亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

とにかくイチャイチャハロウィン小説版⑪

2017-12-25 09:58:55 | とにかくイチャイチャハロウィン小説版
純血のヴァンパイアというのは
昨今わりと希少である。
魔女や人間、人狼との混血が
殆どとなった魔界の住人の中で
純血のヴァンパイアはほぼ5%
登録上のヴァンパイア優性種族の
15%にも満たない。

純血のヴァンパイアは
逆に言えばお堅い古くからの
家柄が多く、基本自由に恋愛をして
別の種族との結婚をしようなどとは
許されない。
そんなものたちが残している
血なのであった。

幼いころから
恋愛など下らぬ
お前の結婚相手はもう決まっている
お前は時期が来れば
当人同士の事情などに関わらず
結婚して子を残すのだと
教え込まれて育ってきた。
シンは自分を好きになる女にも
冷たい態度で追い返していた。
初めはやさしさのつもりだったが
それは自分が恋愛というものを
深く知るのが怖かったのだと
今となれば理解できた。
そのうち、気持ちのない相手とばかり
浮き名を流すようになる。
そういった遊び相手しか
寄ってこなくなった。
それはそれでいい。
ただ、それはとてつもなく
退屈な生き方だった。

純血のヴァンパイアには
処女の血が何よりの御馳走だ。
パーティーには貧しい土地から
買われてきた幼い少女たちが
柔らかな首筋を露にした。
ある者は存分にその血を吸い
ある者はもっと金を積み
妾にして処女を貫いた。
くだらねえ。
シンはギリギリまで処女の血を
吸うのを我慢した。
市販の精製されたドリンク剤でも
体を維持することはできる。
ただ、年に何度かは処女の生き血を
吸わないと体がもたなかった。

「え?もう帰ってもいいの?」

他のヴァンパイアたちは
少女たちがフラフラになるまで
血を吸い尽くす。
シンは献血して貰ったくらいで
やめることにしていた。

「いいよ。早くお帰り。」

年端もいかぬ女の子だから
素直に助かった!くらいの顔をする。
シンはそんな顔が好きだ。

「うち、どっちだよ?送ってやる。」

「ほんとう?」

「ひとっ飛びだぜ?しっかり掴まってろ。」

はしゃぐ少女を抱き締めて空を飛ぶ。
体の細さと暖かさに癒された。

「シン!ありがとうね!」

別れ際、少女はシンの頬にキスしてくれた。

「また、来年にでも会おうな。」

「えー。それまで処女でいられるかしら。」

「じゃ、半年くらいでどう?」

「んふ。じゃあ、シンのために。
ヴァージンでいてあげるわ。」

甘酸っぱくて胸の踊る約束だ。
まあ、そんな約束をしてみたところで
彼女たちは家が金に困っていれば
あっという間に売られてしまうのだが。

彼女もそんなことは百も承知だった。

「ぜったいだからね。」

小さい手のひらでシンの頬を包むと
唇を唇に寄せ、ちょんと触れた。

「グッナイ。」

この日のためにあつらえられたであろう
膝丈のベビードールの裾を翻して
玄関の扉へ駆けていった。

許嫁と結婚した後は、こんな貧しい娘たちに
援助をしながら、かわりばんこにこんな
デートをするのもオツだなと思った。







「昔は俺も純情だった。」

シンは売春宿で女をひいひい言わせながら
少女との思い出を話して聞かせていた。

「こっ!…んあんっ!はあ…こんなこと
しながら…ふぅん…よくそんな話あああっ!」

面白いように感じて喘ぐ売女をシンは
楽しそうに犯す。

「ひあん!ひあああんっ!」

退屈だ。シンは心からため息をついていた。


売春宿を出て街を歩く。

処女の生き血を飲みたいな。
シンは遠くから買われてきた少女たちの
血を吸うのをやめた。
処女と目星をつけた娘を
街でナンパする。
捕まえた女が処女じゃないことも多いが
今のところ勝敗は五分五分。
処女なら、その場で少し吸わせてもらい
謝礼を払う。実は街中でやるとパクられる
行為なんだが、大抵の娘はバレないように
つき合ってくれる。
処女じゃなかったときには
正真正銘単なるナンパになるが
どんな女も満足して帰っていく。

