「家」 @ 鎌倉七里ガ浜 + 時々八ヶ岳

湘南七里ガ浜(七里ヶ浜とも)から発信。自分の生活をダラダラと書きとめるブログ。食べ物、飲み物、犬の話題が多い。

悲しき LIBOR

2012-07-08 00:04:47 | あちこち見て歩く
LIBOR。London Interbank Offered Rate。
金融関係者なら誰でも知っている用語で、その世界では「ライボー」「ライボー」とあちこちで耳にするのだが、その内容を正確に理解している人は少なく、それが実際に日々どのように決定されているかを知る人などほとんどいないという、不思議なモノである。

さて、マスコミや議会から集中砲火を浴び、米国人でありながら英国を代表する銀行バークレイズのCEOだったダイアモンド氏は、本人が「愛した」銀行を去った。温厚なキャメロン首相ですら、ダイアモンド氏に対して手厳しかった。ダイアモンド氏に代表される金融界トップが、高給をもらっていたことも世間から反感を買っていて、災いした。



マスコミでは、バークレイズがいかにLIBORをマニピュレートしたかの議論が盛んだ。でもその詳細はまだよくわかっておらず、他行からも同様なスキャンダルが芋づる式に出て来るかもしれず、BOE(英国中央銀行)高官の関与まで可能性ありの状況で、報道はこんな具合である。



なぜかDOHAからの放送。しかしこれ、簡明に要領よく解説している。

華々しく、ダイアモンド氏がこの表紙を飾っていたのもついこの前のことだ。この表紙を見て以来、なぜかわからないが、私はこの人に興味を持った。



バークレイズは大変なことになってしまった。格付機関は同行をネガティブ・ウォッチ入りさせた。しかし正直なところ、どういうことをしたらLIBORを違法に操作したことになるのか、私にはよくわからない。というのは、LIBORとは銀行間の各通貨の短期の貸し借りに使われる、各行が勝手に決める金利の一種であり(それをBBA、つまり英国銀行協会が集計し、平均値を出す)、各行の水準は、その日の資金の需給と各行の取引事情で決まることだと思って来たからだ。もちろんある銀行が、特段の理由なくまったく異なる水準の「LIBOR」を取引ごとに提示したとしたら問題だとは思うけれど。



加えて、当り前のことだが、金利は日中どんどん動く。

私は1980年代後半、ある邦銀ロンドン支店で正にその仕事をしていたのだった。私は毎日その銀行のLIBORを決めることもしていた。欧州の銀行が欧州の通貨の貸し手となり、日本の銀行はその借り手であった。私は毎日ドイツマルクやスイスフランやスウェーデンクローネ(当時はまだやっかいな通貨、ユーロはない)やあれやこれやを、欧州の銀行から借りまくった。ドイツマルクに関して言うと、当時の私は最大の借り手だったかもしれない。

毎日市場は早朝から始まり、LIBORがフィックスされる11:00am(グリニッジ標準時)に向かって、金利はほぼ一貫して上げるのが通常だった。しかしLIBORが確定すると、取引は徐々に閑散となり、金利水準もフッと緩んだように低下する日が多かった。一日の取引をあとで振りかえると、LIBORよりはるかに低水準な金利での取引もあれば、逆もあるのである。ということはバークレイズが指弾されたように、何をもって「LIBORを操作した」とか「不正なLIBOR」と断じるのだろうか、その基準はかなりあいまいなのではないかと私は思うのである。



当時BBA(British Bankers Association)はオープンな雰囲気を醸し出していたが、こうした取引を行う我々銀行の面々は狭いクラブのメンバーようなもので、そのメンバー間でのみ有効な貸し借りについての大きな信用枠を相互に持っていた。長い年月の取引がモノを言う世界であり、いきなりそこに仲間入り出来るものでもなかった。当時日本のバブル景気を背負って大威張りで野村証券がロンドンに野村銀行を創設したが、欧米の銀行から信用枠が十分はもらえず資金が借りられなくて相当苦労していた。都銀や長信銀ですら、苦労しているところが多かった。

一方ロンドン市場で資金を調達し、それら資金に窮した日本勢に貸し付けることは、私の仕事の一部であった。当然ながら、それはかなり儲かった。



そんな時代からすると隔世の感がある。



BBA、LIBOR、BOE、Barclays。
それにしても、今回の問題の本質が私にはよくわからないなぁ。



ダイアモンド氏はバークレイズのCEOを辞めても、引く手あまたなようだ。世の中の基準や情勢はどんどん変わるし、だからこそ、21世紀には今回のようなことが問題になるのだろう。Time flies。しばらくすればまた別なところで、ダイアモンド氏の華やかな復活があるのだろうと思う。その日までさようなら。
コメント (2)
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