日本カナダ文学会公式ブログ

日本カナダ文学会の活動と紹介

NEWSLETTER 77

2022-03-31 | Newsletter

NEWSLETTER 77

THE CANADIAN LITERARY SOCIETY OF JAPAN

L’association japonaise de la littérature canadienne

                                                                           Spring, 2022

 

 

 

会長挨拶

日本カナダ文学会会長 佐藤アヤ子

 

花の季節となりました。やわらかい春の光の中に咲く花々を見ていると、幸せになりますね。 NEWSLETTER 77 号をお届けします。

中国武漢で新型コロナウイルスの最初の感染者が出てから 2 年以上が経ちました。しかし、一 向に収束の兆しが見えません。パンデミックに加え、第 3 次世界大戦にもなりかねないようなロ シア軍によるウクライナ侵攻。民家、産科・小児病院への空爆等「国際法違反」行為が相次いで 報告されています。心が痛む毎日です。ロンドンに本部がある国際ペンは、1000 名以上の作家等 が署名した前例のない声明文でロシアのウクライナ侵攻を非難しています。マーガレット・アト ウッドさんも名を連ねています。

日本カナダ文学会は本年創立 40 周年を迎えます。記念大会は沢田知香子会員のお力添えをいた だき、6 月 18 日(土)に学習院女子大学で開催されます。コロナ禍の見通しがたたないため、 ハイブリッド形式(リアル+Zoom)で行う予定です。

本大会では、「日本カナダ文学会を語る―過去・現在・未来」をテーマに、座談を企画していま す。40 年前の創立時を知る会員は、現在、堤 稔子名誉会長と竹中 豊元会員のお二人だけになっ てしまいました。日本カナダ文学会の礎を築いてこられたお二人に、創立当時の様子をお話いた だくとともに、日本カナダ文学会の未来を担う若い会員にも参加を願い、今後の抱負を自由にお 話いただくことを企画しています。

コロナ禍のため、カナダからの基調講演者の招聘はできませんが、会員の皆様は奮ってご参加
ください。大会日近くになりましたら、また皆様にご案内いたします。

2022 年度年次研究大会の日程と会場のご案内

2022 年度日本カナダ文学会創立 40 周年記念年次研究大会は、以下の日程で開催されます。奮って ご参加ください。なお、今後のコロナ禍の状況が見通せないために、ハイブリッド形式(リアル+Zoom) での開催となります。ご不便をおかけしますが、ご理解ください。

開催日時:2020 年 6 月 18 日(土)10:00-17:00 会 場:学習院女子大学(東京都新宿区戸山)

開催方式:ハイブリッド方式(リアル+Zoom)

<午前の部> ○研究発表1 安保夏絵

 「植民する女性たち―『洪水の年』における自然と女性の共生」

≪Symbiotic Relationships: Women, Nature, and “Plantation” in Margaret Atwood’s The Year of the Flood≫ 〇 研究発表2 虎岩朋加・池田しのぶ

「メディアの LGBT 主流化に見られる女性たちの位置付け―グザビエ・ドランの 映画『わたしはロランス』を手がかりに」
≪LGBT Mainstreaming in Media and its Relation to Sexism: An Analysis of Xavier Dolan's Laurence Anyways

<午後の部> *総会後
〇 日本カナダ文学会創立40周年記念座談

「日本カナダ文学会を語る―過去・現在・未来」
≪Conversations on the 40th Anniversary of the Canadian Literary Society of Japan: The Past, Present, and Future≫
参加者:堤稔子 竹中豊他

〇 シンポジウム
  「アントロポセン時代のカナダ文学を考える」

≪Canadian Literature in the Anthropocene Period≫ 発表者:佐藤アヤ子・岸野英美・荒木陽子

**********************
Zoom の設定は沢田会員にお願いしています。学会日近くになりましたら、皆様にご案内 いたします。

 

 

