日本カナダ文学会公式ブログ

日本カナダ文学会の活動と紹介

Newsletter 69

2018-04-01 | Newsletter

NEWSLETTER
THE CANADIAN LITERARY SOCIETY OF JAPAN

L’association japonaise de la littérature canadienne
Number 69 Spring, 2018

 



会長挨拶

日本カナダ文学会会長 佐藤アヤ子

百花繚乱の頃となりました。会員の皆様にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。 NEWSLETTER 69 号をお届けします。

それにしても今冬は寒波襲来で、思いの外、寒い冬でしたね。「爆弾低気圧」という言葉をよく 聞きました。この表現は、マスコミによる造語かと思っておりましたが、正式な気象用語と知りま した。世界気象機関が使う用語「Bomb cyclone」の訳語です。世界中がきな臭い昨今、〈爆弾〉と 聞くと物騒な印象を受けますが、考えてみれば、気象用語には軍事用語由来のものが多いですね。 寒波襲来もそうですが、桜前線、鉄砲水、ゲリラ豪雨などです。しかし天が仕掛ける戦争に、人間 は勝てませんね。

NEWSLETTER 69 号では、昨年 4 21 日に 91 歳で他界された本学会名誉会長でいらした故浅 井晃先生の追悼特集を組みました。会員の中には、浅井先生をご存知ない方も多いかと存じますが、 創立時より、日本カナダ文学会を牽引されてこられた先生の大きな足跡を会員の方々からの追悼文 で知っていただけたらと存じます。因みに、先生の訃報は昨年 9 月にご家族から頂きましたので、 今号での特集となりました。

紀要編集委員のおかげで、『カナダ文学研究』第 25 号が刊行されました。皆様のお手元に届いて いることと存じます。今号は執筆者が多く、嬉しい悲鳴であると同時に、大塚由美子編集委員長を はじめ委員の方々には大変なご尽力を頂きました。感謝申し上げます。また、経費も予算をはるか に超すものとなりました。

2018 年度の日本カナダ文学会年次研究大会は、戸田由紀子会員のお力添えで、6 16 日(土) に名古屋の椙山女学園大学にて開催されます。多くの会員の皆様のご参加をお願いいたします。

会員の皆様の一層のご活躍をお祈り申し上げます。 

 

 
追悼:浅井晃先生の訃報によせて 

「浅井晃先生を偲ぶ」

日本カナダ文学会 顧問 堤 稔子

浅井先生に初めてお会いしたのは 1979 年、発足後間もない日本カナダ学会が大学セミナーハウ スで開催した日加学術会議の席上でした。文学セッションで招聘作家Jack Hodgins氏の「カナダ 文学の現状」と題する講演を聴き、数日後、国際文化会館でさらに詳しいお話を伺う機会がありま したが、浅井先生はすでに予備知識をお持ちで、次々と専門的な質問をされたのが大変印象的でし た。それもそのはず、後に日本カナダ文学会の NEWSLETTER に寄せられた「カナダ文学事始め」 (No. 53, March, 2010)によりますと、先生はカナダ在住のご親戚を介してすでに 1960 年代から カナダ文学に関心を持ち、1971 年には海外研修の 3 か月間を「カナダ文学探訪の旅」に充てて名 だたる作家ゆかりの地を訪ね、インタビューを行い、作品を買い集めていらしたのです。日本カナ ダ学会の『ニューズレター』第 4 号(1979 3 月)に先生の「マーガレット・ローレンスの世界 を探る」という記事が載っていますが、これは上記 Hodgins 氏の講演の半年前に当たります。ちな みに Margaret Laurence Hodgins 氏がカナダ人ノーベル文学賞最有力候補に挙げられた作家で した。カナダ人初のノーベル文学賞受賞は 2013 年の Alice Munro まで待つことになりますが、浅 井先生は早くも 1980 年、Munro の初期の短編集 Dance of the Happy Shades 中の、作家志望の女 性の苦闘をユーモラスに描いたThe Officeを「女の仕事部屋」と題して翻訳し、同人誌『文芸広 場』に載せていらっしゃいます(28 12 号、文芸広場社、1980 12 月)。

