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湘南七里ガ浜(七里ヶ浜とも)から発信。自分の生活をダラダラと書きとめるブログ。食べ物、飲み物、犬の話題が多い。

古地図を使い机上の旅 【続編!】   どんどん旅してウェールズへ行き、想像があちこち飛び跳ね英国史へ

2010-03-04 01:13:20 | モノ・お金
古地図を使って机上の旅。前回のカビだらけのハートフォードシャーの古地図に続き、今回はウェールズの古地図。ドラゴンの紋章でお馴染みの国というか地域というか。前回の古地図は日本の鉄筋コンクリート壁の結露のせいで保存状態も悪くカビだらけになってしまったが、今回のは良好な状態を保っている(画像ではわかりにくいけれど)。同じ縮尺の2枚の地図(北ウェールズと南ウェールズ)を一つの額に収めていて、珍しい作りになっている。私がこれを購入したのは1996年のこと。額装費用も含め現地価格で1万円弱くらいで、かなり安い(現地では普通だ)。「高い」と思われますか? でも、くだらぬレストランの料理の出費、あるいは飲み屋で飲んだくれて使うお金のことを思えば、安いものでしょう?



1836年あたりの作成と推測される。かなり信頼出来る老舗で買ったので、彼らが調べられる限りでウソはないはずだ。この類のモノに馴染みのない方のために説明すると、年号の前の「C」とは「circa」。「約・・・年頃」の意味である。



北ウェールズの果て。グググッと寄ってみよう。



もっと寄る。CAERNARVON。現在の地図ではCAERNARFONと綴られることも多いが、どちらも有効だろう。カタカナなら「カナーフォン」か。ウェールズでは最大の都市であるカーディフの次くらいに有名な街である。なぜならここには、英国の皇太子がその地位を叙せられる城、カナーフォン城があるからだ。現皇太子を含めイングランドのプリンス達皆が「プリンス・オブ・ウェールズ」と呼ばれて来たのも、気の遠くなるほどの長い歴史的理由があってのことである(詳細は各自調べてもらいたい)。



カナーフォンの街にはウェールズのドラゴンの旗が翻り、正面には城が見える。ウェールズはどこか枯れている感じもあるが、人々は楽しく陽気だ。



日本でも有名なトワイニングズの茶葉には有名な黒缶がある。名前は「プリンス・オブ・ウェールズ」。キーマン(キームンとも)主体で、中国茶のブレンドを指す名前である。「チャールズ現皇太子がそれを好きであることにちなんで名付けられた」という説明を見かけるが、それは間違いだ。中国茶好きなエドワード7世だったか8世だったか、とにかくチャーリーよりはもっと前の中国茶ブレンド好きな王族にちなむ話というのが正解なようである。

私も好きだ。ストレートで飲むならダージリン、あるいはこうした中国茶が好きである。



ウェールズ語はケルトの言葉だ。英語とはまったく異なる言葉である。ウェールズ人は、ローマ人やアングロ=サクソンやヴァイキングやノルマン人が来る前からブリテン島にいた民族、ブリトン人の末裔のひとつである。

私も4回ウェールズに行ったことがあるが、英語とはまったく異なる言語をたびたび耳にした。あまりに面白いので、ウェールズ語の辞書を手に入れた。



例えば「eira」は「雪(snow)」を意味する。カタカナで書けば「アイラ」と発音する。「スノウ」とはまったく異なる言葉だ。

この「eira」が、私が以前飼っていたゴールデン・リトリバーの名となった。日本に入って来ているゴールデン・リトリバーの多くはアメリカ産の個体を先祖とする犬で、色がかなり茶色っぽい。性格もやや興奮しやすい。英国産の先祖を持つ子は相対的に白っぽく、より温和なのである。我が家の子がそうで、白っぽさから「雪」を意味する名「アイラ」という名前をつけられたのだ。



