志賀泰次句集

花冠同人志賀泰次のブログ句集

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跋/高橋正子

2008-11-26 19:22:27 | Weblog
   風土性ゆたかに
                   高橋正子


春灯のひとつは我が家山くだる

山をくだりながら、麓に灯るあの春の灯の一つは我が家の灯であると思う。春灯のなつかしさや切なさなどを感じさせてくれる抒情のある句。

サィクリング親子一つの夏空に

広い夏の空。その夏空の下を、親と子とサイクリングを楽しんで、絵本に描かれたような世界がさわやか。

初雪はひんやり水の匂いして

初雪の降り方は寒い地方では、溶けることもなく降るのだろうが、地に触れる前に、はかなくも水となってしまった。「ひんやり」は、心地よいほどの感触。

雪明かり牛まっくろに立ち止る

雪明りに見える牛が、ただ牛とわかるというのではなく、まっくろな牛として、牛の色まで見えている。薄明かりに黒を見た作者の目が鋭い。風土性のゆたかな句。

雪ならむ外さわさわと風の音

風がさわさわと吹いて来る。この風こそは、雪を運んでくる風だ。雪国に住む作者は、体でそのことを知っている。どの程度の雪かもわかるのだろう。「さわさわ」という風音も、「雪ならむ」の推測も、感覚が澄んでいればこそ捉えられるものだ。

とがるもの皆真ん丸く雪積もり

雪が積もると、すべて丸くやわらかなものになる。とがるものさえも丸く包む雪のやさしさがよく表現されている。

瀬の音の水を離れし涼しさよ

「瀬の音」は、流れる水より聞こえるのであるが、流れる水とは別に「瀬の音」として捉えられている。ころころと転がるような瀬音の涼しさが、「水を離れる」ことにより、いっそう涼しげに聞こえる。

秋の日の傾ぎて影折る石階に

秋の日の傾き具合には詩情がある。石階に立つ作者の影が、石階の通りに折れ曲がっている。「影折る」の発見は、秋の日差しの発見でもある。

葱きざむ妻すこやかに暮の音

葱をきさむのは、日常の生活のことだが、健やかに暮を迎えたありがたさがしみじみと伝わってくる。葱を刻む音にも暮らしさを感じ取った句。

星の夜は星のいろして雪明かり

ロマンティックな句であるが、そこに生活者の掬われるような思いが読める。星が輝く夜は、雪明りも「星のいろ」と同じであると感じる詩心。

幾百の海鳥岬に五月来る

岬に幾百もの海鳥の姿を見ると、まさに五月が来た印象を持った。沖へ開かれる爽やかな心。

門灯を消す静けさに今朝の雪

門灯を消そうと外を見ると雪が積もっている。朝の静けさが雪をもってなお静かになった。

初雪の音なき風とわが息と

風の音もなく、初雪がはらはらと降る。わが身を離れる息も白い。初雪の降る日は寒くさびしい。

鰈干さる骨透く軒の秋夕日

鰈を軒の日当たりのよいところに干して、干し鰈をつくるのだが、乾いてくるに従って、骨が透けるようになる。夕日が差せば、懐かしいような光景となる。

水澄めり光も影も底に置き

澄んだ水底には、ひかりと影が、ちらちらとある。澄む水を端的にあらわしている。

病窓に見るわが街よ美しき秋

病院に暮らして、高階よりわが街を眺めると、秋日に照らされた街が、絵のように美しく思える。
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