志賀泰次句集

花冠同人志賀泰次のブログ句集

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2003年~2006年

2008-11-26 19:24:27 | Weblog

●2003年(9句)

孫と吹く夢膨らんでシャボン玉
草の上にシャツ無雑作な五月晴れ
朝露の乾くを待たず蕎麦を刈る
鰯雲の空の広さへ熱気球
湧き水を掬う手元に赤蜻蛉
佇めば赤とんぼうのわが視野に
冬の風棲むは岬かいつも吹く
風花の透明な空をほしいまま
雪原の果てまで浮かばし日が落ちぬ


●2004年(37句)

縁起よき茶柱を残し初仕事
寒の海歪みて四角の陽が昇る
制服にスラックスの娘ら寒に入る
膨らみて膨らみて散る浪の華
尖るもの皆真ん丸く雪積もり
外窓を大きくあけて鬼やらふ
流氷や絞る鴉声も虚ろなり
娘発ちて夕餉の灯り朧めく
竿足して空へ空へと初幟り
水芭蕉水ひたひたと寄せつけず

草青む土手しんがりの子が駆け抜け
果てるまで耕地黒ぐろ五月来る
天心の月も酔い来る花明り
裏口に籠濡れ水菜の土ながら
挿しおけば竿を頼りに瓜の苗
サイクリング親子に一つ夏の空
青紫蘇の今朝の分だけ採り来り
紫陽花の鞠まだあおき通学路
野の芒触れ合うこともなく茂り
学校の時鐘尾を曳き九月入る

奥入瀬やこの道ずっと蝉時雨
梶の葉の一と葉に平和を願いけり
仕舞おうとすれば鳴り出す瑠璃風鈴
明るさを満たして昇る盆の月
吹く硝子秋光丸く透かしけり
瑠璃玉にひろがる空や鰯雲 
風のまま色うらかれて藤ばかま
夕やけの海へと流れ鰯雲
台風過研がれて星は山の端に
黄落のそこだけが明るく月満ちて

鮭の皮こんがり焼いて茶漬け食う
枯蔓を曳けばひろがる茜空 
白み来る朝陽を待って鶴舞えり
亜浪碑にきょうの深雪の落日かな
観葉の葉裏さびしく聖樹輝る
搾乳の牛みな肥えて息白し
窓叩く雪水平に向かい来て


●2005年67句)

寒風や囲いの薯に芽の隠(こも)る
冠雪の朱の実揺らして小鳥散る
からまつの赤銅濃くして冬の陽に
雪ならむ外さわさわと風の音
底隠(こも)る鉄のひびきの凍む橋を
カンツオ―ネ幾つか聞いて冬銀河
裸木の虚心の影の平らかに
流氷の海浩々と宵の月
雪道を赤き靴の子まんなかに
流氷に果てなきごとく空澄めり

雪明かり牛まっくろに立ち止る
浮雲を大きく映し卒業す
春北風(ならい)翔ばぬ鴎は一列に
凍滝にかすかな水音風とおる
名水に両手潜らせ春陽汲む
春風のいちまいを脱ぐ身の軽さ
雪残る村牛舎より動き出す
仔の山羊に角生う兆し風ひかる
ものの芽のぞくぞくと立ち風青し
アスパラの尖りの満ちて土かおる

境目は棒切れひとつ種を蒔く
風光るクルスに空の深くあり
朝凪の満ちくるものの静けさに
水音をはなして澄めり岩清水
泉清ら石の重さの忘らるる
子が追いて夏蝶に風生まれけり
人のいぬ駅の風鈴海へ鳴る
字小字みな連れそって夕焼ける
涼風をわかちて花のいろどりぬ
青すすき風は岬から柔かし

刈りしあと緑あらたに雨あがる
水底に砂子の躍動泉湧く
万緑を一両鈍行軋みゆく
落ち蝉や我生かされて影を曳く
北の地の黄昏ながし蕎麦の花
秋の磯片爪の蟹はみ出でて
水澄みてもう一つの空雲流る
台風過褪せしひまわり陽を集め
水澄めり孕みし魚が朔る
待つという静けさがあり望の月

鳥ばかり舞い乱れいる海の秋
新藁の哺乳の子牛乳まみれ
秋光を投網ひろげて引き絞る
晩秋の牛半眼に昏れなずむ
えのころの丈の不揃い風通る
牧閉ざす牛の咆哮太く曳き
廃線の線路真っ直ぐに冬が来る
草の絮軽きものより風に乗り
大根の泥滲みてくる夕刊紙
枯木立白樺だけが真っ直ぐに

