最近は広範囲でお話させてもらうようになりましたが、もともと在来作物のイベントはその作物の作られている近くで行うようにしていました。その在来作物を地域で守っていけたらという意図があったからです。イベントで焼津の在来作物を紹介するとき必ず「地域の宝」であるという言葉を使います。
在来作物の価値が見直されてきたのはここ数年の話です。焼津ではそれまで…というより今もそれらは「どこどこのなんとかさんがつくる農作物」でしかありません。古くから作られているということすら知られることなく、他の方の作る農作物の中でひっそりと売られている。だから、だれもその価値を知ることができない。それは作っているご本人も知らないのだけれど。
それがイベントにより在来の価値を知り、農家さんの今までの努力を知ることで、参加者たちは「えっ それって何とかさんが作っているあれ?」「あの道を曲がったあそこに?」と口々にしゃべりながら「地域の宝」の存在を知ることになります。その興奮する様子と言ったら。何しろ自分が住む何のとりえもない(みんながみんなそう思っているわけじゃないでしょうけど 笑)地域に宝があると知るのです。場が沸くってこういうことなんだなあと実感する瞬間を何度も体験してきました。
ところが、話す場所をその作物から離せば離すほどその反応は鈍くなる。私の話は単なる「知識」となるのです。
参加者の反応を見た時に在来の生息する近くに住む人、遠くに住む人どちらにとって価値が高いかは説明するまでもありません。在来作物とはそういうもんなんだと思います。
だから、在来作物を譲渡し広げる機会がもしあるとしたら、絶対にその地域に還元される形でなければならないと思っていました。
しかし、じゃあ実際にそれを誰かに譲渡したいと思っても中々その近くの方がたでマッチする方が見つからない。
90のおじいちゃんが作る瓜もまたそんな作物のひとつでした。
そろそろ作るのをやめたいという話を聞いたものの、引き継いでくれる方を見つけられなかった。
そんなときに手を差し伸べてくれたのが「チームほととぎす」の取り組みです。藤枝市場さんが作る「ほととぎす漬」の材料として焼津の在来の瓜を使ってみようと誘ってくれました。藤枝の農家さんにこの種を譲渡することで、焼津の在来作物のひとつが絶滅の危機を逃れたのです。この活動も既に4年を超えました。こちらとも長い付き合いとなりました。私、この「ほととぎす漬」が愛おしくって…
毎年何かしら新しい刺激を与えてくれるこの活動が楽しくてたまりません。
ですが、じゃあこの活動が私の課題を解決してくれたかと言えば、やはりそうではないと思っています。または解決に至る入口にはいるのか?
元の農家さんが瓜の栽培をやめて藤枝の農家さんに引き継いでもらいましたが、昨年やっと元の農家さんの地元で瓜を栽培してみたいと名乗りを上げてくれる農家さんが出てきました。しかし作ってみたら中々難しかったとのこと。これから作り続けてくれるかどうかは疑問に思うところがあります。つまり、未だ地域への還元ができていないということ。
農業の効率化が求められる時代。またこれからどんどん農家が減っていくことが否めない今、地域に還元なんて甘いことを言っていてはいけないんだと思います。先日のイベントの中でも、ただその作物を守りたいんであればバンバン種を広げてしまえばいいという意見も確かにあった。
ですが、地域の方達のあの沸き方を考えると、地元でその作物を作れば、その人たちは絶対コアなファンになるだろうと思うのです。
そしてやはりあの地域の方がたの嬉しそうな顔を思い出すにつけ、そう簡単にあきらめちゃいけないんじゃないかと思う。
栽培するエリアの問題ってすごく難しいし、種の伝搬を押しとどめることはできない。ましてやその作物を作る立場ではない私がどうして口を挟めようかとも思いますが、やはりあきらめることができないのです。
続く
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます