俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

6月16日(土)

2012-06-16 02:54:38 | Weblog
★水こぼす水車の音の菖蒲田へ  正子
水車がゆっくりと回り、受け板に少し残った水をこぼしている。その涼やかな響きが花菖蒲の田にも届いていきます。色と音と沼地の広がりが静かです。 (小西 宏)

○今日の俳句
手のひらに蛍あかるき少女かな/小西 宏
手のひらの蛍にほっと照らされた少女の顔が浮かぶ。少女と蛍をさらりとした抒情でうまく詠んでいる。(高橋正子)

○立葵

[立葵/横浜日吉本町]

★日の道や葵傾くさ月あめ 芭蕉
★鶏の塀にのぼりし葵哉 子規
★鴨の子を盥(たらい)に飼ふや銭葵 子規
★ひとり咲いて朝日に匂ふ葵哉 漱石
★鵜の宿の庭ひろびろと葵かな 虚子
★白葵大雨に咲きそめにけり 普羅
★花葵貧しくすみて青簾吊る 蛇笏
★立葵咲き上りたる櫺子かな 風生
★つき上げし日覆の下や鉢葵 みどり女
★蝶低し葵の花の低ければ 風生
★またけふも隣は留守や立葵 万太郎
★うらかなし葵が天へ咲きのぼる 鷹女
★葵とその周りの空間葵が占む 耕衣
★三方に蝶のわかれし立葵 汀女
★立葵夜を紅白に町に坂 汀女
★立葵憚るのみに人の門 汀女
★花葵仔犬の小屋をここに置く 立子
★花あふい子を負へる子はみな男 立子

★立葵空へ空へと咲きのぼる/高橋信之
★丘に咲き風吹く中の立葵/高橋信之

 立葵は、フリルのような花が女の子向きかもしれない。梅雨のころから咲き始め、真夏の青空は背に咲き上る。一番好きな立葵の景色は、ぽっかりと白い雲を浮かべた青空に立ち上って咲いているところだ。踏切が開くのを待っている間、いつこぼれた種から育ったのか、咲いているのを眺めることがある。かんかんかんかんとなる踏切の音と、やわらかな立葵の花は、昭和時代への郷愁を誘う。
 ゼニアオイというのがある。立葵に比べると、地味だが、眺めていると歴史をさかのぼっているような味わいがある。こう、言ってもよくわからないだろうが、京都の簾、江戸風鈴、枕草子など、取り留めもなく思いが湧いてくる。庭や畑の隅に、咲くのが当たり前のように、夏になると咲いた花だ。

 アオイ科(Malvaceae)は双子葉植物の科のひとつで、従来の分類では約75属、1500種からなる。美しい花をつけるものが多く、観賞用のハイビスカス、ムクゲ、フヨウ、タチアオイなどのほか、食用のオクラ、またワタやケナフなど繊維として利用されるものもある。草本または木本。花は両性花で、5枚の花弁と雄蕊が基部で合生し、雄蕊どうし合着して筒状になる。熱帯地方に多く、日本の本土に本来自生するものは数種(三浦半島以南の海岸に生えるハマボウのほか、南西諸島にさらに数種)で、そのほか帰化植物が数種ある。アオイ(葵)という名は、元はフユアオイなどを指し、「仰(あおぐ)日(ひ)」の意味で、葉に向日性があるためという。家紋に使われる葵(徳川家の「三つ葉葵」、下鴨神社の「双葉葵」など)は別科であるウマノスズクサ科のフタバアオイの葉をデザインしたものである。
 立葵(タチアオイ、学名:Althaea rosea、シノニム:Alcea rosea)は、アオイ科の多年草。以前、中国原産と考えられていたが、現在はビロードアオイ属(Althaea)のトルコ原産種と東ヨーロッパ原産種との雑種(Althaea setosa ×Althaea pallida)とする説が有力である。日本には、古くから薬用として渡来したといわれている。花がきれいなので、園芸用に様々な品種改良がなされた。草丈は1~3mで茎は直立する。 花期は、6~8月。花は一重や八重のもあり、色は赤、ピンク、白、紫、黄色など多彩である。花の直径は品種によるが大きなものでは10cmくらいである。本来は宿根性の多年草であるが、品種によっては一年草でもある。
 ゼニアオイは地中海沿岸原産の帰化植物。河川敷や線路脇の空き地、高架橋の下などの荒地に生育する強健な越年性の2年生草本。劣悪な環境にも生育ができるのは地中海気候にも適応した種であることも関係あろう。草丈は1.5mほどになり、株元から分かれて直立する。葉は円形から浅く5裂あるいは7裂する。花は6月から10月にかけて次々と咲き、直径3cmほど。花弁は淡紫紅色で濃色の筋がある。基本種のウスベニアオイは茎に開出毛がある点と葉が中~深裂する点が異なる。