1982 年、カナダ学会の有志らが中心となって日本カナダ文学会が 発足しました。初代会長には、カナダにルーツを持ち 60 年代にカナ ダの大学でカナダ文学を教えられた平野敬一先生が就任されますが、そのあとを継いで 1990 年から 2000 年まで会長を務められた浅井先 生は、まさにカナダ文学会の大黒柱でした。会発足と同時に、自ら 準備された冊子『カナダ文学案内―小説を中心に』(文芸広場社、1982 年)を全員に配布し、3 年後には本格的な『現代カナダ文学― 概観・作家と作品・資料』(こびあん書房、1985年)を上梓されます。 日に(港区、国際文化会館にて) 同年、UBC の日本文学教授鶴田欣也氏との共編著で、日本側 4 名、カナダ側 9 名の執筆者による 『日本とカナダの比較文学的研究―さくらとかえで』(文芸広場社、1985 年)を出版されますが、 執筆者および翻訳者との交渉や連絡、カナダ政府と文部省からの助成金の交渉に至るまで、一手に 引き受けられています。2000 年には先生の編集による『カナダ文学関係文献目録』が日本カナダ 文学会から発行されました。こうして日本におけるカナダ文学研究の普及・発展に尽くされた先生 の功績は計り知れません。

その間、ご自身の研究課題には Morley Callaghan、Robertson Davies、Howard O’Hagan など多岐にわたって取り上げ、随時発表されていました。90 年代の一時期、Davies が毎年ノーベル文学賞の候補に挙がる度に、新聞社依頼の原稿を準備しては朗報を心待ちにされていたのを懐かしく思い出します。先住民を含むカナダの伝承文学への関心も早くから示され、その成果はニューファ ンドランドからブリティッシュ・コロンビアに至る各地の神話・民話・伝説を集めた『カナダの風 土と民話』(こびあん書房、1992 年)、美しい写真入りの『トーテムポール世界紀行』(ミリオン書 房、1996 年)、そして総括的な『カナダ先住民の世界―インディアン・イヌイット・メティスを知 る』(彩流社、2004 年)に結実されました。

いつも朗らかに、情熱をもって私ども会員を牽引してくださった浅井先生、長年にわたり、本当にありがとうございました。 

(つつみ としこ)

「ありがとうございました」 

日本カナダ文学会会長 佐藤アヤ子

私の手元に、名誉会長の堤 稔子先生から引き継いだ日本カナダ文学会の NEWSLETTER が創刊 号から現在号まであります。創刊号は 1983 1 月の発行で、日本カナダ文学会が発足した翌年す ぐに発行されたものです。細かい文字で B4 判用紙の裏表にびっしりと書かれた NEWSLETTER です。事務局は浅井晃先生の勤務校であった大正大学の先生の研究室。大会報告、文献案内、会員 情報、推薦図書等を掲載したこの NEWSLETTER を拝読するだけでも、労を惜しまず、日本カナ ダ文学会の創立・運営に奮闘された先生の文学会への熱意を感じることができます。

日本カナダ文学会は、NEWSLETTER 53 号(2010 3 月)から、「カナダ文学との出会い」の 連載を始めています。第 1 回の執筆者が浅井 晃先生です。その中で先生はこう書かれています。「カ ナダ文学愛好家として私は孤独であった」と。堤稔子先生が「浅井晃先生を偲ぶ」で書いておられ るように、浅井先生とカナダ文学との出会いは早く、1960 年のはじめです。誰もが「カナダの文 学というものが存在するのだろうか」と思っていた頃です。そしてこの孤独を破ってくださったの が、日本カナダ文学会初代会長で、カナダから帰国されたばかりの平野敬一先生との出会いであっ た、と。しかし、浅井先生がこの「孤独」に耐え、日本でのカナダ文学研究の体制を整えてくださ ったゆえに、日本カナダ文学会が誕生し、存続していると思います。

カナダ文学の足跡をたどる浅井先生の「カナダ文学探訪の旅」は、1971 年に始まっています。 最初の探訪の旅は 3 ヶ月に及び、バンクーバーから始まり、カルガリー、エドモントン、ウィニペ グ、トロント、モントリオール、ケベック、オタワ、ハリファックスと続き、プリンス・エドワー ド島で終わっています。先生の「カナダ文学との出会い」によると、行く先々で作品を「買い漁っ た」ということです。その後も先生のカナダ横断の旅は続きます。1983 11 月の総会では、1ヶ 月に及ぶ「カナダ文学散歩」を報告されています(NEWSLETTER 419845月による)。資 料のみで研究するのではなく、自分の目で確かめ、作品を生み出した風土に触れることは、広大な 面積を持ち、地政学的にも多様なカナダを研究する者にとっては、大事なことだと思います。浅井 先生のこの〈現場に触れる〉姿勢には、学ぶものが多々あります。