開催校より

第 40 回日本カナダ文学会年次研究大会は、2022 年 6 月 18 日(土)に学習院女子大学(東京都新宿区)で 開催されます。新型コロナウイルス対策が必要な状況が続く中、対面での開催に向けて準備を進めております。 ソーシャルディスタンスの確保など感染防止に万全を期すため、会場の詳細等につきましては新学期開始後 に改めましてメール配信および H P でお知らせさせていただきます。会員の皆さまにはご不便をおかけいたし ますが何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。世の中が少し落ち着き、久しぶりに多くの皆さまと対面で 語らうことができるよう心より願っております。

学習院女子大学へのアクセスおよび宿泊情報:
★ アクセス(https://www.gwc.gakushuin.ac.jp/about/access.html)

東京メトロ丸ノ内線「東京」駅より「新宿三丁目」駅で乗り換え、東京メトロ副都心線「西早稲田」駅下車、
徒歩 1 分。
(東京メトロ東西線「早稲田」駅下車、徒歩 15 分。J R 山手線・西武新宿線「高田馬場」駅下車、徒歩 20 分。)

★ 宿泊 大学付近におすすめする宿泊施設はありません。新宿区ですので宿泊施設は多くあり、交通アクセスも スムーズです。

(参考)

東急ステイ新宿(https://www.tokyustay.co.jp/hotel/SJ/) ポッドセレクトホテル新宿(https://www.podinns.co.jp) ホテルサンルートプラザ新宿(https://sotetsu-hotels.com/sunroute/plazashinjuku/)

 

 

<連載:カナダ文学との出会い 第16回>

 

小倉 和子会員

もう 40 年以上前、大学の仏文科に入学してフランス語を習い始め、3 年生でようやく文学作品を読 む授業を取れるようになった。とはいえ、単語は代名詞以外ほぼすべて辞書で引かねばならず、おか げでプリントの余白は訳語の書き込みでぎっしりだった。それでも、原文に触れられるのは、翻訳で 読んでいるときとはまったく違う感触だ。翻訳なら数秒で通り過ぎてしまうところを、辞書を引きつ つ想像力をふくらませて読めることに、ある種の満足感を味わっていた。

フランス系カナダ文学と出会ったのもその頃だった。特殊講義で、『マリア・シャプドレーヌ(白き 処女地)』に始まり、エミール・ネリガン、アンヌ・エベール、サン=ドニ・ガルノーなどの詩、ガブリエル・ロワの『束の間の幸福』、イヴ・テリオーの『アガグック』、さらにはジル・ヴィニョーやフ ェリックス・ルクレールの歌詞まで、1 年かけて原典の抜粋を読んだ。作家の名前も作品も初めて知る ものばかりで、とても新鮮だった。中でも印象に残っているのは『束の間の幸福』のヒロイン、フロ ランティーヌの運命である。モンレアルの労働者街で生まれた若い娘に次々と降りかかる困難にいた たまれぬ思いがしたのを覚えている。この小説が暗いだけでないことに気づいたのは、それからずっ と後になってからだった。

翌年の秋から北オンタリオ地方にある大学のフランス科に派遣留学することになった。授業は少人 数の演習形式が多く、学生寮の自室からは湖が望め、フロアの「ドン」も、寮生たち(圧倒的にフラ ンコフォンが多かった)も、アドヴァイザーの先生もみな親切で(よほど日本人が珍しかったのだろ う)、恵まれた留学生活だった。当時の日本はまだまだ窮屈なところも多かったので、北米の開放的な 雰囲気がなんともいえず快かった。

フランコ=オンタリアンを代表する詩人ロベール・ディクソン先生の授業にはとくに熱心に参加し た。北米大陸でフランス系住民が置かれている困難な状況、言葉にたいする喪失感や彼らの郷土愛な どを主題にした詩を読みながら、内容と形式の関連性を探し当てることに熱中した。とはいえ、一歩 教室の外に出ると、学生どうしの早口のフランス語についていくのは至難の業。カナダフランス語の アクセントに慣れようと、2 学期目には演劇のシナリオを読む授業を選択した。そこでミシェル・トラ ンブレの『君のマリールーを永遠に』や『義姉妹』を読んで、ようやく巷のフランス語が少し聞き取 れるようになった。

