度差は、七度以下とする」と定められている。
 ところが、取水口と放水口までの距離はわずか二百メートル。取水口の海水温が上がる「温排水の再循環」が再三、指摘されている。九電は「深層取水方式を採用している」と主張するが「深層」といっても四メートルの深さ。干潮時には二メートルしかない。
 温排水が影響する海域を「放水口から二キロ内外」とする九電の主張も疑問視されている。九電の調査記録を見直すと、南に潮が流れる「下げ潮」時には、温水域が南側に大きく膨らみ、逆に「上げ潮」時には北側に大きく膨らむ。その膨らみは五キロにも及んでいる。
 温排水の問題は温度だけではない。海水は原子炉の冷却パイプ内を流れる。そのパイプの内側にフジツボなどが付かないように大量の塩素が混ぜられる。それも放水口から垂れ流されている。
 因果関係は不明だが、原発から五キロ以上も離れた海域で海藻が枯れる「磯焼け」が深刻化。漁獲高が全盛時の約五分の一に減った漁協もある。
 漁業補償を受けていない、原発から二キロ以上離れたある漁協の組合長は「九電は『原発の影響はない』というので、信じてきたのだが…。私たちが声を上げても『法的根拠がない』と言われてしまう」と打ち明けた。
 九電のこうした「問題なし」一辺倒の姿勢は、最近に始まったことではない。
 鹿児島大学の橋爪健郎元助手は「かつて原発建設時の掘削調査で、サンプルすり替え事件というのがあった。加えて、建設時は『ない』としていた周辺の活断層も、その後、存在を認めた。一九九七年に川内で震度5強の地震があったが、その時に原発で記録された観測データをいったんは出すとしながら、後に『欠落していた』とした。信用できない」と憤る。
 蓄積していた九電に対する住民の不信感は、今回の福島の原発事故で一気に噴き出した。
 先月十日投開票の鹿児島県議選。川内原発の3号機増設の是非が争点となったが、薩摩川内市区(定数三)で保守系三人の「指定席」の一角を、増設反対を訴えた社民推薦の遠嶋春日児(とおじまはるひこ)氏が奪った。
 地元紙の世論調査でも、ほぼ七割が増設に反対した。鹿児島県もこうした世論を無視できずに、3号機の増設計画は事実上の凍結となった。
 ただ、伊藤祐一郎知事は既に表明した「増設への同意」は変えない意向だ。3号機の建設費は五千四百億円とされ、その経済的恩恵は大きく、賛成派は現在、嵐が過ぎ去るのを待っているようにも見える。
 当選した遠嶋県議も「私が当選した一方で、原発反対を訴えた現職の仲間が落選した。選挙期間中の反応がよかった割には、票は伸びなかった。増設凍結から一歩先に進みたいが、県民の真意はどこまであるのか」と、思いあぐねる。
 前出の中野さんも「昔は、川内からは出稼ぎする人が多かった。親戚や同級生にも九電に世話になっている人も多く、(反対が定着するのは)そう簡単ではない」と複雑な心境を吐露する。
 だが、橋爪氏はそうした弱腰を一喝する。「福島の事故は『想定外』とされているが、自然災害の想定は無理。私たちが持つ災害の記録はたかだか数百年で、万年単位の災害は想定できない。今回は脱原発に向けての最後のチャンス。それとも、川内原発で事故がなければ分からないのか」
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原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設 2011-04-28  
 中日新聞【特報】2011/4/27Wed.
原発の「ごみ」行き場なく 使用済み核燃料の行方は 中間処理施設 建設中も
 福島第1原発の事故では、発電を終えた核燃料が敷地内に置かれている危険性を知った。使用済み核燃料は青森県六ヶ所村の再処理工場の貯蔵施設で受け入れているが満杯に近く、各原発内の貯蔵プールなども余裕がなくなりつつある。一方、この燃料を再びエネルギー源として使う核燃料リサイクルは実現していない。同じ下北半島に建設中の中間貯蔵施設の現場を歩き、原子力政策の限度を考えた。(篠ケ瀬祐司、小国智裕)
 まだ肌寒く、フキノトウが顔を出し始めた青森県むつ市関根。使用済み核燃料をいったん貯蔵する中間施設の建設現場付近からは、津軽海峡を挟んで、うっすらと北海道函館市が見える。
 昨年8月に着工され、貯蔵建屋は基礎を終え床部分を造る段階だ。大震災で資材は被災地に優先されて本体工事は中断するが、来年7月の稼動開始目標は変わらない。
 貯蔵能力は三千㌧。最終的に建屋はもう1棟造られ、最大で計五千㌧を貯蔵する予定だ。同施設を造るのは「リサイクル燃料貯蔵株式会社」で、東京電力と日本原子力発電が出資している。

 

