私の好きな寺 妙本寺

　鎌倉駅東口を出て、若宮大路に面した郵便局の角を曲がると本覚寺があります。裏手の仁王門を出て、夷堂橋を渡り、住宅地を真っ直ぐに歩くと、妙本寺の山門があります。そこから、しばらく進むと、もう山の中に来たような雰囲気になります。石段を登ると、立派な仁王門が聳え立っています。門を額縁にして、本堂が正面に構えています。参道の右手にある手水鉢で龍口から注ぐ水で手を清めます。本堂も立派ですが、本堂の前にある牡丹桜もたわわに重たげな花を開花させています。

　ついこの間まで、満開のソメイヨシノが華やかな祝祭空間を演出していました。枝垂れ桜と海棠も見事な花を咲かせていたのも、つい先日のことでした。花の美しさを愛でるにつけ、時の移ろい、時間の儚さを感じます。ファウストのように、「時よ止まれ、おまえはあまりにも美しい！」と口に出したくなります。言ってはいけない言葉を。遅かれ早かれ、私達はいつか死にます。間違いなく死ぬのです。そう思うと、この美しい一瞬が堪らなく愛おしいものに感じられるのです。