後年、先生はカナダ先住民の地をよく訪れておられました。アクセスの難しいところは、ヘリコプターをチャーターして訪れた、と伺っております。不便さも顧みずに資料収集にあたった先生の 熱意は、『トーテムポール世界紀行』(ミリオン書房、1996 年)、そして『カナダ先住民の世界―イ ンディアン・イヌイット・メティスを知る』(彩流社、2004 年)に集約されています。

創立以来、長く日本カナダ文学会を牽引してくださった浅井 晃名誉会長、本当にありがとうございました。感謝申し上げます。

(さとう あやこ)

「浅井晃先生(1925-2017)」

竹中 豊(元カリタス女子短期大学)

「お読みいただかなくても結構です」・・・。これは、私のうけとった浅井先生のご著書『カナ ダ先住民の世界―インディアン・イヌイット・メティスを知る』(彩流社 2004 年)の添え状の一 部だ。そして「礼状などお書きにならないでください」とも続く。こんな著者謹呈文など見たこと ない。このちょっとした表現に、浅井先生の謙虚な人柄、そして他者を思いやる温かい心情が、見 事に凝縮されている(でも、読むな、と言われれば読みたくなるのが人情。完読しました)。

◇◇◇

そんな優しい浅井先生だったが、残念なことに 2017 4 21 日、91 歳の生涯を閉じた。思え ば、先生の日本におけるカナダ文学研究に果たされた役割は、はかりしれないほど大きい。日本カ ナダ文学会創設のメンバーはもちろんのこと、1990 年~2000 年にかけては会長も務められた。そ の経歴はちょっとユニークだ。東京大学文学部卒業だが、学科は「英文学」でなく、「仏語仏文」 だ。仏語にも堪能なはずだが、長らく東京都立高校にて英語教師を勤めておられた。その一方で、 広く深くカナダの小説にも親しんでいた。根っからの小説好きに輪をかけるように、研究意欲・読 書量も相当なものだった。やがて、そうした努力や業績が認められ、1982 年に大正大学助教授、 1988 年には教授となり、活動舞台はよりアカデミズムの世界へと移る。驚いたことに、初めてカ ナダの地を踏んだのは 40 代半ば(1971 )という。大学教師になったのは 50 代半ば過ぎだから、研 究者としては遅咲きだ。しかし豊富な人生経験を背景に、その後さらなる創造的カナダ研究へと邁 進していく。

浅井先生の数多い著作のなかで、主要な学問的業績の一つは、『現代カナダ文学』(こびあん書房 1985 年)だろう。何しろ日本でほぼ前人未踏のカナダ文学を、フランス系ケベックをふくめて、 これほど包括的に書きあげたのは、浅井先生がはじめてだった。カナダ文学とは、かつては、良く ても英語系・仏語系文学の傍流、そして悪く言えば「自分たちの存在が認知されていない」(マー ガレット・アトウッド)分野と思われていた。そんななかにあって、カナダ文学の全体像と魅力あ る独自性に大きく眼を開かせたのが、本書だった。今読んでも面白い。

また、興味あるのは 1980 年代以降、浅井先生の研究の関心分野が、漸進的かつ確実に文学から 先住民研究へと変化していったことである。これは、「ヨーロッパ系カナダ人作家の描いた先住民 の姿」(浅井先生)からの脱皮、すなわち、今までご自身では見逃してきたカナダの「隠し絵」の 浮上を意味した。おそらくそれは、カナダ文学研究の延長線にありながらも、浅井先生の内面における劇的な転換だったに違いない。ご自身で撮った写真を多くとりいれた『トーテムポール世界紀 行』(ミリオン書房 1996 年)の刊行は、その一例だ。こうした経緯をへて浅井先生の研究の集大 成となるのが、前述した 384 頁の大著『カナダ先住民の世界』である。これは、たしかに純粋アカ デミズムにもとづく民族学者の視点ではない。しかし長年培ってきたカナダ文学研究という基調に 支えられながら、本書は、いわば“Asai-ism”の知的縮図であることに異論はないだろう。

◇◇◇

人なつっこくて優しい目、歯切れのいい大きな声、原稿締め切りの絶対的厳守・・・。これらは 先生に備わるもうひとつの美徳だった。いつも笑みをうかべながら、カナダ、その文学世界、そし て先住民の姿をこよなく愛した浅井先生。それこそ、「幸福な人生」の証しであった。

(たけなか ゆたか)

 

 

「浅井晃先生を悼んで」

長尾 知子会員

浅井晃先生について語ることは、私自身のカナダ文学開眼への道筋をふり返ることでもある。今 手元に、断捨離を免れた雑誌の頁がある。1992 年頃(?)の『留学ジャーナル』から切り離した ものだ。特集記事「カナダを知る」には、浅井先生による「『赤毛のアン』だけではないカナダの 文学」という項目があった。1993 年度の在外研修中、頭の片隅にあった「カナダに留学する機会 をもった人は、この国の文化や国民性を知るうえでも、是非カナダの小説を『赤毛のアン』以外に 少なくとも一冊は読んでほしいものである」とのお言葉が、夏場に開講されていた Modern Canadian Fiction の講座に向かわせたに違いない。何気なく足を踏み入れたカナダ文学の世界は、 研修目的だったウィリアム・ゴールディング研究を投げ出すほどに魅力的だったのは言うまでもな い。

帰任後の 1994 年に日本カナダ文学会に入会し、カナダ文学の世界に誘ってくださった浅井先生 にお目にかかれたときは感無量だった。すでに、先生の『カナダ文学案内―小説を中心に』(1982)、 『カナダの風土と民話』(1985)、『現代カナダ文学―概観・作家と作品・資料―改定新版』(1991) は、貴重な参考書として手元にあった。浅井先生を偲ぶにつけ、当時のカナダ文学会の活況ぶりを 思い起こさずにはいられない。後知恵的に眺めると、会長の浅井晃先生、堤稔子先生、故渡辺昇先 生、故藤本陽子先生ら、1982 年の学会創設メンバーを中心に、現会長の佐藤アヤ子先生、平林美 都子先生らがご活躍中だった。筆者は中年になってからの入会だったが、発展途上の小さな学会は アットホームで居心地がよく、大好きなカナダ文学について語り合える唯一の拠り所となった。

この3月で定年退職するに当たり来し方をふり返れば、筆者自身の最初と最後のカナダ文学研究 にも浅井晃先生のサポートがあったことを再認識するばかりだ。先生は『カナダの風土と民話』『現 代カナダ文学』で、ハワード・オヘイガンのカナダ性について指摘しておられたが、代表作『テイ・ ジョン物語』(1996)の解説付き拙訳書の帯に、日本カナダ文学会会長として推薦文を寄せてくだ さった。また『英系カナダ文学研究―ジレンマとゴシックの時空』(2016)では、数あるカナダの 地図の中から見つけた、先生の『カナダ先住民の世界』(2004)掲載の「カナダ全図」を、拙書の参考資料として転載させていただいた。浅井晃先生は、筆者をカナダ文学の世界へ誘い、カナダ文 学研究をまとめるに至るまで導いてくださったことになる。

感謝の気持ちを込めて、浅井晃先生のご冥福をお祈り申し上げます。 

(ながお ちかこ)

 
「浅井晃先生のご逝去を悼んで」 

室 淳子会員

調べものをするために、浅井晃先生のご著書『カナダ先住民の世界』(彩流社 2004)を読み返し ていたのは、浅井先生の訃報を知るほんの直前のことだった。長く療養されているとお聞きしてい たものの、日本カナダ文学会の大きな存在であった浅井先生がご逝去されたことは寂しくまた大き な損失であると感じた。本来ならもっとたくさんのことをお話しして、ご研究のことやカナダでの ご経験、浅井先生ご自身についても、もっとたくさん教えて頂くことができたらよかったのにと悔 やまれる。

