時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

眠れぬ雪獅子

2011-10-29 | 舞台/役者
黒い帽子の踊り

それは
チベットに伝わる悪霊を鎮める祈りの舞いであったが
9世紀
仏教を弾圧した暴虐王ラン・ダルマを暗殺するために
僧侶のラルンが
踊り手の一人に扮し
忍び寄ったことで伝説の踊りとなり
ラルンは王を殺して
自ら眠りを殺した男となった

王を殺し
それでも尚
生き延びてしまったラルン…

一方
ラルンの弟は
文字の持つ力の弱さに打ちひしがれ
来世では
自ら暗殺者となり
正義をまっとうすると
その命を閉じた

時は流れ

1951年
東チベットの古都チャムド

寺院の前に捨てられていたテンジンは
僧侶となって仏に仕えると言う道を拒み
旅芸人となって世界中を旅していた

一方
詩人となる都を離れていたドルジェは
父をチャムドの王に殺され
その復讐を果たそうと
筆を捨て剣を手に
密かに都に舞い戻っていた

そんな二人が
運命的な出会いを果たす

収穫祭で披露される踊り子に紛れ
王を殺害しようと
ドルジェは
テンジンに踊りを教えて欲しいと頼む

その踊りとは
悪霊を鎮める祈りの舞い

乞われるままに
踊りの手ほどきをするテンジン
行く手に待ち受ける大きな黒い影と
その影に翻弄される二人の運命も知らぬまま…

チベットの人々の心に根付く
ターラ菩薩の光が二人を正しき道へと導くのか…


正直
前半 爆睡しそうになりました
ですが
話が見えてくると
なかなか…

9世紀に存在した僧侶ラルンと弟は
20世紀の時代
テンジンとドルジェとして
輪廻転生しておりました
はじめは
ドルジェがラルン
テンジンが弟の転生後の姿かと思っておりましたが
ドルジェが弟で
ラルンがテンジンでした
と申し上げても
舞台をご覧頂いていない方には
???ですね

王を殺害したラルンは
仏の教えを破り
それが正しかったのか悩みます
これからどう生きればいいのか
何を支えとして生きればいいのか
仏の教えを乞います

一方
ラルンの弟は
兄の行いが仏のためであり
正しいことだと主張
都中にこれまでの経緯を書いた文章を張り出し
歴史にラルンの名を残そうとします
がしかし
権力の前に文字は何の力もなく
真実がいとも簡単に捻じ曲げられ
闇に葬られると言う事実を突きつけられ
失意のまま命を落とす

それぞれの念が
時空を越え
現代のチベットに生きる二人の男
テンジンとドルジェとして転生

ドルジェの暴走を
かつて眠りを殺した男として生きた
ラルンことテンジンがどう止めるのか!

(暴虐な王が治める)こんな酷い都なのに
人々は去ろうとしないのです
それは
ここが自分たちの生まれた国だから!
この国を愛しているからです


その言葉に
観客の涙腺が一気に緩みました

人間が自ら作った鎖は
人間の力で打ち破る事が出来る

命と鎖の果てにある末来を信じよう
未来は定められたものではない!
末来は自らの力で作るもの

例え
思いが叶わずとも
思い続けることで‘思い’は引き継がれていく

無駄だと思っても
諦めずにれば
いつか思いは届く


ラルンとテンジンの台詞
ひとつひとつが
ズシっと心に響くのでありました

ハムラビ法典推進派と致しましては
ちと心がチクチクする舞台でした
確かに
暴力では何も解決しない
憎しみは憎しみを生むだけ!

誰かが
何処かで
その連鎖を断ち切らなければならない

理性で理解していても
感情がそれを許さない

人が生きていく限り
絶えず付きまとう課題!?

難しい…

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