入れ替える牛舎の藁の冬ぬくし
雲天の零せし雪の野をつつむ
水桶の重さは知らず薄氷
風花の光りに重さなかりけり
冬ざれや棒なる案山子燃やさるる
石塔に新雪まるく明けにけり
極月の鮭は武骨に乾きけり
牡蠣を剥く生業の顔活きいきと
冬ざれの濃く単線に入りてより
雪霏々と蟹荷揚げするロシヤ船

冬の川狭きになりてより迅し
影を踏む音の軋めり冬銀河
一羽翔ぶあとに続きて沼涸れる
朝寒や牛の乳房のほのあかく
寒風に翔びゆくもののみな素足
ふるさとは遠くにありぬ冬落暉
年の瀬の大きな夕日孕み牛


●2006年(76句)

豆腐切る刃先の透けり寒の入
一灯を過ぎれば行方雪明り
雪捨ての己が影を越え嵩の影
空うみに海そらに溶け冬がすみ
雪降って降っては山が遠ざかる
切花の桶せりせりと薄氷
寒林の奥に伐る音こだまして
さりさりと氷押しつつ川落つる
境なき雪野の一樹目じるしに
澪にきて軽くなる水春近し

凍滝のそこから緩む風の道
また一つキュ-ポラの火消えて冬茜
ポプラ揺する二月の風の一途なる
風わたるとき流氷の軋みけり
春の水堰いくつ越え来りしや
夕刊のすとんと落ちて二月ゆく 
春浅き木の芽の尖りいとけなく
子らの声空押し上げて卒業す
春禽の音階たかく青空に
干網の間合きらきら海明ける

残雪の山間(あい)ぎっしり闇つまる
春灯のひとつは我が家山くだる
卒業子みな己が空を見上げゆく
厩だし仔馬蹴り上ぐ朝の陽に
春の海汽笛ほうほうと捕鯨船
尻押され動かぬ牛や斑雪
海のいろそのまま売らる初鰊
動くものなき山林に木の芽吹く
独り居の日向に楽し囀りに
鳥引きし沼の窪める静けさに

若草の野にありいよよ牛らしく
月光をとらえて辛夷高く咲く
花冷えや薄漁の網藻を落す
散るときを秘めて桜の今日を満つ
葉桜のいろ濃き陰に蕊降りぬ
牛の瞳に佇つ我ありて夏の牧
ゆるやかに牛の反芻夕焼ける
トンネルを出で新緑の膨れくる
ハマナスの海平らかや陽が昇る
はまなすに沖風和ぎぬ慰霊の日

まっさらな波が生れて青岬
子らの網風の高さに蜻蛉追う
風匂うじゃが薯の花の只中に
風鈴にそれぞれの音暮れなずむ
鈴ならし新涼の風海に向く
蛍火の子の掌に点るとき明かし
売られゆく牛の耳標や牧に秋
灯しても消してもひとり鉄風鈴
麦稈の匂えるかなた藍き海
赤とんぼ触れ合う音のなかりけり

とんぼうに穂の揺れ重心どこにある
秋草に濡るるも有縁と思いけり
御手洗の水に溢れし鰯雲
豊漁の舳先に立てば航さやか
一瞬の光芒みせて鮭のぼる
野辺送る風に白けく秋の草
ずっしりと南瓜に引力生れけり
ひとときの万朶の露の輝ける
触れるもの風のほかなく花芒
宵寒の予報に雪初む朝かも

どの軒も大根干しあり路地の風
今はただ落つるに徹す秋の滝
冬近し深耕の土くろぐろと
笹の葉を選びて漬けり鮭の寿し
日高路は駿馬ばかりの牧さやか
初雪はひんやり水の匂いして
初氷陽に煌めいて陽に消える
外つ国に吾子よ勤労感謝の日
年の瀬の予定はみだすキリトリ線
ななかまどの赤が引き寄す冬の空

冬鳥のパン屑にきて朝楽し
樹に冬芽枝から枝へ目白来し
鳶の輪の其処のみ冬空押しあげる
暮早き月ほのぼのと牛曳かる
ひたひたと草々に沁む秋気かな
息白し動くもの一つなく明ける
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