5. 慰め (降誕後主日)
ルカ2:25-40
(神殿で献げられる)
「主よ,今こそあなたは,お言葉どおり
この僕を安らかに去らせてくださいます。
わたしは
この目であなたの救いを見たからです。
これは
万民のために整えてくださった救いで,
異邦人を照らす啓示の光,
あなたの民イスラエルの誉れです。」
(ルカ2:29-32)
1.
今年も後1日で終わります。
暦によって終わりを知らされ,
一つの区切りをつけることは,
素晴らしいことです。
それは,
わたしたちが命を持っているからです。
命あるものは,終わりがあります。
そして,この終わりを心に留めることは,
人間として生きる上で
欠くことができません。
詩編には,次の祈りが献げられています。
「生涯の日を
正しく数えるように教えてください。
知恵ある心を
得ることができますように。」
(詩篇90:12)
終わりを知ることは,
知恵のあることなのです。
2.
(ルカ1:1-4 献呈の言葉)
また,
歴史に目を向けることも
知恵のあることです。
ルカによる福音書は,
冒頭の「献呈(けんてい)の言葉」
にありますように,
テオフィロという人に献呈された書物です。
ルカは,「献呈の言葉」として,
テオフィロに向かって,
次のように書いています。
「敬愛するテオフィロさま,
わたしはすべての事を
初めから詳しく調べていますので,
順序正しく書いて
あなたに献呈するのが
よいと思いました。」
(ルカ1:3)
すべてのことを詳しく調べ,
順序正しく書くことは,
歴史的に書くことです。
ですから,イエスさまの誕生の時も,
またヨハネが
荒れ野で悔い改めを宣教し始めた時も,
その時代の支配者たちの名前を
記しています。
それによって,
イエスさまがお生まれになった時は
皇帝アウグストゥスの時代であり,
ヨハネが宣教を開始したのは
皇帝ティベリウスの
時代であることがわかります。
歴史とは,
終わりを持つ人間の連続性を示すことです。
皇帝アウグストゥスが,
その生涯を終えても,
ローマ帝国の歴史は続きました。
このように,
ルカは福音書を書くに当たって,
歴史性に注目しています。
福音書を書いたルカは,
イエスさまの福音が
使徒たちによって継続される歴史として,
使徒言行録も書きました。
この継続性を持たせるものは,
教育ではないでしょうか。
ルカによる福音書と使徒言行録とは,
教会の歴史を受け継いでいくようにと,
わたしたちを教えているのです。
3.
(ルカ2:25-40)
(神殿で献げられる)
教育のサンプルとして,
今日の福音書の日課は
シメオンを示しています。
ルカは,
シメオンが信仰を持つ者の
手本であることを
次の言葉で示しています。
「この人は正しい人で信仰があつく,
イスラエルの慰められるのを待ち望み,
聖霊が彼にとどまっていた。」
(ルカ2:25)
「正しい人」とは,
ローマの信徒への手紙にある次の
「正しい者は信仰によって生きる」
(ローマ1:17)という
「正しい者」のことです。
「わたしは福音を恥としない。
福音は,ユダヤ人をはじめ,
ギリシア人にも,
信じる者すべてに救いをもたらす
神の力だからです。
福音には,
神の義が啓示されていますが,
それは,初めから終わりまで
信仰を通して実現されるのです。
『正しい者は信仰によって生きる』
と書いてあるとおりです。」
(ローマ1:16-17)
シメオンの賛歌聞き入る年の暮れ
(2006年12月30日 F 教会)
(降誕後主日)
松隈 貞雄 牧師