浅井先生にお会いすることができたのは私がまだ大学院生の頃であったから、いつの間にか長い 歳月が流れたように思う。浅井先生との思い出は断片的で稚拙なものだ。カナダ文学研究の第一人 者でいらっしゃったのだから、今から思えば当たり前であるのだが、当時公開されたばかりのカナ ダ映画に足を運んで見に行かれたというお話を伺って、すごいなあと思ったりしたものだ。祖父母 ほどの年齢の方が映画を見に行くという行為にも、新しいものに興味を示される姿勢にも、当時の 私には驚きであり魅力的に思えた。情報の多い東京ならではだとも、また日本カナダ文学会の他の 先生方とも共通して、カナダが好きでカナダとのつながりが強く、日本に情報が少ない分、自らの 足で現地の情報を得る行動力が必要なのだとも思い、そのどちらにも憧れた。

私の初めての学会発表は日本カナダ文学会でだった。それまでばらばらに学んでいたことを自分 の中で初めてうまく組み合わせることができたように思えた論文だった。浅井先生はその論文を 『カナダ文学関係文献目録』(日本カナダ文学会 2000)に含めてくださり、上記のご著書の中でも引 用してくださった。研究者の卵には、背中を押してもらうような気持ちがして、とても嬉しかった ことを覚えている。

日本カナダ文学会に入った初期の頃にお会いし、たくさんの励みを受けた浅井先生がいらっしゃ らなくなるのは寂しいことだ。先生が残されたご著書や論文を繰り返し読んでいきたいと思う。

浅井晃先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。 (むろ じゅんこ)

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2018 年度「日本カナダ文学会第 36 回年次研究大会」のお知らせ

2018 年度の大会は、以下の日程・会場で開催されます。奮ってご参加ください。

開催日時:2018 6 16 日(土)10:00 18:00
会 場:椙山女学園大学(名古屋市)

<午前の部>
○ 研究発表
1 原田寛子 「ヒロミ・ゴトーの『コーラス・オブ・マッシュルーム』における祖母と孫娘のつながり」

○ 研究発表 2 白井澄子 「現代カナダ思春期文学の挑戦―Calvin における心の病と冒険サバイバル」

<午後の部> *総会後 ○ 基調講演 

講演者:Dr. Tony Tremblay(St. Thomas University)
題 目:
“Restoring Pride of Place: Re-Making New Brunswick and Atlantic Canada through Cultural Work”

○ シンポジウム
テーマ :「産業、環境、カナダ文学」
発表者
: 室 淳子、佐々木菜緒、佐藤アヤ子

開催校より

戸田 由紀子会員

今年度の全国大会は椙山女学園大学で開催されます。椙山女学園大学は 100 年以上の歴史のある 地域に根ざした総合女子大学です。立地・交通アクセスは抜群です。名古屋から地下鉄東山線で一 本、「星ヶ丘」という駅にあります。星ヶ丘駅からは徒歩5分、駅に隣接する星ヶ丘テラスを通り ぬけ、左折した所がキャンパスです。当日の会場は国際コミュニケーション学部棟の 417 室です。 正門から入り、突き当り左側の建物のエレベーターをご利用ください。

当日のランチはお洒落な店が並ぶこの星ヶ丘テラスで取ることもできますが、週末は混雑が予想 されます。持参するか、当日テラスや星ヶ丘三越で購入してもよいかもしれません。当日の懇親会 は星ヶ丘駅周辺のフレンチビストロかイタリアンを予定しております。

星ヶ丘周辺には宿泊施設はございません。地下鉄東山線沿いの栄周辺、名古屋駅周辺に多数ござ います。同じ東山線沿いでより星ヶ丘駅に近い千種や今池駅にもいくつかホテルがございます。時 間に余裕のある方は、学会前後に熱田神宮散策がてら「あつた蓬莱軒本店」のひつまぶしを召し上 がってみてはいかがでしょうか。おすすめです。それでは6月名古屋でみなさまにお目にかかれま すこと心より楽しみにしております。

