医療開国 “Let’s go!”

2009-09-30 21:41:54 | Weblog
医療開国“Let’s go!”

Wednesday, September 30, 2009
東京通訳アカデミー・学院長・岡村寛三郎
〒101-0052東京都千代田区神田小川町2丁目6番12号東観ビル8階
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Eメール:okamura3@oksemi.co.jp

「医療の国際化」や「医療ツーリズム」については、東京大学名誉教授・開原成允先生や多摩大学 教授 真野俊樹先生による理論や実践の両面にわたる情熱的で真剣なリードのお陰で、わが国でも知る人が増えつつあるのではないかと憶測します。
簡単にいえば、外国人の方々に日本の医療施設をご利用いただき、併せて観光や保養をも楽しんでいただこうという目論見の進展です。
この目論見には、医療施設や医療従事者のみならず観光関連産業をも広く包含しますから、順調に成長すれば、大きな内需振興の効果を見込めます。
既に、タイやシンガポール・マレーシアなど東南アジア地域には、毎年世界中から180万人もの医療ツーリズム利用者が訪問していると聞いていますので、これに医療水準のみならず観光や文化水準でも好評のわが国が加われば、更に利用者は増加すると期待されます。
韓国では、この東南アジアでの活況を見習い、既に今年5月から政府も力を入れて、医療と観光目的での入国者促進のために医療ビザ発給制度を正式にスタートさせるなど、受け入れ態勢の整備に大きな努力を払っています。
他方、わが国では、一般的にはこのような医療分野での国際化には取り立てて関心を払ってはこなかったように思われます。例外的に、八王子市の北原脳外科病院さんが中国の瀋陽などにクリニックを開設されたり、千葉県鴨川市の亀田病院さんが早くから国際化に取り組まれ、この9月には病院評価の国際基準であるJCIの認証を受けられるなどのご活躍が人目を引くばかりでした。
しかし、6月に国際医療福祉大学の開原成允先生が、日経新聞紙上に於いて、わが国の医療の国際化推進を薦められたことが大きなインパクトとなり、その後は多摩大学 教授 真野俊樹先生の労作「グローバル化する医療(メディカルツーリズムとは何か)」が公表されるに至りました。
私どもNPO日本通訳案内士連合(Japan Guide Consortium=J.G.C.)が主催します東京通訳アカデミーも、今春から医療の国際化に大きな関心を持ち、政党・官庁に医療ビザ発給制度創設を繰り返し請願して参りました。
その後、政権与党や国会での議員構成も大幅に変わったばかりか、昨年秋のリーマンショック後の観光や医療をめぐる国際情勢の激変などがベースになって、内需振興の有力な手立てとして、医療分野や観光分野に対する新政府や一部関係官庁の取り組み姿勢に、一層の真剣さとスピードが加わった様子が窺われます。
そこで、医療と観光を組み合わせた、あるいは医療目的単独での外国人の入国促進にも今後は弾みがつく可能性を読み取れます。
ここで忘れてならないことは、医療の国際化を支える黒子の役割において、高度な語学力と医療関係の知識を備えた(職業的)医療通訳士の存在が不可欠であるということです。なぜなら、日本語に通じていない外国人にとって、母国語を解し、母国の宗教・文化や食習慣などにも通じて、親身に世話をしてくれる医療通訳士への依存には、計り知れない大きなものがあるからです。また、この医療通訳には、ボランティアや患者の友人・家族は役に立ちません。なぜなら、彼らは、診察室内や検査現場での医師と患者の間の言葉のやり取りを的確に通訳するのに必要な言語力や医療知識を持たず、医療の各現場で求められる技能訓練も予め経験せずまたは習熟していないため、実際に米国では、医療過誤訴訟の元になるケースも多く生じてきました。
そこで、現在では、連邦政府と多くの州政府が協力し合って、(有料での職業的)医療通訳士を原則的に優先採用しています。この方が、結局は医療過誤訴訟や損害賠償請求訴訟等に発展せず、治療も効率的でありかつ経費的にも明らかに安上がりであることが経験的に知られてきたからです。
そこで、医療の国際化と医療ツーリズムを推進するには、同時的にアシスタント役を勤める医療通訳士を育成することが、絶対的に必要になっています。
英語を大なり小なり理解できる医師は少なくはありませんが、他言語になると完全にお手上げです。実際には、中国からの治療目的での訪日者が多くなることが予測されますから、とりわけ中国語の医療通訳士の必要性は極めて大きくなってきます。
他方、医療費の支払いについての問題点ですが、米国で発売されている民間の一定の医療保険に加入していれば、先に鴨川市の亀田病院で紹介しました世界の病院評価基準(JCI)に適合している病院での治療に於いては、それが世界のどこの国に於いての治療であっても保険金給付が行われ得るという話を聞いています。
そこで、提案しますが、日本と中国の保険会社とが連携しあって、上述の米国の民間保険のような機能をもつ保険商品を中国で販売していただければ、しかも単にJCI認証病院だけを対象にするのではなく、一定の国内基準を設けてもうすこし保険金給付適合病院の範囲を拡大していただければ、中国からの日本への治療目的などでの入国者数は大きく伸びるでしょう。
かくて、これやあれやの対策が進み、日本における病院での受け入れ態勢も一歩一歩と進捗すれば、医療の国際化はわが国でも身近なものになるでしょう。
もちろんその時にはその時で新たな問題も生じるでしょうが、医療の国際化自体は東南アジア数カ国での多くの先例がありますから、その都度解決していく指標となる前例や対策例には事欠かないでしょう。
以上のような意見は、楽観過ぎる姿勢と思われる方もあるでしょうが、繰り返しますが、もう医療の国際化につぃては、日本は後進国であるという事実です。
手先が器用であるからとか、鉱物資源のない小国・島国だから加工貿易しか生きる道がないからとかの理由で、モノづくりとその製品輸出にのみ力点を置いてきたために、医療や観光のような本当の意味でその国の文化や歴史、芸術・教養に裏づけられた知的なサービス分野での内需振興策に於いては、恥ずかしながら大きな後れを取っているのです。
自分は何もしなくても、時代も環境もどんどん変化して行きます。
その変化と進歩を率直に肯定し活用して、国家のレベルでも個人のレベルでも平和と幸福の増進を図りましょう。
では、最後になりましたが、皆様のご健勝とご清栄をお祈りしながらこの筆を擱きます。



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