いじめの問題 2.いじめに対する子どもの耐性

いじめの問題 2. 2017.12.03.

いじめに対する子どもの耐性
子どものいじめに対する耐性にも問題が起き始めている。このことがいじめによる自殺を多くしていると考えられる。もちろんいじめる子どもを擁護する気持ちはないが、いじめに対する耐性も成長の過程で長い時間をかけて次第に獲得するものである。なぜならば、いじめは社会性のある動物の世界では普通に存在するものであり、このことが社会の秩序を保つのに重要な役割を持っていると思われるからである。サルの子どもたちでも、途上国の子どもたちでも、子どもの社会においていじめは存在し、そのことに対する対処法を子どもたちは成長の過程で手に入れてゆく。これが将来の社会への適応の基礎となっていると思われる。

いじめに対する耐性で重要なことは、人間関係における信頼である。その中でも最も基本的で重要なのは、親との関係である。出生して間もなくの間に、人間関係の基本ができるであろうことを予想させる本がある。1993年に発表された、正高信夫さんの「0歳児が言葉を獲得するとき」(中公新書)である。この中で、特に母親の授乳時のことから、子どもと親の関係は生後8週間ぐらいまでに基本的なことが完成されることが示唆されている。これは子どもが、この世界で初めてかかわる人間関係で、その後の人生の基礎となると考えられる。この最初の段階で、相手に対する信頼が得られないと、対人関係が難しくなることが推測される。正高さんの調査の時点で、既に相当数の母親が子どもとの関係が正常に作れなくなっていることが示されている。それは授乳時に母親が、テレビを見たり、次の仕事に気を取られたりして、子どもに十分に向き合っていない場合である。その時代からすると既に25年ほどが経っており、スマートホンなどの仕様頻度が上がり、現在はもっと多くの子どもが、親との良好な関係が出来なくなっているように思われる。
いじめに対する耐性では、授乳時以降の親と子どもの関係も重要な要素になる。以前に10年間ぐらい、不登校のこどもたちの野外塾をしていたことがある。多くの子どもは、学校などのいじめをきっかけとして不登校になっている。私の塾は、保護者と子どもと一緒に来ていただき、月に2回ほど野外で1晩のキャンプをする。ただし親御さんが子どもに注意することは、一切禁止である。最初の内親御さんは、子どもの不登校はいじめによることに原因があると思っている。しかし子どもが自由に遊び、次第に自分の意思が出てくると意外なことに気が付く。親が子どもの意思をほとんど無視してきたことである。ある親は、2年ほどしたときに、子どもの同じクラスにもっといじめられていた子がいたことに気が付き、その子が不登校にならずに過ごしていたことを調べていた。そして不登校と登校を続けた子どもの差は、親に話せたかどうかの差であると気が付いた。親にいじめを相談出来た子どもは、いじめられていても登校を続けていたのである。
ここでも親との絆の強さが、いじめに対する耐性に大きくかかわっていることが想像される。親がこの様に子どもとの関係に気がつくと、子どもも次第に自由になり、自分で物事を決められるようになる。こうなると不登校は終了で、自分の道を歩き出す。

自殺にはいろいろのメッセージが隠されている。いじめによって自殺する子どもたちの状況を分析すると、多くはその自殺の場所によってある程度の原因を推測することができる。
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