< 連載:カナダ文学との出会い 第12回 >

「カナダ文学と私――モンゴメリ文学研究の道のり――」

 
赤松 佳子会員

カナダ文学との初めての出会いは、中学 1 年生の秋の学校図書館だった。本箱の下の段にあって、 偶然に開いた本が LM・モンゴメリ (L. M. Montgomery, 1874-1942) 作、村岡花子訳の『赤毛の アン』(講談社)だったのである。立ち上がることも忘れて一気に読み終え、本を閉じたとき、周 りが違って見えるような気がしたことを、鮮明に覚えている。その後、アン・シリーズを読破し、 翻訳されたモンゴメリ作品を読み尽くしたが、まだ邦訳されていない作品のあることを知り、いつ か自分が訳してみたいというのが、私のささやかな夢となった。モンゴメリ作品のほとんどがプリ ンス・エドワード島を背景に書かれているので、カナダのどこにあるのかを地図で探すのも楽しみ だった。まだカナダの情報を得る術もほとんど知らなかった頃のことである。

1986 年の夏、大学教員になって 3 年目に、プリンス・エドワード島を訪ねるツアーに参加して 初めて島の土を踏んだ。私はアップダウンの激しい島の道を経験して、〈道の曲がり角〉を人生の 転機に譬える、アンの言葉の深い意味を実感した。また、『モンゴメリ日誌選集』(The Selected Journals of L. M. Montgomery) の第 1 巻が前年に出版され、現地ガイドはこの日誌に言及しなが らゆかりの家を説明してくれた。モンゴメリについて日本では未知のことが多いのを知ったのは貴 重な経験だった。この日誌選集第 1 (1985)はカナダでベストセラーになり、第 5 (2004)まで刊 行されてモンゴメリの作家としての評価を上げていくことになるのだが、この点について私が自覚 をするのはずっと後のことだった。(ちなみに現在では完全版のモンゴメリ日誌が刊行継続中であ る。)

プリンス・エドワード島への旅が契機となり、モンゴメリ死後出版の短編集 Akin to Anne: Tales of Other Orphans (1988)の翻訳をすることになったのは、1988 年のことである。邦題は『アンの 仲間たち』であり、正(1988)・続(1989)2 巻として篠崎書林から出版された。

こうして、私の中で翻訳をきっかけにモンゴメリ作品研究をしたいという思いが強まった。児童 文学研究で知り合った、ある研究者を介して紹介していただいたのが平野敬一先生である。そして、 平野先生のご紹介で日本カナダ文学会に入会することになった。『カナダ文学研究』第 3 (1991) にはこの頃の拙論が収録されている。

1994 年、第 1 回モンゴメリ国際会議がプリンス・エドワード島大学で開催され、私も参加した。 初の本格的なモンゴメリ研究書 (1992)を上梓したエリザベス・エパリー(Elizabeth Epperly)は、 1993 年に L. M. Montgomery Institute を開設し、翌年、国際会議を企画したのである。以来、2 年毎に国際会議が開かれ、1999 年に L. M. Montgomery and Canadian Culture という研究書を出 版するに至る。論文募集に応じた私の原稿“Japanese Readings of Anne of Green Gablesは採用さ れ、研究の大きな励みとなった。2008 年、Anne of Green Gables 出版百周年には国際会議も大規 模になったが、この年に初めて私は研究発表に挑戦した。自分の研究の成果を発表しなくてはなら ないと自らを奮い立たせたのである。この時の発表原稿は、論文集 Anne around the World (2013)に収録された。 モンゴメリ国際会議で発表するためには、前年の夏に応募し、発表要旨の審査に合格しなければ

ならない。国際会議の最終日に公表される次回のテーマを 1 年かけて考えて、まとめるのである。 2008 年以降、運良く、毎回、私の発表要旨は採用され、2018 年に至るまで私は研究発表を続けて いる。この国際会議を目標にすることにより、私のモンゴメリ研究は幅が広がっている。また、国 際会議のテーマをもとに改めて原稿募集が行われ、採択された論文がまとめられて研究書として出 版されることが常態化し、その実績がモンゴメリ研究を成熟させてきた。

国際会議を通じて、私は世界中のモンゴメリ研究者と知り合い、親しい友人を得た。また、イン ターネットの普及により、世界の研究者仲間とつながっている。彼らと切磋琢磨する中で、モンゴ メリ作品が子ども読者だけでなく大人読者のためにもあることを、私は確信している。

児童文学研究の中だけでなく、カナダ文学研究の中でモンゴメリ研究をしていきたい。この私の 願いは、母の介護のために制約のある研究生活の中でも色褪せていない。21 世紀を生きる、日本人 モンゴメリ研究者として私ができることは何なのだろうか。このような問いを常に自分に投げかけ ている。