雪の他にも、太陽、水、家、火、山などと言う太古からある概念を表すウェールズ語の単語は、英語とはまったく異なる音で存在する。他民族が侵入して来る遥か前から必要な言葉だったからだろう。しかし英語に近い言葉もある。比較的新しい概念を表現する言葉はそうなる。例えば「学校」を意味する単語は「ysgol」であるが、それは「school」に近い。



もう一つのウェールズ語の特徴は、綴りがやたら長いことだ。これは楽しい。綴りの長さで世界1、2位を競う地名がここウェールズにある。その街の名車ボルボのディーラーの看板にもそれが書かれてある。



寄ってみよう・・・。これがその地名だ。コレ全部が街の名前ですよ。長いでしょ? Llanfairpwllgwy・・・ なんだかわかりゃしない。



長さも面白いが、この地名と同様に、「Lla・・・」で始まる地名がウェールズにやたら多いことに注目したい。

すでにあなたもいくつか上の画像で見た地図をもう一度出してみよう。

先ほどのカナーフォンの周囲にある「Lla・・・」で始まる地名全部に、小さな赤マルをつけてみた。これはウェールズではものすごく頻繁に出て来る綴りなのだ。しかし発音はかなり難しい。「スラ・・・」と言うか「フラ・・・」と言うか。私はマスターしていないので、ウェールズ出身の友人がいれば、発声してもらい聞いてみて欲しい。



日本にも有名なウェールズ出身者がいる。あのC.W.ニコル氏がそうだ。彼が長野県の黒姫に所有するアファンの森に関心を持ったプリンス・オブ・ウェールズ(チャールズ皇太子)が、アファンの森を訪問するなんてこともあった。オーガニック農法等に関心も高く自ら農耕もするプリンスは、ニコル氏が森で育てたシイタケの香りを嗅いでずいぶん楽しんだとか。

そうなんですチャーリー! シイタケは日本の誇るキノコの王様なのです! あれほど味わい深いものはありません。特に干したモノは。私は昨日も食べました。焼きビーフンに入れて。



他にも日本中にウヨウヨいるウェールズ出身者はこれだ。ウェルシュ・コーギ(ペンブローク種)。他にもウェルシュ・コーギの種類はあるが、日本ではこのペンブローク種が圧倒的な人気で、エリザベス女王が飼う犬種としても有名である。このあたりも「プリンス・オブ・ウェールズ」のストーリーと同様、イングランドによるウェールズ懐柔のテクニックのひとつなのだろうか。

さぞかし英国ではこの犬が多いのだろうなぁ・・・と思いきやそうでもないことに驚く。これは私の勝手な想像だが、この犬種と現女王とのイメージ的つながりが強過ぎて、却って一般庶民に飼う気が起こりにくい面もあるのだろう。



ウェールズとイングランドの関係もそうだが、現在の英国の成り立ちはかなり複雑である。正式な歴史は西洋史の本でも読んでもらいたい。ここではついでにおかしな本を紹介しておく。W.C.SELLARとR.J.YEATMAN著の「1066 & ALL THAT」。英国の子供なら誰でも知っているユーモアたっぷりの古典だ。ただし子供用である。訳せば「1066とそんな感じのもの」くらいだろうか。

1066年とは英国史で最も重要な年号のひとつだが、覚えておられるだろうか。学校の世界史であなたも絶対習ったはずの年号である。英国のノルマン征服(Norman Conquest)。ノルマンとはノルマンディーのノルマンであり、現在のフランスの一部で、そこから来たノルマンディー公ウィリアムによる英国の征服を指す。実は、その1066年以来、英国王朝に新たにはアングロ=サクソンは入って来ない。然るに!英国とさらには米国をも加えて「アングロ=サクソンの国」と誰もが簡単に言うが、それは本当か?・・・精神的にはともかく、実はあまりそれは正確な表現ではない。



話をこの子供用の本に戻す。ヘンリー8世について書かれたページである。英国の国教会が出来た経緯はご存じの方も多いだろうから省くが、これがその該当ページ。王であるヘンリー8世が法王に「6人の妻を・・・」と言い、法王が「なんと! それはまたちょっとやり過ぎな」と答えるところ。



