子どもの虐待やいじめ

子どもの虐待やいじめ    2019.02.12.

最近子どもの虐待のことが大きな話題になっている。子ども同士でのいじめも起きているが、あまりにも多すぎて大きく取り上げられることは少ない。

これらの問題は共通している部分があるが、あまり話題になっていない。

私は研究の初期に、野外のネズミの個体数の変化を調べていた。大阪に転職したころに、医学部であったので家のネズミについても研究するところとなった。

野外のネズミでは、社会の作り方が様々で、高密度になる種や自分たちで調節して高密度にはならない種類もいる。家ネズミであるクマネズミで実験を行った時に、ある密度まで増えると副腎が肥大し、攻撃的になり、群れが崩壊に向かうことを観察した。これは副腎から出るアドレナリンの働きにより、攻撃性が増し互いに殺しあう結果である。

アドレナリンが増加すると、非常に攻撃的になることは知られている。例えばニホンザルでも妊娠すると副腎が大きくなり、アドレナリンが増加すると思われる。このためメスであっても子どもを持っているメスには、上位の雄でもほとんど手を出さない。これは自然界で、子どもの生存率を上げるために発達した機能であろうと思われる。
社会的ストレスでも、副腎が肥大しアドレナリンが増えることは、クリスチャン女史による「社会ストレス説」として認められている。
現代の社会はストレスが多く、多くの人がストレスを抱えていると思われる。それに加えて、子ども時代に自由が無く、持っている遺伝子情報を十分に発達させられないままに成長する。この様な現象は、ここ100年ぐらいの間に起こったことで、それ以前は自然との接触によって何百万年かの遺伝子情報を自然に育てていた。自分の能力を伸ばせないで大人になると、様々な仕事の場面でストレスは増幅する。
生まれてきた子どもが、最初の段階で接触する保護者との関係も重要である。ここで十分な関係が出来ないと、以降の人間関係を上手くできず、常にストレスにさらされている状態になる。例えば母親が授乳しながらテレビなどに気を取られていると、子どもは母親との良好な関係はつくれない。この様な環境で育った親による育児は、さらに問題を難しくする。現代の社会は、ストレスの増産を行っているように思える。
ストレスが増加し、アドレナリンが増える状況にあると、突然激高に及ぶように思われる。ヒトでの研究は少なく、今後の大きな課題であろう。子殺しや親殺し、いじめなどには関係が深いと思われる。現在は血液などで、体内のホルモンの量が簡単に測定できる時代である。
脳科学者の中野信子氏は、『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書:2017)を書いているが、これは脳内物質からの提言である。
現代のようなストレス社会では、アドレナリンとヒトの行動の関係などの研究がもっとあっても良いと思われる。

話は異なるが、テレビの番組の出演者を観察していると、いかにもアドレナリンの増加に支配されているような表情や発言が多い。正義の味方の様に児相や親を非難しているが、本人の家庭は大丈夫であろうか。題材になっている事件の当事者と、あまり変わらない状況に置かれているように見える。
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