自らの日誌を後世のために残し、最後に自分の人生を文学の一部にしたモンゴメリの作家魂には 鬼気迫るものがある。第一次世界大戦を「正しい」と信じた誤りや、欠点や限界を含めて彼女の著 作には、大人のみが深く理解できるものがあると言える。長年、カナダの辺境を舞台にした作家と しか見られなかったモンゴメリが、文学史の中で正当な評価を得られるようになっているのは喜ばしいことである。

 

 

会員による新刊書紹介

マーガレット・アトウッド著『テント』 中島恵子・池村彰子訳(英光社、2017.11.25)、 価格 2,300 円+税、ISBN-13: 978-4870971424。 三部からなる 35 の短編の全訳。「ファンタジー の衣装を纏った詩的散文による創造空間。」 (本書帯文より)

( ファンタジーの衣装を纏った詩的散文による創造空間。

事務局からのお知らせ

<学会費のご案内>

2018 年度の学会費を下記の口座までお納めください。『カナダ文学研究』第 25 号をお 送りする際に郵便振込用紙を同封いたしましたので、ご利用ください。なお、2017 年 度以前の学会費がお済みでない方には、その旨お知らせいたしましたので、ご確認頂き、 早急にお振込み頂けましたら幸いです。万一行き違いなどございましたら、ご容赦くだ さい。

振込先:
郵便振替口座: 00990-9-183161 日本カナダ文学会

銀行口座: 三菱東京 UFJ 銀行 茨木西支店(087) 普通 4517257  日本カナダ文学会代表 室 淳子

正会員 7,000 円 学生会員 3,000 円

<新ホームページ開設のお知らせ> 
ホームページ委員のご尽力により、日本カナダ文学会の新しいホームページを開設しており ます。下記の URL からご覧ください。
https://blog.goo.ne.jp/kanadabungakukai84burogudayo

編集後記

○今回のNLには故浅井晃先生の追悼特集を組ませていただきました。先生を偲ぶ、心 温まる文章をお寄せくださった皆さまに心より感謝申し上げます。カナダ文学会には比 較的新しく入会したため、先生との直接の面識はなかったのですが、5年ほど前に佐藤 会長を介して、勤務校におよそ500冊もの浅井先生の蔵書を寄贈していただきました。 「必要のないものは処分してください」と先生は電話口でおっしゃってくださいました が、送られてきたダンボールの中味は、小説・批評・戯曲・詩集等々、さながらカナダ 文学史の縮図のようでした。とりわけ、カナダ先住民に関する資料は貴重でした。トー テムポールや先住民の歴史を辿る図版を有した大型本を眺め、先生がなぜ先住民の精神 世界に惹かれたのかと思いをめぐらせたものです。連載「カナダ文学との出会い」では 赤松会員よりこれまでのモンゴメリ文学研究の歩みを語っていただきました。6月には 戸田会員にお世話になります。皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。(M)

○国内外の荒れた世情をうつすような気候が続いていましたが、桜の花が春の訪れを告 げはじめました。今年は、専門とする作家ミュリエル・スパークの生誕百周年というこ とで、その生誕の21日、古巣のグラスゴー大学での学会発表に行ってきました。歴史 を感じるメイン・ビルディングとキャドラングル。日だまりに三色のクロッカス、スノ ードロップ、ブルーベルが咲く光景。懐かしさと幸せで胸がいっぱいになりました。今 回のNLでは、寄稿者の皆さまのカナダ文学研究における多くの美しい原風景と歴史に 触れさせていただいた気がします。(S)

NEWSLETTER THE CANADIAN LITERARY SOCIETY OF JAPAN 69

発行者 日本カナダ文学会
会 長 佐藤アヤ子
編 集 松田寿一&沢田知香子
事務局 名古屋外国語大学 現代国際学部

室 淳子(副会長)研究室
470-0197 愛知県日進市岩崎町竹ノ山57 TEL: 0561(75)2671
EMAIL: muro@nufs.ac.jp
HP: https://blog.goo.ne.jp/kanadabungaku kai84burogudayo
会長連絡先: ayasato@eco.meijigakuin.ac.jp


 


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