世界戦略としてのメディカルツーリズム(総論)

2010-10-19 10:53:27 | Weblog
世界戦略としてのメディカルツーリズム

皆様のご清栄をお慶び致します。
さて、医療の国際化は、メディカルツーリズムとか医療ツアーなどと呼ばれながらも、実は、医療のみならず観光との組み合わせを根本に据えつつ、世界中の多くの国々や人々の注目を集めています。
それは人々の最も大切な命と健康に関わるだけに、交通機関の発達した今日では、地球を半周もする程に遠く国境線を越える長旅の苦労もいとわないことが多いようです。
しかも、もしその旅程中に、外国の深い歴史や異国情緒も同時に味わい楽しむ機会も含まれていれば、病人患者のみならず、付き添いながら旅をする家族や従者にとっても、それほどに心身リフレッシュの機会となる良い旅はありません。
このような心身の健康を取り戻すための旅は、国境線の内部であれ、あるいはそれを越えての長旅であれ、貴族階級から庶民に至るまで、世界中の広い範囲で昔から現代に至るまで盛んに行われてきたようです。
今、その旅が改めて脚光を浴びてきたのは、10余年前から、先進国でハイレベルな科学や医療技術を学んで帰国した東南アジア各国の若い医師たちが中心となりつつ、先進国投資家の出資を受けて建設された豪華・ハイレベル施設・器具を備えての病院経営が、欧米各国や中東地域の富裕層の人気をも集めることに成功し、東南アジア各国の一国の経済全体の成長と躍進にも貢献する程に大きな力を発揮してきたことにあります。
このような新しい動きは、今日ではメディカルツーリズムと呼ばれて、様々に深刻な医療問題を抱える欧米や中東アラブ諸国の人々や患者の関心を集めるのみならず、経済発展の旺盛なアジアの周辺各国の人たちにも、改めて健康や長寿の大切さを思い起こさせ、国境線を越えてでも、我が国を含めた高いレベルの医療サービスを提供できる国々へ旅をしたいという願いや関心を強く刺激しつつあります。
とはいえ、このような欧米各国やアジア各国からの医療ツアーの顧客を、我が国が実際に受け入れるとなると、まだまだ整備されなければならない課題も山積していることを認めざるを得ません。
第一の課題は、病人が治療に必要な期間にわたって心配せずに滞在できる医療滞在ビザの発給制度でしたが、その最大の関門は、我が国政府・関係機関の尽力によって来年早々には実現する見込みです。
第二の課題は、外国人受け入れ希望の病院が、人員スタッフや治療システム・診療用設備・施設等を拡充・充実させるために必要な資金を、市場や金融機関から今まで以上により容易に集めることができ、安全かつ安心して投資・回収できる制度を整えることです。
この点は、政府が医療・介護部門の充実やメディカルツーリズムを新成長戦略の要として閣議決定し、正式に国家戦略としている以上は、政府や関係各省が喫緊の課題として解決を図るべきでしょう。
第三の課題は、健康や命の回復を期待するメディカルツーリズムの顧客には、とりわけ各国の中心都市と、日本の主要都市とが直行便で結ばれる便利さ優先での交通アクセスの改善が重要です。この点を配慮しての空路ネットワークの整備が、国家や地方公共団体・航空会社側の役割分担として不可欠です。
第四の課題は、メディカルツーリズムを直接的に担当する仲介業者・旅行業者・メディカルツーリズム管理者などにおける旅行客の満足度を高めるための専門的知識と技能との向上です。
例えば、とりわけ日本への医療ツアーを誘い決意させるような、海外の人たち向けの魅力ある国内医療情報の発受信であり、ツアープランの決定に至る親切で適切なアドバイス提供であり、空路や海路での快適な旅の提供であり、日本への到着後では、宿泊・病院・観光施設等へ案内する医療通訳士や観光ガイドなどによる(言葉の障壁を感じさせない)安全で且つ思いやり溢れる接遇であり、そして空港等への心からの優しいお見送りである・・・ことを思えば、それぞれの場面で顧客に接する有資格者・専門業者・担当者の一層の能力や信頼度の高さと接遇の心の深さ等が求められます。
幸い、こう云った各種の専門家や関連企業の養成は、既に民間の企業や学校施設等において鋭意取り組まれており、これら教育訓練施設等の一層の発展を見守るのみです。

以上、医療の国際化やメディカルツーリズムについての意義や実践上の課題を概観してきましたが、あとは実行あるのみでしょう。
しかし、この実行に際しては、メディカルツーリズムが世界的規模での戦略であり、世界中の国々や人々をターゲットやマーケットにすることが可能であり、国家的課題でもある以上は、国内の主要企業や機関が、中小の団体や企業等とも協力関係を築いて始めて、より迅速に又適正に実行・解決が行われるでしょう。
そこで、メディカルツーリズムでの重要なプレーヤーを勤める「医療通訳士」や「メディカルツーリズム管理者」を養成する民間スクールの当アカデミーでは、ツーリズムに関与する国内主要機関・団体等のご支援・ご指導・関与等を切にお願いする次第です。
なにとぞよろしくお願いします。

平成22年10月17日
東京通訳アカデミー・学院長・岡村寛三郎
特定非営利活動法人 日本通訳案内士連合 理事長
一般社団法人日本メディカルツーリズム協会・副理事長
〒101-0052東京都千代田区神田小川町2丁目6番12号 東観小川町ビル8階
☎ 03-3233-7518 or 03-5577-6293 Fax.03-3294-7410
Eメール:okamura3@oksemi.co.jp



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