(小沢氏)首相になっても訴追ありうる?憲法75条は閣僚の訴追を閉ざす規定

2010-08-27 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴
首相になっても訴追ありうる? 想定外 手続き難しく
中日新聞2010/8/27
 「陰の権力者」と呼ばれた小沢一郎前民主党幹事長が同党代表選出馬を決意した。
 だが資金管理団体「陸山会」の収支報告書虚偽記入事件で、東京第5検察審査会は審査を継続中だ。たとえ代表選に勝って首相に就任しても2度目の起訴議決を受け、強制起訴に進む可能性がある。一国の首相が訴追される・・・。そんな異常な事態は本当に起りうるのか。(加藤裕治、中山洋子)
本人同意が“壁”に
 「起訴する時は、うちの手を離れているので細かい手続きの方法は分かりません」。東京第1検察審査会事務局の返事は素気なかった。同会と東京第5検察審査会では、検察が不起訴にした小沢氏の陸山会事件を審査し、第5検察審査会は4月末に1度、「起訴相当」と議決した。次も同様の判断だと、裁判所が指定した弁護士が検察官役を務め、強制的に起訴することになる。
 ここで問題になるのが憲法75条。「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、起訴されない」とある。通説では内閣総理大臣は国務大臣に含まれる。つまり小沢氏が首相になると、本人がうなずかない限り在任中は法廷に立たずに済む。
 だが気になるのが、「同意」の確認方法だ。首相が記者会見で「同意する」と言っただけでは、起訴することはできないだろう。検察官役を務める指定弁護士は、どのようにして首相の意思を確認するのか。検察審査会に質問し、返ってきたのが冒頭の答えだった。分からない理由は「審査会の役割は起訴議決を所轄の地方裁判所に通知するまで。同意の確認はその後の手続きだから」との説明だった。
 議決が出ておらず、指定弁護士はいないので、東京地裁にも聞いてみた。「同意を確認する方法はおそらく法律で規定されていない。通常の起訴なら検察が考え、同意とみなせるかは担当する裁判官が判断することになるだろう」。検察の上部組織の法務省にも尋ねた。「仮定の話なのでコメントできない。同意についての規定は承知していない」という答えだった。
 国会議員の逮捕なら、許諾請求という手続きがある。しかし、元検事で名城大学教授の郷原信郎弁護士は「首相の側から積極的に同意書面を出さない限り、おそらく訴追できないだろう。憲法75条は閣僚の訴追を事実上、閉ざす規定。捜査権が行政に不当介入しないようにするのが狙い」と説明する。もう1度、検察審査会が起訴と議決した場合、検察官役を務める指定弁護士は途方に暮れることになりかねない。
 手続きが定められていないのは想定外の事態だから。過去に罪に問われた大物政治家も、閣僚を退いた後だった。例えば故・田中角栄元首相。ロッキード事件で起訴されたのは内閣総辞職後の1976年。建設大臣、副総理などを務めた故・金丸信元自民党副総裁が所得税法違反などに問われた際も無役だった。
 首相の同意がないまま逮捕された現職閣僚は1人。芦田均内閣時代の48年、昭和電工事件で、収賄容疑で逮捕された閣僚職の故・栗栖赳夫経済安定本部長官だ。逮捕状を出した東京地検は「訴追と逮捕は関係ない」と判断したとされる。ただ、当時は現憲法が施行されて間もない時期。今なら違う判断になるとみる専門かも多い。
 つまり首相が起訴される事態は、まず想定できないということだろうか。
 土本武司筑波大名誉教授も「首相が自分で自分の訴追に同意すれば、法律上はありえるが、『訴追に同意しなかった』という事態となると、国民の総批判を浴びることになるので、その事態を避けるはず。同意を迫られる前に政治的な判断を下すでしょう」とみる。
 上智大法科大学院の高見勝利教授(憲法)も「(首相の起訴は)論理的には可能だが、政治的には、訴追と職務の遂行の両立はありえない」と指摘する。「特に、政治とカネをめぐるような政治家としての姿勢を問われるような事件は、首相として訴追を認めて辞職するか、認めないで職務を続けるかのどちらかしかないはず」
憲法75条 解釈分かれる
 そもそも憲法75条の解釈でも意見が分かれる。首都大学東京法科大学院の富井幸雄教授(憲法学)は「憲法上、首相は訴追できない」とする見方だ。「憲法75条の趣旨として、内閣の一体性を守るために総理大臣に特別な地位を与えていると考える。そこが戦前の憲法と大きく違う。内閣の命運は国会にあるのが大前提。仮に首相を訴追できるとしたら、検察の権限で、内閣を崩壊させることができることになる」という。
 万が一、首相が起訴されたとしたら、公務はどうなるのだろうか。
