(国家資格)通訳案内士制度の改悪に反対!
さて、現在、観光客2000万人招致推進を口実に、観光庁や旅行関連業界などが(国家資格)通訳案内士資格制度の実質的な廃止を目論み、その準備もいよいよ最終段階に差しかかっています。
しかし、年間7,500万人以上もの観光客を迎えるフランス、4000万人を超えるイタリアでさえ、外国人観光客向けの歴史や文化・国民の暮らしぶりなどを紹介するガイドの質を一定水準以上に保つため、ガイド制度は極めて厳格に守られています。
我が国でも、(国家資格)通訳案内士制度は、その誕生期以来100年の長きにわたり、観光関連業界に対して、良質かつ誠実なガイドを供給し続けてきた実績を有しています。また、(国家資格)通訳案内士法は、無資格ガイド行為に対しては、罰金五十万円以下の処罰を規定しています。
それにも拘らず、最近十数年間における顕著な無資格ガイドのはびこりが、「赤信号、皆で渡れば怖くない。」という言葉同様に、当局の取り締まりが全くないことを良いことに、白昼公然と行われる事態にまで発展しています。しかし、多数で行えば、違法行為が合法行為に変わるわけではありませんし、当局による取り締まりのあるなしに拘わらず、違法行為はどこまで行っても違法行為であることには変わりがありません。
(このような違法状態の蔓延に対し、有資格通訳案内士の一部においてすら、無頓着でいたり、あるいは自分へのガイドの仕事の発注者の業界がこぞって企て行っていることだからと諦めたり、時には擁護したりする言動を見受けることがありますが、それは、通訳案内士法の制定趣旨などを正しく理解していないからです。)
しかし、日本では守らなくても良いような法律が、何故世界の観光大国では立派に維持されているのでしょうか?観光大国を目指す程に、その国や国民についての歴史・文化・生活ぶりについて、より正しく、要点をついた解説紹介を外国人観光客向けに行う必要性があるのではないでしょうか?なぜなら、外国人は、未知の異国事情や情緒に接し、かつ学び理解して自分の見聞を広め、人生を豊かにするために外国を訪問するのではないでしょうか?
従って、訪問先での未知の事情や情緒を十分には感じられない、歴史や文化の奥深さを学べない低品位の案内を受けても何ら満足することもなく、無駄な旅をして帰国するのみに終わるしかありません。
それでは、その異国について何の文化的・情緒的魅力も感じられず、二度と繰り返してその異国を訪れようと言う気も起らないでしょう。
国際交流が盛んになるにつれて、地域的な交流拡大に伴う知識や体験は増え安くなりましたが、それだけに多忙な現代人には、歴史的な側面での知識や情緒についての探求や修得は難しくなるばかりです。
例えば、自国の歴史についてさえ、1000年や500年前の事情について、私たち現代人は疎くなるばかりですが、現代人といえども、あるいは様々な意味で混迷の時代に生きる私たちであるだけに、余計に過去の歴史に学ぶべきことが豊富にあるにもかかわらず、気付かずに素通りしてしまっていることが実に多くあるのです。
そういった生きることへの知恵を学べる絶好の機会でもある外国訪問に於いて、その外国の歴史や文化・国民生活の様子について、正しくかつ詳細で専門的な情報を紹介し与えてくれるエキスパート・通訳案内士の存在と役割は、絶対に欠かせない極めて貴重なものです。
従って、外国人案内の専門家である(国家資格)通訳案内士(=ガイド)制度を実質的に廃止する観光庁などの提案には絶対反対します。
厳格なガイド制度は、神秘的な様相に包まれた2000年以前の歴史に始まり、その後におい
てもユニークなアジアの文化と伝統を受け継ぎ独自な発展を成し遂げてきた我が国を訪れる外国人の知的欲求や異国文化への探究心を満たし、情緒的な満足度を高めるのに絶対不可欠だからです。
以上、我が国を訪問する外国人が、彼等の真の訪日目的を達成できるように、またそれによって訪日客20000万人達成の国家目標が確実かつ持続的に達成されるように、私ども心ある多数の通訳案内士達は、協力し合って近日中に政府や民主党に対して、(国家資格)通訳案内士制度の実質的廃止に向かう改悪準備に対して、絶対に反対する請願書・要望書等を提出します。
平成22年5月19日
NPO日本通訳案内士連合(Japan Guide Consortium=J.G.C.)理事長・岡村寛三郎