「私の押しの一句」 近藤ひとみ
炎天下踏切の棒下りてくる 髙橋信之
天ぷらがからりと五月の音たてる 〃
「私の押しの一句」と言えばこの二句にならざるを得ません。この二句は子規新報「特集 髙橋信之の俳句」より引いたものです。
俳句に出会って八年目になる私は、軟弱なんでしょうね。俳句に迷いが再三出ます。こんなに俳句が好きなのに、思っていることがピタッと表せない・・・・。気持ちに言葉の表現が追いつかないのです。もどかしいです。そんな時、先の句集を捲るのです。要所要所をマーカーしていないので、いつ、何度読んでも新鮮で、その都度、気づきを与えてくれます。
「炎天下」のゆっくり下りてくる棒の実景に、遮断されてゆく「今」に、過去や未来が、見る見る断たれてゆく様なリアル感にゾクッとします。「天ぷら」は、流れていく口語調が気持ち良く、五感に響きます。中八は気になりません。五月じゃなきゃ成り立たない句です。
それともう一句。
雪がふる山のかたちに雪がふる 髙橋信之
雪と縁のない海辺に住む私ですが、この句に原風景に似た安らぎを感じます。
こうして髙橋信之の句達に癒されてゆくのですが、難しいことなど何も言ってない。自由さに俳句の拡がりを感じるんだと思います。
俳句を詠むことで、色いろな自分に出会えた様に思えます。嬉しい事です。それにも増して俳句仲間に出会えた事が一番の宝です。これからも自由に詠んでいきたいと思っています。
(「雫」秋号 令和5年11月15日より 発行所:愛媛県西予市)