 一般的に、公務員が刑事事件で起訴された場合、休職になることが多い。だが前出の土本名誉教授は「国務大臣が起訴された場合は、辞めるか辞めないかの二者択一があるだけで、休職という判断は不自然」と指摘する。また在宅起訴を前提とすると、理論上は「被告」の立場で公務は不可能だという。
 だが例えば、裁判への出廷を理由に国会は欠席できるのだろうか。
 明治大政治経済学部の西川伸一教授(国家論)は「憲法63条で総理大臣や国務大臣は答弁を求められたら出席しなければならないと定められているが、欠席したからといって刑事罰の対象にはならない。ただ裁判を理由に、本会議や委員会に出られないようであれば、野党が納得しないでしょう」と説明する。
 一般に逃亡の恐れのある刑事被告人は海外渡航ができなくなるイメージがある。「被告」の首相に外交のための海外渡航は可能なのか。
 外務省旅券課によると、国務大臣や総理大臣には公務用に「外交旅券」が発行されるため、在任中は一般の旅券と2つのパスポートを持てる。任期が終われば返納するものだという。旅券法で定める公用旅券の一種で「国際的な慣行に基づくもので、出入国手続きで利便を図られるほかはあまり特典はない」とか。
 ちなみに「公用旅券の場合は法律上の規定がないので、ただちに失効するわけではない。あくまで仮定の話ですが」(同課)。
 前出の土本名誉教授も「海外逃亡するはずがないという前提で、公務での渡航を止めることはできないのではないか」。
 ともあれ、どうやら首相の起訴は難しそうだ。
「総理抜け道 許されぬ」
 同名誉教授は「だからなおさら」と強調する。
 「首相を辞めれば起訴できるのは当たり前で、さらには在任中は時効が停止すると解釈すべきだ。正義の実現のための起訴と、国益のバランスをどう優先させるかは大切だが、首相にさえなれば起訴されないという抜け道になることは許されない」
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法相の指揮権発動
小沢氏と対立激化 検察が恐れる民主の4政策2010/01/23
民主代表選、小沢氏出馬/「陸山会事件は特捜部の暴走でした」と、国民に説明する責任が検察にあるのでは 
“検察の正義”に委ねていいのか? 検察を支配する「悪魔」 
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検察(審査会)の権限が政治的に不当な影響を及ぼすことについての危機感
 まず今、必要なことは日本人全体がこの検察の正義というマインドコントロールから脱することです。人が集まってできている組織なので、そこでは必ず間違いが起きる可能性があります。そして、とりわけ検察の場合は、一度判断したことを後で訂正することが難しいわけです。大きな影響を生じさせてしまうと、「それが間違いだった」ということを後で言いにくい。その分、一度犯した間違いがもっと大きな間違いになってしまう可能性があります。そういう検察の間違いが社会にとって致命的な間違いにならないように、検察にも一定の説明責任、そしてその判断の根拠に関する資料の開示責任というものを常にきちんと負わせていく必要があります。
 ところが先ほど言いましたように、日本の刑事司法というのは、殺人や強盗のような価値判断不要な伝統的な犯罪を前提に作られています。検察官にはほとんどと言っていいほど、説明責任も、そして資料については透明性も求められていないわけです。
 そういう検察に対しては、マスメディアと政治とが権力バランスをうまく保っていくことが不可欠だと私は思います。ところが先ほど魚住さんが言われたように、日本のマスメディアは基本的に検察と一心同体の関係であり、検察に対する批判的な報道や検察のアクションを疑うということをまったくしません。「それはなぜか」というと、検察が“いい”事件をやることが基本的にマスメディアにとって利益になることだからです。利益共同体のような存在です。
 そして、日本では歴史的に、「政治は検察の正義に対して介入してはならない」とされてきました。「検察が判断する通りに事件をやることが正義であり、それに政治的に介入すること自体が悪だ」という風にされてきました。ですから、政治は検察に対するチェック機能をほとんど果たしてきませんでした。
 自民党中心の政権がずっと続いていた時代には、そのこと自体はあまり問題ありませんでした。なぜかというと、検察も政治的に大きな影響を及ぼさないように自制的に権限行使をしてきたからです。しかし現在の日本は、国民の主体的な選択によって政権が選択され、それがまだ不安定な状況です。こういう状況において検察は、「検察の権限が政治的に不当な影響を及ぼすことについての危機感というものを、もっと強く持つ必要があるのではないか」と思います。
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