インドの経済哲学(インドへのマーケッティング訪問記)

2011-11-28 09:09:54 | Weblog
インドの経済哲学(2011年11月、1週間の旅を終えて)

≪初めに≫
皆様のご清栄をお慶び致します。
さて、インド主要都市での経済の急速な成長ぶりは、正に聞き及ぶところの30年~20年前における中国・沿海都市部でのゴールドラッシュの幕開けにそっくりのように思われます。
豪壮にしてきらびやかな公的施設と近代的な真新しい空港やビジネス・オフィスの見事な一群を見た後で、郊外に至る無限の長さの道路沿いでのゴミの大散乱といった正反対の現象を見れば、この国では、正に人々の熱気と活気、そして無秩序・非衛生とが共存する大混乱・狂乱状態にあるのかと思わざるを得ない程に強烈な印象を抱かざるを得ず、これらが衛生的でかつ高いレベルでの統一性と秩序を実現するには、人々の衛生観念と浄化に向けての意識の高揚と相当な作業年月(=時間の経過)とが必要だと思われます。
言い換えれば、この混乱の中に潜む人々の姿勢や生き方は、個人的な生活フィールドでの徹底的な節約スタイルの追求であり、その結果が、公共的場所[例:道路わきなど]へのゴミの放棄・汚染への無頓着という悪しき状態の到来であったのかもしれません。
あるいは、このことは、「泥池の中において咲き誇る清らかな睡蓮の名華」に例えられる
矛盾と正邪、ないしは善人と悪人との共存共栄を意味している深い宗教的哲学の現れなのでしょうか?
ともあれ、近い将来には、中国を追い越して世界最大の人口数になり、GDPも既に日本を追い越していると言われるインドの南部・バンガロールと北部・デリーへの旅は、私たち日本人の日々の暮らしの底辺に潜む禅宗の根本義[憐みの心・節約・謙虚]とは、一部で重なるものの、日常的生活場所の徹底的な神聖化、即ち公的・私的場所を問わず、清純化を目指して整理整頓・清掃を重視する大方の日本人の姿勢や態度とは大きく異なるものであり、インドの社会哲学や市民感覚を理解するには、日本人の思考の幅における相当な拡大が求められると言っても良いでしょう。
ただ、私は、インドの社会的慣習や市民態度において、大いに賞賛するべきものも発見しており、これはぜひとも見習いたいものだと考えています。
それは、12億といわれる巨大な人口の中に、実に多様な宗教や民族・言語が入り混じり、各部族間での階級や生活習慣などにおいても大きな違いがあるにもかかわらず、はたまた貧富の差が極端に大きいにも拘わらず、家族的生活場面や社会的交流場面において、それぞれの集団内における各人の地位や経歴等が深く理解され尊重されて、不必要な軋轢を起こさずに、平和的に順応し対応する姿勢が貫かれ、維持されている事実です。
悪名高いカースト制度についても、今では種々の面で息抜き穴が設けられ、風通しを良くする試みが行われて、実際にも一歩一歩とその成果が上りつつあることを示す具体例が報告されています。
例えば、日経新聞[11月27日付け]によれば、次のとおりです。
「女性の地位向上に太陽光が一役:インドは差別解消へ向けて<貧困>女性に太陽光発電関係の技術を教え、技術者として活躍する基盤を付与することによって、経済発展と共に国際社会の注目を浴びる今日、人権問題での国際批判の回避を狙う試みが行われている・・・」
このような社会改革の努力が続くインド政府と日本政府とは、アフリカ諸国・途上国での道路整備・インフラ整備事業に乗り出すと日経新聞は報道していますが(11月26日・夕刊)、そこにおいては、道路建設や維持について日本側が技術指導や必要機器の提供を行い、工事監督者の提供や機械・資材類の調達はインド側が行うそうです。

以上の通り、インドの今後の社会的・経済的発展に必要な手段や技術・知識等につき、日本が提供できる分野や機会は多く、インド・バンガロールで、進出を希望する日本企業向けの(日立製作所出身の)コンサルタント・河込正道氏によれば、「インド人の多くは、諸種の分野で世界をリードしている日本人に対して、尊敬にも近い眼差しと心で接している」そうですので、日本企業や諸団体が、インド側と手をつないで共に発展の道をたどるプロジェクトや努力が大いに可能であり期待も持たれます。