八百屋の前を通りかかったとき
ふんわりといい香りがした。
これは八百屋の商品の匂いではなく
生き血の匂いだ。
美味い女の血の匂い。

「おまけしてくれんの?うわあ!」

買い物をしている若い女。
人間だ。幼い顔立ち。すんなりと
長く細く伸びた体。魔除けのベルトを
きっちりと巻いているが
その首筋が白く滑らかなのは
想像に難くない。

「あんがと!おじさん!」

ご機嫌で買い物かごを振りながら
去っていく後ろ姿に
シンは様々な思いを重ねる。
吸うか。
抱くか。
処女を貫けば情が移るが
これは体も血も美味そうだ。

「おい。人間の女。」

振り返る女は怪訝そうにシンを見上げた。

「お前、処女か?」

だいたいシンは純血のヴァンパイアだ。
牙は他の混血のヴァンパイアより大きく
耳も形が違う。人間でも一目で
ヴァンパイアだと分かるのだから
そんなやつに処女かと尋ねられれば
この後のことは誰でも想像がつく。

「ヤってます!血も特定の相手に
毎日のように吸われてます!」

女は街でキャッチセールスに
絡まれたときのように
キッパリと切って捨てるように
お断り口上を繰り出した。

へえ。他人の女か。
シンはこんな処女みたいな見てくれの
女が毎晩のように可愛がられ
血を吸われているなんて、と
そのギャップに興味をそそられた。

「なかなかいいじゃん。
ちょっと遊ぼうよ。今の彼氏より
絶対イイから。満足させてやる。」

シンは興奮してきた。
かっさらって街外れのモーテルに
連れ込もうと、畳んでいた翼を伸ばした。
ギシバシと大きな音を立てて
はためかせると、軽く風が起きた。

女は慌てた様子もなく
ポケットから小さなホイッスルを出して
息を吹いた。音は鳴らない。
だがシンにはわかったのだ。

「コウモリの呼び笛!」

すぐにパタパタと小さな翼の音がして
二匹のコウモリが飛んできた。

「ミヅキドウシタ?」
「マタマイゴカ?」

それは友達が飼っている
ペットのコウモリだった。

「シンちゃん。これは俺のだから。」

いつの間にか顔中を怒りのマークで
一杯にした亮が、美月をマントに包んで
抱き締めていた。美月はうっとりしている。

「亮の、あの彼女だったのか。」

痛がって中々血が吸えないと
雑談とも相談とも取れる話に上った
件の彼女本人と分かり、シンも笑った。

「分かったよ。血も吸わなければ
セックスにも誘わないから。」

何よりシンは、今にも血管が切れて
血が吹き出しそうな亮が
可笑しくて堪らなかったのだ。
恋って苦しくて切なくて甘いものだろうと
とりあえずの想像はつくんだが
端からみるとこんなに滑稽なものだなんて
面白いったらありゃしねえ。

「美月!触られてないか?!」

「んふ。もう亮はヤキモチ可愛すぎ。」

いつまでもイチャイチャしているふたり。
愛し合うってこんな風なんだな。
シンは何だか恥ずかしい。
こんなにみっともなく嫉妬に狂う男を
あんなに愛しそうに見つめる女。
恥ずかしい。羨ましく見ている自分が
すごく恥ずかしい。

「済まなかったな。
安心しろって、もう大丈夫だから。」

「いや、まあ分かってくれれば。」

亮はようやく落ち着いてきた。
本気でブレーキが効かなくなるようだ。

シンは美月にもウインクすると
翼を広げて空へ飛んだ。
しばらく売春宿にも行けないだろう。
あんなにつまらないところも他にない。
自分の許嫁にはまだ会ったことがないが
あんな風に恋することが出来るのだろうか。

亮のように嫉妬に狂うのは流石に
みっともないと思うのだが
それを嬉しそうに受け止めてくれる
彼女がいたら、それはそれでいいかなと
そんな想像をしながら口元がにやけた。

それでもそんな恋なんて気持ちで
自分の人生がまるごと方向転換するなんて
その時のシンには知るよしもなかった。





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