拝啓 前原誠司国土交通大臣様

2010-02-02 21:47:05 | Weblog
国土交通省大臣 前原誠司様
観光庁長官 溝畑宏様

皆様の素晴らしいご活躍をとても嬉しく思っています。
さて、訪日観光客数を増加させるために、下記のメディカルツーリズムもご活用ください。
よろしくお願いします。

メディカルツーリズムの活用で観光立国を!
皆様のご清栄をお慶び致します。
ところで、新政府が昨年12月30日に閣議決定した新成長戦略においては、2020年初めまでに、訪日外国人客数を2500万人にまで増やそうと言う意欲的な計画が含まれています。その目標を達成するためには、とりわけ観光査証の取得の簡易化、魅力ある観光地づくりや留学環境の整備等が必要だとされています。
しかし、そういう従来型手法の受け入れ環境整備も大切には違いないのですが、2009年には680万人にまで落ち込んだ訪日数を、10年後には4倍近くまで飛躍的に伸ばそうという意欲的な計画を実現するには、画期的とも思えるような新しい魅力づくりが欠かせないでしょう。
そういう新しい魅力づくりに向けては、2009年より経産省も観光庁も取り組み始めたメディカルツーリズムを大きく育てることが最も可能性の高いものになると考えられます。
観光と医療がセットにされたメディカルツーリズムについては、既に多摩大学教授・真野俊樹先生著作の「グローバル化する医療(メディカルツーリズムとは何か)」(岩波書店)において詳説されていますが、そこで紹介されているタイランドの際立つ成功条件が、わが国にも(今後の努力次第の条件も含みますが)相当部分に於いて充足可能と考えられるからです。
ちなみに、真野教授の分析によれば、シンガポールやマレーシアでもタイランドと同じように医療レベルが高く、外国語対応も良くて快適に滞在する条件も揃っているのですが、比較手にはタイランドが際立って多い医療ツアー数を獲得できている理由として、タイには観光資源が豊かな上に国民の外国人をもてなすホスピタリティ精神が高いため、医療サービスを受ける本人のみならず付き添いできた家族たちも観光を十分に楽しめるという事情が強く働いているからだそうです。
以上の事情を総合すれば、わが国が今後努力するべき方向がかなり明確になってきます。
先ず(1)医療レベルが高いこと、次いで(2)外国語対応を十分に用意すること(多言語にわたり質の高い医療通訳や観光通訳の育成と配置)、(3)快適な滞在ができるような環境的・設備的条件整備、(4)観光資源が豊富な事、(5)国民の間に、外国人へのもてなしの心を行き渡らせることなどです。
以上の条件のうちで、(1)について、一般的にわが国の医療や技術・器具等のレベルは、しばしば優秀な内視鏡やその使用技術に代表されるように、世界的な土俵上でも強い競争力があると言われています。更に、治療等にかかるコスト順位も、主要国の中では中位ないしはそれ以下であり、費用対効果を考えれば安いと考えてもらいやすいレベルであると指摘されています(真野氏著作P.60等)。
その他、(3)(4)(5)の諸条件の充足もほとんど問題ないでしょう。
そこで、今後において格別に大きな努力が必要と思われるのが、(2)の医療と観光分野における通訳者の育成と確保の問題となります。
医療分野における通訳者の公的な育成は、つとに民間人の間でその必要性が強く叫ばれているにも拘らず、わが国がこれまで手を付けて来なかった分野ですが、米国やオーストラリアでの医療通訳制度の整い具合を参考に、今後はわが国でも、国際化の進展や人道主義の深まりに合わせるためにも、民と官との協力体制の下に本格的な議論と制度準備が必須でしょう。とりわけ、医療通訳の場合は、医療に関する広範囲な専門用語への理解と運用能力とが日本語と外国語双方にわたって必要です。単に日常会話レベルの外国語能力しか有さない家族や友人、ボランティア通訳に任せることは、しばしば患者と医師との間の意思疎通の誤りの原因となっているため極めて危険だと言われています。
同時に、メディカルツーリズムの良さが、医療サービスを受けることのみならず、その滞在中に家族や付き添い人が観光を楽しむことができるのが大きな魅力になっていることからも、質の高い観光通訳はツアー客の期待に応えるためにも不可欠です。
ところが、現在のわが国では、この点に関して懸念するべき事情が顕在化しています。
もちろん外国人を旅行に関して(有料にて)案内することは、60年前に制定された通訳案内士法により国家試験に合格した(専門職業家としての)通訳案内士に任され、彼らが「民間大使」として、とりわけ侘びやさびなどのユニークで深遠な思想を背景に持つ茶道や俳句文学、能や人形浄瑠璃・歌舞伎のような独特の舞台芸能を発展させた我が国の伝統文化を十分に研究・理解した上でガイドを行うものとされています。実際、法律施行後の数十年間にわたっては、そのような立法の趣旨は十分にまっとうされてきました。
しかるに、最近10年間に於いては、正当な理由もなく無資格でガイドをする外国人や日本人が急激に増えると共に、政府や観光業界も彼らの存在を黙認するどころか時には彼らを積極的に利用さえする異常事態へと発展し、遂には、このような無資格ガイドによるツアー客相手の闇での営利行為までが露見し、昨年には大きな社会問題にまで発展した事例さえありました。
ここで、原点に返って、国家資格通訳案内士をもって再度日本国の貴重な「民間大使」として、もてなしの心も十分に外国人顧客への日本歴史や文化を紹介する職業専門家として処遇する態勢を一日も早く回復するべきでしょう。
このような問題点が順次解決されていくならば、わが国のメディカルツーリズムもまた大いに発展を遂げ、政府の観光立国政策の推進に必ず貢献できると考えます。

平成22年1月26日 火曜日
NPO日本通訳案内士連合(Japan Guide Consortium=J.G.C.)
〒101-0052東京都千代田区神田小川町
2丁目6番12号 東観小川町ビル8階
☎03-3233-7518 Fax.03-3294-7410
Eメール:okamura3@oksemi.co.jp

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