≪進出の具体例≫
実際、インド側では、ビジネス規制が次々と緩和されつつあり、外国企業の進出が容易になりつつあります。
(a)様々な分野での日本企業のインド進出ニュースが報道されない日は無いと言っても差し支えない程の日経新聞・11月25日付によれば、スーパーやコンビニショップなどの総合小売業分野では、大都市圏において外資の出資比率が51%まで可能になったため、ローソンやイオンなどが1号店の出店を検討し始めたそうです。
他方、単一銘柄の商品を扱う専門店分野では、ほぼ出資規制が撤廃されて100%出資も可能になるため、「無印良品」や「ユニクロ」が出店を検討し始めているそうです。

(b)同様に、小生がバンガロールのJETRO事務所で聞いた話によれば、とりわけ教育分野では、外資の出資が完全自由化され、幼稚園や学習塾、社会人向けの職業教育学校なども進出が大いに可能だそうです。
そのため、14歳以下の子供人口が総人口12億の5割を占めると言われているインドで日本の教育ビジネスが進出できる余地はかなり大きいでしょう。

(c)インド社会でとりわけ著しい発展をしているのは、医療分野です。
米国での外科医の20%、英国での外科医の40%がインド人であるという報道さえ見られる今日、インド人医師の世界を舞台にしての活躍は目を見張るべきものがあります。
こうした豊富な人材基盤が、国内外の投資家による大規模な病院建設投資を呼び、インド国内での≪病院の国際標準であるJCI認証取得≫病院数は、既に昨年時において16機関に及んでいます。とりわけ、APOLLO病院グループやFortis病院グループの実績と知名度は、国内外に広く知れ渡っています。
バンガロール訪問時に、これらの病院を隅々まで見学させていただきました。
インド国内には、治療費が無料であるにもかかわらず、医療レベルの優れた国立病院もありますが、上記の有料・私立病院が、毎日数えきれないほどに多数の患者等を診療している光景を実際に見たり聞いたりして、その驚きも倍になりました。
ただ、日本のJCI取得病院である千葉県の亀田総合病院や東京・五反田のNTT東日本病院など、日本を代表する病院も数多く訪問している小生から見れば、施設面や技術力などでインドの病院が日本の病院に追いつくには、まだまだ相当な資金・人材の投入や年月の経過が必要だとは思いますが、それでも、世界標準レベルに接近する努力や顕著な成果が見られるにつけ、おおいに尊敬の念を深くしました。
そこで、日本の病院では種々の規制や社会的事情があるために手掛けにくいとされる種々の臓器移植や生殖医療の分野では、日本の患者さんなどがAPOLLO病院グループを利用できるチャンスが大いにあると考えます。

(d)従って、日本からインドを訪問するメディカルツーリズムや(英語圏での)日本人医療通訳士の活躍する基盤はおおいにあります。
同時に、インドに駐留する日本人は5000人程度とまだまだ少ないようですが、今後の多数の企業進出や日印両政府の共同事業の進展などを予測すれば、インド国内での日英語間でのビジネス&医療分野での通訳者の活躍の舞台はおおいに増加するでしょう。
とりわけ、インドでは、道路、電力・水道供給のインフラ整備面での大きな立ち遅れが目立ちますが、これらの整備を待っていれば、それらに関わる種々のビジネス機会を失うことになるでしょう。
同じことは、教育や医療分野においてもいえるでしょう。要するに、インフラ整備が十分に整う(例えば)10年後の時期に至れば、インフラ関係のビジネスを中心に多くの分野において日本企業や団体のビジネス機会は減少し、先発企業が確立し占領してしまった実績やシェアーの領域に食い入ることはもはや不可能になるでしょう。
なぜなら、インフラ整備関係の産業の裾野は広く、建設工事や電気関係の機器類の供給や補修事業のみならず、それらの事業に関わる人々向けの種々のサービス事業もまた基盤事業の成長と安定・衰退のサイクル波に大方は準ずるものと予測されるからです。
そういう意味で、今が正に何業であるかを問わず「進出」のチャンスであり、このチャンスを逃せば、インド・マーケットへの進出を諦めざるを得ないと言えるでしょう。