・最長50年保管
 使用済み核燃料は、まず発電所内のプールで冷やされる。それから六ヶ所村の再処理工場に送るまでの間、キャスクと呼ばれる金属製容器に入れて、空冷式のこの貯蔵建屋内に保管される。
「中間」とはいえ期間は最長50年間。再処理が滞り、使用済み核燃料がたまり続けたり永久貯蔵化したりしないか。
 リサイクル燃料貯蔵社の江村公夫広報渉外部長は「年限や容量などは地元との約束だ」と、予定量や期間以上の貯蔵はないと断言する。
 同施設から海まで5百㍍と近いが、周囲に防潮堤は見当たらない。江村氏は「東電の自社評価では、6、3㍍の津波発生可能性を想定。施設は海抜20㍍の場所にあり、防潮堤は必要ない。キャスクは(固定の台から)転落したり、水没したりしても耐えられる」と安全性を強調する。
・背景に交付金
 施設はむつ市が誘致した。2000年6月の法改正で、原発敷地外でも使用済み核燃料を貯蔵できるようになった。5ヵ月後、当時の杉山粛(まさし)市長(故人)が東電に対し、市内に立地可能かの調査を依頼。OKが出ると杉山氏は03年の市議会で誘致を正式に表明した。
 誘致の背景は、見込まれる巨額の交付金や固定資産税だ。市は破綻寸前で02年度の財政規模が約90億円に達し、累積赤字は約14億円。杉山氏は「財政確保を模索する中で、誘致する考えに至った」と議会で述べた。
 財政的な効果はすぐ表れた。03年度に市に入った初期対策交付金は約9億7千万円。10年度決算では、原発関連で約22億3千万円の交付金を受けている。
 市は09年にショッピングセンターを改修して現市庁舎に移った。費用総額約27億円のうち13億円以上が東電と日本原電の寄付だった。
 下北半島は今、隣の東通村で東通原発、大間町で大間原発が1基ずつ建設中で「核半島」とも呼ばれている。誘致する背景はいずれも同じだ。 

再処理工場各原発内プール 容量はほぼ満杯

・「福島の事故後 不安に」青森・むつ市民
 中間貯蔵施設をむつ市民はどうみているか。
 会社員男性(56)は「地元には特別な産業がない。誘致でカネを引っ張ってくるのは苦渋の選択では」と、誘致に理解を示す。年配の男性も「息子が東北電力の東通原発で働いている。ここらでは自衛隊か原発関連の仕事しか働き口がない」と、施設の建設はやむを得ないとの立場だ。
 福島の事故後に考えが変わったという住民もいる。ある商店主は「実は中間貯蔵とはどんなものかよく知らなかった。福島の事故をみて不安になった」と漏らす。
 誘致・建設に反対してきた「核の中間貯蔵施設はいらない! 下北の会」の野坂庸子代表は「施設の核燃料を50年後にどうするかについて、事業者は『40年目までに協議する』と言っている。それは子どもたちにツケを回すことではないか」と不信感を募らせている。
 原発の使用済み核燃料の行方はどうなっているのか。ウラン燃料は3~4年燃やした後に、使用済み核燃料が残る。その燃え残りのウランや新たに生成されたプルトニウムを再処理し、燃料として原発で再利用するのが「核燃料サイクル」。輸入に頼るウランを有効利用できる上に、核の「ごみ」を大幅に減らせるというメリットがある。
 その拠点が日本原燃の再処理工場だ。使用済み核燃料は3年かけて百度以下に冷まして、剪断や溶解、精製してプルトニウムを取り出す。それをウランと混ぜて「MOX燃料」に加工し、既存の原発で燃やすのがプルサーマル発電だ。現在は海外で製造されたMOX燃料が使われている。
 ところが、この再処理工場はいまだに稼動していない。1997年の運転開始予定だったが、相次ぐトラブルから延期され、現在は12年10月の運転開始を目指す。
 原発54基から出る使用済み核燃料は、使用前のウランの重さで年間約1千㌧。再処理工場の貯蔵施設受け入れ容量は3千㌧なのに対し、既に約2827トンが運び込まれて満杯に近い。
 日本原燃は「試験工程の組み直しなども考えながら進めていく必要があるかもしれないが、現時点では、予定通り竣工へ向けて取り組んでいきたい」と説明する。
 再処理工場が稼動しても処理能力は8百㌧で、2百㌧程度が毎年残ってしまう。一方、各原発の総貯蔵量は昨年9月現在で約1万3千5百20トンに及ぶ。福島第1原発の場合、共用プールや各原子炉建屋の容量2千百トンに対し、千8百20トンが入れられていた。
 貯蔵能力使用率を見ると、東電の原発を上位に、その他もあと数年で容量を超えてしまう。貯蔵場所がなければ、ウラン燃料を取り換える事ができず原発は稼動できなくなる恐れもある。
 問題はこれだけではない。再処理した後に残る核分裂生成物など高レベル放射能廃棄物の最終処分についてはめどさえ立っていない。液体は特殊なガラスで固め、ステンレス容器に封じ込めて30~50年かけて冷やした後、地下約3百㍍の深さに埋める。だが、最終処分場の建設場所はまったく決まっていない。
 フランスや英国に再処理を依頼してきたが、今や自国内処理が原則。最終処分場が必要なことは原発の稼動当初から分かりながらも見切り発車した。原発が「トイレのないマンション」といわれるゆえんだ。原発の是非については、安全性はもちろんだが、最終処分問題も国民的議論を行うときが来ている。
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知事も町長もどっぷり 玄海原発を巡る黒いカネ 川内原発 利権の構造 原発マネーは誰を潤しているのか 2011-08-27 
玄海1号、敦賀1号、美浜1~3号、福島第一1~6号など老朽原発、緊急冷却で原子炉割れ大爆発!? 2011-07-10 


2 コメント

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川内原発の最新ニュース (ガイガータイムズ)
2011-08-04 07:21:05
川内原発の最新ニュース

http://ggtms.com/p/gpsendai.html

活用いただければ幸いです。
Re;川内原発の最新ニュース (ゆうこ)
2011-08-04 11:22:57
ガイガータイムズ様
 非常に興味深い、有意義な情報のご案内、ありがとうございます。皆さんと共有できますことを願って、早速エントリーさせて戴きました。
http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/17221f57b58850b864d1f6a1c36f9038

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