10 カ月後に日本に戻り、そのまま仏文の大学院に進学したが、就職後、国際センターの仕事で 6 大 学の教職員が集まった際に初めて小畑精和氏にお会いした。それからしばらくして日本ケベック学会 を設立することになり、誘われるままに参加して今に至っている。カナダもケベックも、その他のフ ランス語圏も、80 年代以降急速に変化し、ますます興味深くなっている。出会いの不思議さをかみし める今日この頃である。

(おぐら かずこ)

 

会員による新刊書紹介

〇 小倉和子著『記憶と風景―間文化社会ケベックのエクリチュール』(彩流社 2021 年 12 月 30 日) 3000 円+税

ISBN978-4-7791-2796-0
*リンクから詳細をご覧いただけます:記憶と風景 - 株式会社彩流社 (sairyusha.co.jp)

 
事務局からのお知らせ

<学会費のご案内>

『カナダ文学研究』第 29 号をお送りする際に、学会費納入状況のお知らせと郵便振込用紙 を同封いたしました。ご確認の上、お振込み頂けますようお願いいたします。恐れ入ります が、振込手数料につきましてはご負担ください。

学会費:
(該当年度の 4 月 1 日より 3 月 31 日まで)正会員 7,000 円、学生会員 3,000 円

振込先:
郵便振替口座: 00990-9-183161 日本カナダ文学会

銀行口座: 三菱 UFJ 銀行 茨木西支店(087) 普通 4517257
                日本カナダ文学会代表 室 淳子

 

 
編集後記 

○ コロナ禍でなるべく街中に出るのを控えていましたが、春の到来とともに我慢しきれず映画館に足 を運んだり、食事をしたりしはじめました。いつもの店が変わっていたり閉店していたりと長きにわた るこのウイルスの影響を感じます。それでも人を楽しませようと作品を生み出し工夫を重ねる人々がい ることを本当にありがたく感じます。(Y)

○ 気がつけばコロナ禍での生活が二年。コロナ前より行動範囲がかなり限られ、新たな刺激が少なく なり、時間が飛ぶように過ぎていくように感じる二年でした。時間の感覚は一定ではなく、脳が情報を 処理する時間に応じて、速く感じたり、遅く感じたり、変動するそうです。今年度はなるべく脳に新た な情報を与え続けることで、「一日をより長く感じられる」ように努めたいと考えています。海外の研究 者仲間たちは、国際学会参加のため海外移動を再開しているようです。今年度のカナダ文学会の研究大 会もハイブリッド形式で開催されることになりました。久々にみなさまと会場でお目にかかれますこと を楽しみにしております。(T)

○ 東京で暮らすようになって二年、勤務校では工夫を凝らして対面授業を実施してきたこともあり、 電車での移動を伴う外出が増えました。移動時は読みそびれていた小説や懐かしい小説を読みます。 短時間の移動なので毎回10ページ余しか進みません。それでもいつの間にか分厚いペーパーバックも 最後のページに至り、時の過ぎる速さに驚きます。この一年もレッシングやアトウッド、書評で見かけた Where the Crawdads Sing など、国は問わず、女性作家をよく読みました。最近読んだ唯一の 男性作家はマイケル・オンダーチェ。なんとなく手に取った In the Skin of a Lion ですが、とても心 に残りました。(S)

 

NEWSLETTER THE CANADIAN LITERARY SOCIETY OF JAPAN 第77号

発行者 日本カナダ文学会
会 長 佐藤アヤ子
編 集 沢田知香子 & 戸田由紀子 & 山本かおり 事務局 名古屋外国語大学 現代国際学部

室 淳子(副会長)研究室
〒470-0197 愛知県日進市岩崎町竹ノ山57 TEL: 0561(75)2671
EMAIL: muro@nufs.ac.jp
HP: https://blog.goo.ne.jp/kanadabungaku kai84burogudayo
会長連絡先
EMAIL: ayasato@eco.meijigakuin.ac.jp


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