(e)ちなみに、広い意味での医療支援サービス事業を行って、中国とベトナムで大きな実績を築いて来られたウェルビー株式会社=”Wellbeing”さんが、早くも2012年冒頭から、
インド・デリーで、日本の進出企業スタッフやその家族向けの緊急時医療支援サービスを開始されるとのニュースは、正に上記の建設・インフラ整備事業等の進出に伴うスタッフ支援サービス事業の「付随性」を雄弁に物語っています。
≪資料≫ウェルビー株式会社【英文名:WELLBE INC.】
≪日系会員企業 6500社以上≫の求人一覧 > ウェルビー株式会社【英文名:WELLBE INC.】 アラームセンターの運営 ●中華人民共和国における損害事故調査 ●中華人民共和国内主要都市の有名病院提携ネットワークの運営 ●海外進出企業の駐在員向け危機管理及び福利厚生制度の企画、インドにも拠点を作り、シェアを拡大させました。

(f) ≪インターネット記事≫デリー近郊に日本人村建設?
投稿日: 2008年10月22日 作成者: ogata
こんな記事が目に付いた。
インド首都に「日本人村」 企業の進出促進、日印閣僚合意へ (NIKKEI NET)
『日本の中小企業などのインド進出を促すため、インドの首都ニューデリー近郊にマンション、ショッピングセンター、レストランなどを備えた「日本人村」をつくる』とのことで、日印の閣僚間で合意することになっているのだそうだ。
『工業団地や物流拠点だけでなく、日本人が現地で快適に生活するのに必要なあらゆる設備や店舗を集積した複合都市開発』とも書かれている。いったいどんなものができるのか?
マンモーハン・スィン首相は本日訪日、明日10月22日に予定されている麻生首相と日印首脳会談で、『産業大動脈構想』に正式合意することになる。この構想は、デリーとムンバイー間の産業基盤の整備をしようというもので、両都市間を結ぶ貨物専用鉄道の建設が最大の目玉。鉄道沿線には、24の開発地域を設けることも計画されている。
日本政府はおよそ4500億円規模の円借款を供与すること、工業団地開発などにインドと共同で約150億円の基金設立を予定するなど、総事業費10兆円規模の大型プロジェクトであるというから大変なものだ。
日印両国政府ともに、日本からインドへの投資拡大について非常に前向きの姿勢を続けているものの、日本の経済界から見たインドは、中国や東南アジアと違って、まだまだ距離感があるようだ。日本の対印投資は全体の0.3%に過ぎないという腰の重さは、まさにその証拠といえる。
そこで、日本の企業がインドでより操業しやすい環境を整えるとともに、インド側からの積極的な姿勢をアピールしようという目的で、日本人村の建設が企画されたのだろう。『中小企業などの進出を〜』とあるように、バブル前後からの日本の製造業を中心とした、中国や東南アジアに対する旺盛な進出や投資のありさまを研究したうえで、モノやサービスの貿易自由化するEPA(経済連携協定)交渉の大筋合意も近いインドの魅力と合わせてアピールしたいところだ。
『日本人村』では、在住日本人が必要とする様々なサービスを提供する手立てがなされる。日用品店、食料品店、レストランといった店舗が軒を並べるほか、在住日本人たちを相手とする学習塾、不動産屋、メディアその他さまざまな業種の人々もまた続々と上陸してくるとすれば、在留邦人4万人の上海、同じく3万人バンコク(ともに短期滞在者、出張者、観光客を含めると常時滞在している者を含めた邦人数は倍以上になるという)のようになる日はそう遠くないのかも??
両国政府や出資関係者の思惑どおり、急激に在留邦人が増えることが良いことなのかどうかはさておき、こうした情勢のもとで今後10年間ほどのスパンでデリーに在住する日本人人口がこれまでよりも更に速いスピードで増加することは間違いないようだ。その中でインドと日本の間での様々な関わりかたの選択肢が増えてくることは、私たち日本人にとっても、インドの人々にとっても、決して悪いことではないように思われるのだが、いかがだろう。

