医療通訳士講座「なぜ5カ月なのですか?」「何を学ぶのですか?」「なぜ資格が必要なのですか?」

2009-09-25 21:38:40 | Weblog
医療通訳士講座・学習情報

質問①「東京通訳アカデミーの講座期間は、なぜ5ヵ月間という短期間なのですか?」「そんな短期間で多くの難解な医療専門用語を覚えられるのですか?」

質問②「専門用語を覚えるだけで医療通訳士になれるのですか?」

質問③「ボランティア通訳者や家族・友人でも病院内で通訳できるのではないのですか?なぜ専門の職業通訳士が必要なのですか?」

平成21年9月25日 金曜日
東京通訳アカデミー・学院長・岡村寛三郎

質問①への回答
医療専門用語が難解な理由・・・ギリシャ語やラテン語に語源を置く見慣れない用語が数多く使われるため、英語に相当慣れた方でもちょっと見れば、「もう二度と見たくもない!」という印象を持ちがちです。
辞書を引いても、「Greek」=「ギリシャ人」という言葉は、「全くわけのわからない言葉」、「ちんぷんかんぷん」という意味をも持っているほどですから、欧米人にとっても嫌な言葉の代表例なのでしょう。
しかし、これは習い始めるとなかなかに合理的に作られた素晴らしい言語であると感じる日が来ます。
同一や類似の綴り方や表現の仕方が多い上に、発音の仕方も英語発音法とは異なる場合も数多く、当初はそれらの区別や習熟にひどく戸惑いますが、数ヶ月間ほど繰り返し接していれば、それらが欠点ではなく、多くの語に共通する統一的な規則性や一貫性も気付かれ始め、むしろ極めて覚え易い言語であることが次第に分かり始めます。
それに、難解な言語であるということから、これを少しでも優しく覚える方法はないものかという医療分野の学習者の皆さんの熱い期待を背負って、数多くの種類の学習法が開発され、ハウ・ツー・スタディーもの書籍の種類や数も膨大です。
「それらの中で最も優れた手法や書籍を生徒の皆さんに紹介したい!」というのが、私ども東京通訳アカデミーの医療通訳士講座担当(英語)の講師の切なる願いです。
数多くの試みと書籍を漁り続けた中で、今日において生徒の皆さんにお勧めできるのは、
「プログラム学習による医学用語の学び方」第2版・訳 裏田武夫(医学書院\4,725)です。
ただし、この手の学習法は、医療分野の科学技術の発展と同じく、正に日進月歩ですから、ご自分でも絶えず図書館や大手の書店を覗き続けて最適の手法や書籍をお探し続けください。このような最高のものを求めての「あくなき探検類似の行動」が漸く習慣になった頃には、(不思議なことに、あるいは当然のことながらに)貴方はもう既にギリシャ語の学習法のコツや重要単語の大半を身に付けている免許皆伝に近く、医療専門用語の基本的学習コースの卒業段階に達しています。
以上、半年以内の学習で十分です。物覚えが良い人や、東京通訳アカデミーの講習を受けて効率的な学習法を最初から採用した方などは、十分に半年以内で医学専門用語の重要部分を身につけることができます。
この事実から判断しても、東京通訳アカデミーが僅かに5ヵ月間という短期間で医療通訳士講座を仕上げ、その最終日に「医療通訳士技能検定試験」を実施するスケジュールは、無駄がない「必要にして十分なもの」だと言えるでしょう。