この本によれば、ヘンリー8世が最初の妻キャサリンと離婚したかったのは以下の4つの理由による:

(a) キャサリンがあまりに傲慢だったから
(事実キャサリンは傲慢だったことで有名だ。「Arrogant」の「A」が大文字であることに注意。これはもはや固有名詞である。Arrogantになっては危険なのだ。世の奥方は気を付けよう。ダンナもね)
(b) キャサリンと結婚したのはあまりに昔のことだから
(c) キャサリンは女の子(メアリー)を産んだに過ぎず、彼が欲しかったのは男の子だったから。
(d) キャサリンと離婚することを法王が認めることが「良いこと」であると思ったから

楽しいでしょ? この本は1930年に初版が出て以来、今も多くの部数が販売される古典コメディー的歴史本である。



最後に・・・上で少し触れたが、英国を「アングロ=サクソンの国」などと簡単に定義しては荒っぽ過ぎる。少なくとも民族遺伝子的にはそれは正しくない。今やDNA鑑定でイングランドの人々を調べれば、圧倒的にケルトの血が濃いことが簡単にわかる。ではそのケルトはどこからかというとガリアではなくアイルランド系であり、それをさらに遡るとなんとイベリア半島をルーツとすることもわかっている。アングロでもサクソンでもないのである。では話を切り替え「アングロ=サクソン」のアングル人とは何か?そしてザクセン人とは? さらに英語の歴史は? 英語のうち難しい単語はたいていフランス語系の単語だが、それはなぜ? これらはまた別の機会に。あまりに多様で書き切れない。日本の歴史よりも民族、言語、文化等の交錯の度合いがあまりに高く、整理するのは大変だ。各自どうぞお調べ下さい。今やインターネット時代だから。

古地図はいろいろ。ここで紹介したような外国の古地図を買うのも良い。しかし日本の古地図や、外国人が描いた日本の古地図(これがかなり面白い)も海外に存在する。日本の品々を海外に流出させてばかりいる場合ではない。たまには海外から日本へと買い込むのも良かろうと思う。
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2 コメント

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Unknown (のっぱらひろし)
2010-03-04 21:13:12
興味深い話しですね。
英国はいろいろと分かれていた国をくっつけた国家ということですかね。
私はラグビーをやっていたので、英国で何チームも代表チームがあるのが不思議でした。
イングランド、ウエールズ、スコットランドそして英国代表のブリティッシュライオンズ。
私が高校生の頃はウエールズが強くて、赤い悪魔と呼ばれてました。
そういえば花園に見に行ったなあ。
でもその試合、ウエールズかスコットランドか忘れました。

ウエールズ語というのは原住民の言葉なんですね。
それが残っているのはすごいです。
言葉だけ残って、国が分裂しなかったのはすごいことですね。
原住民への配慮や尊重があったからなのでしょうか。
なかなか出来ることではないですね。

アイラ翁の名前はウエールズ語の雪。
素敵です。
また英国ゴールデンの白さとかけておられたのですね。
アイラ翁もきっとその名前を気に入っていたでしょう。

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Unknown (おちゃ)
2010-03-04 21:32:07
ひろしさん

ラグビーだったら、チームが違いますよね。
スコットランドなんか、独自の紙幣を持って
ますもんね。独自の議会も。

言葉はかなり限定された利用だと思います。
でも地名の標識などは両語で併記されてたり
しますね。

未だにイングランドのプリンスの戴冠は
ウェールズでやりますし、配慮はあるで
しょうねえ。でも、ウェールズをドライブしてると
「忘れるな! 我らはウェールズ人だ」なんて
看板があったりします。

今も全体の名前は「連合王国」ですよね。
複雑な国です。

ウェールズ語の辞書貸しまっせ。
ララ、アユ、3頭目の名前にどうでっか?
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