(g)さて、そこで、(1)医療通訳士など国際ビジネスマンの育成と派遣事業での東京通訳アカデミー、(2)学習塾の岡村ゼミナール株式会社のインド各地への進出企画の実現可能性を慎重かつ仔細に検討した上で、具体的プラン作りに着手しなければなりません。
ただ、これらの作業にはまだまだ多くの現地情報と時間が掛かるため、今日の時点では発表できないことをお許しください。
上記2学校の新年度の講座準備や開設が軌道に乗る来年5月に、再度インドを訪問する予定を立てていることなど、今後も鋭意前向きに取り組んでいく姿勢を持っていることを明らかにしておきます。

(h)さて、最後に、日本向けのメディカルツーリズムについての可能性につき記述しましょう。
(1)インドからの顧客獲得の可能性・・・とりわけIT産業や医療分野をはじめ、国造りに関わる経済発展が広範囲で急激なだけに、日本への観光旅行や病気治療・温泉療養にも来日できる富裕層が増えている事実が顕著に認められます。
そこで、勧誘内容等の工夫次第では、日本への一般観光客やメディカルツーリズム顧客等の獲得が十分に期待されます。特に、インドの病院が未開拓の癌等での粒子線や重粒子線の治療分野をはじめ、日本人医師の得意技とされている内視鏡を巧みに駆使する胃腸手術の分野などを中心に積極的に訪日客を開拓して、その努力が裏切られることはないでしょう。
とにかく、インド病院側において、日本の医療情報が極端に不足していることを、この度のインド病院の訪問時に強く感じましたので、日本からの医療情報の発信が必須です。
ちなみに、東日本大震災・原発事故以降、中国や台湾・香港などからの顧客数の回復は、関係業界の努力により幸い着実な歩みを見ていますが、残念ながら、欧米からの訪日客数が落ち込んだままです。その落ち込みを補うためにも、英語圏であるインドからの顧客を開拓する努力や工夫が必要です。
(2)欧米圏からの顧客数の回復に向けては、政府も民間業界においても、さまざまに努力がなされていますが、原発事故の風評被害を乗り越えるための辛抱強い努力が一層のこと必要です。単に、時間の経過を待つだけの消極的な姿勢は禁物です。
現に、距離が近くて旅行に係る時間数が少なくて費用も安いインド観光には、欧米から、その経済情勢の厳しい悪化が伝えられる今日でも相当数が訪れていることを、世界遺産・タージマハールへの訪問時と現地の宿泊用ホテルの利用時に併せてしっかりと観てきました。

≪最後に≫
インドとは、インフラ整備関係での進出や交流促進だけではなく、医療分野や教育事業の分野でも、もっと積極的な協力関係の構築に向けて努力する余地が大いにあります。
とりわけ、外資の進出にことさらの障壁がないとされる教育事業分野では、現時点で6億人にも及ぶ子供たち向けの学校設置と運営や社会人の職業能力開拓事業分野での協力関係の創造と活動が十分に可能であり、また両国の将来的な関係強化のためにも是非とも必要です。

(1)学習塾・私立学校等の民間教育機関のネットワーク=「播磨民間教育ネットワーク」や一般社団法人「日本教育者セミナー」の加盟塾、
(2)そして「岡村ゼミナール株式会社」、
(3)更には、通訳士・国際ビジネスマンの育成と派遣を主力事業とする「東京通訳アカデミー」は、
微力ながらも協力し合ってインドとの国際親善・交流の拡大と深化に向けて尽くす意向を持っていますので、今後のご支援を何卒よろしくお願いします。

平成23年11月27日 日曜日
岡村ゼミナール株式会社 代表取締役 会長
〒670-0877姫路市北八代1丁目7番2号

東京通訳アカデミー・理事長
〒101-0052東京都千代田区神田小川町2丁目6番12号東観小川町ビル8階
電話03-3233-7518、Fax.03-3294-7410、e-mail:okamura3@oksemi.co.jp