質問②への回答
もちろん、医療通訳士の仕事は、ギリシャ語の重要部分を身につけているだけではできません。
医療専門用語修得は、医療通訳士として仕事をするための能力獲得に於いて最大の難関ですが、これは仕事を遂行するにあたっての前提知識であって、仕事自体の核心部分ではありません。重要部分は、患者の体や病状をできる限り率直・正確に医師に伝え、医師の診察・検査・投薬上の患者への質問や説明を、客観的かつ迅速正確に伝える技能如何にあります。
その他、個人情報の秘匿など患者の基本的権利を守るべき倫理要綱も多数あり、医療通訳の先進国・米国から学び応用するべき事柄は数多くあります。
これらすべてを心得て、単に医師や病院と患者との間の言葉の橋渡しのみならず、患者の病気回復や医師の診察や治療等の容易化と迅速化・効率化・治療費用の低減化などへの協力を通じて、関係者一同からは真に医療活動の一部として看做され信頼されるに値する協力活動を心がけなければなりません。
このような理想的な活動に向けての知識の習得や技能の絶えざる改善向上に向けて、東京通訳アカデミー在学中のみならず、卒業と資格取得後に於いても懸命の努力を行う必要があります。

質問③への回答
ここに、「医療通訳入門」(松柏社:出版、連利博:監修)編より、なぜ職業的専門家としての医療通訳士が必要なのかについての理由を簡潔に纏めた文章を紹介します。
★東京通訳アカデミーの2009年秋季コース在学中の模範生によるものです。

重要課題 (7) 9月第4週第1回(22日付)課題:「医療通訳入門」編より
米国では、多様な種類の通訳者がいてそれぞれに長所短所があります。それらを詳しく説明し、なぜ職業的通訳案内士制度が望ましいのか理由づけてください。
以上を、A4サイズ2枚以内で纏めてください。

回答:現在の医療通訳には以下の5種類がある:
               記
① 患者の家族や友人、同僚
長所:最も身近に手を借りられる。コストがかからない。
短所:専門知識やトレーニングを受けていないので十分な通訳が出来ない可能性がある。患者の子供が通訳をする場合、親が重篤な病状だと精神的外傷を招く恐れがある。家庭内暴力、性的虐待、薬物濫用等の場合、内容を歪曲したり隠蔽する可能性がある。友人や同僚の場合はプライバシーが遵守されない可能性がある。

② バイリンガルの病院職員
長所:病院内で身近に手を借りれる。コストがかからない。
短所:専門知識やトレーニングを受けていないので十分な通訳が出来ない可能性がある。片手間的な仕事になるので本職がおろそかになり、同僚の不満を買うケースもある。病院側の組織的な対処が必要。

③ 病院のボランティア通訳、コミュニティー通訳
長所;身近に手を借りれる。コストがかからない。
短所:専門知識やトレーニングを受けていないので十分な通訳が出来ない可能性がある。同じコミュニティーに住んでいる者同士の場合、プライバシーの問題がある。

④ 専門の医療通訳
長所: 専門知識とトレーニングを受けている。
短所:コストがかかる。但し、長い目で見た場合、的確な通訳をすることによって効果的なコミュニケーションや時間の使い方、治療方法等が可能になるので結果的には医療費の軽減につながる。

⑤ 電話通訳
長所:電話一本で多様な言語に対応できる。専門知識がある。24時間体制でサービスを受けられる。
短所:出産時などの通訳が出来ない。ボディランゲージなどを読み取れない。コストがやや高め。質の問題がある。

以上の5種類から見ると、最も重要な点は専門的な知識とトレーニングを受けているかどうかである。風邪や軽い怪我のような場合は患者の家族や友人、病院職員、ボランティアで十分であるが、複雑・深刻な病気や緊急な病気の場合は、的確な通訳であるか否かが治療方法や工程に影響し、治療効果に現れる。よい通訳はよい治療につながる。これは患者や医療提供者にとっても喜ばしいことであるが、同時にコストの面でも最も効率のよい方法であると言える。

この最重要点を満たすのは、専門の医療通訳またはバイリンガルの医療従事者である。
医療通訳とはno add, no omit, no change という原則に基づき、医師と患者のコミュニケーションをスムーズに行わせる黒子のような存在であるが、ただ専門用語を知っているというだけではなく、文化や習慣の違い、プライバシーを踏まえて通訳を行うことが求められるので、ボランティア通訳とは質が異なる。医療通訳は医療行為の一部であると言っても過言ではない為、高い専門性を要する専門職である。
                                 以上

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