◇生活する花たち「のかんぞう・おだまき・青ぶどう」(横浜日吉本町)

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6月15日(金)

2012-06-15 16:32:12 | Weblog
★朴の花栃の花見てゆたけしや  正子
栃の花も素敵ですが、朴の花の真っ白でしかも香りがよく高貴な花姿はしばらく眺め香りを楽しんでいますと、とても満ち足りた気分になります。全てに大ぶりながら豊かな気品に満ちている様子がとてもよく読み込まれていると思いいます。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
姫女苑風の高さに揃いけり/桑本栄太郎
「風の高さに揃いけり」に姫女苑のやさしさを見て秀逸。(高橋正子)

○萱草(カンゾウ)の花・忘草(わすれぐさ)

[野萱草/横浜日吉本町]

★萱草の花とばかりやわすれ草/来山
★切かけし椋のくさりやわすれ草/百萌
★生れ代るも物憂からましわすれ草/夏目漱石
★萱草の一輪咲きぬ草の中/夏目漱石
★萱草も咲いたばつてん別れかな/芥川龍之介
★安達太良の梅雨も仕舞や甘草花/前田普羅
★大岩に萱草咲きぬ園の口/富安風生
★甘草を折つて帰れる裏戸かな/山口青邨

 萱草の花は、百合の花に似ていて、「kanzo」という音は花の姿にふさわしくないと思う。中国から生薬として伝播したのこともあって、そのように呼ばれるのだろう。梅雨のころ、ちょっと田舎びたところを歩いていると、遠くにオレンジ色がかった黄色い花が草の中や、青葉の下陰に見つかる。山裾の藪のような草の茂みにもある。梅雨の雨の中、青葉の下で、強烈な印象である。だから、薬になるのかと思う。この花を見れば、いつも似た花のニッコウキスゲやユウスゲの花を思う。思考がそのようにシフトする。萱草の花はリアリストで、キスゲの花はロマンチストという印象だ。高原を渡る風に咲き競うニッコウキスゲは、下界をわすれさせてくれそうだし、夕方から咲くユウスゲも高原で出会えば、どんなに素敵な夢が見られるかと思う。似た花の八重の藪萱草は、自分の姿を見るようで、なんだか、落ち着いて見ておれないのが常だ。

★風よりも萱草の花かがやきぬ/高橋正子
★萱草の花に凋みしきのうの花/高橋正子

野萱草(ノカンゾウ)は、ユリ目ユリ科ワスレグサ属の多年草。夏、日本全国の野原の湿った場所で、花茎の先に橙色の一重の花を咲かせる。ワスレグサ(忘れ草)の変異体で、他のワスレグサ属の花と同様、一日花ですので朝咲いて夕方には萎びます。花の色には濃淡があり、赤みがかかっているものはベニカンゾウ(紅菅草)と呼ばれます。葉は細長く弓なりに曲がります。花や若葉、芽は食用となり、全草及び蕾を乾したものは金針菜という生薬になります。似た花に、八重咲きのヤブカンゾウ(藪萱草)、高原で黄花を咲かせるニッコウキスゲ(日光黄菅)、夕方から咲くユウスゲ(夕菅)などがあります。草丈は70~90cm、開花期は7~8月、花弁は6枚。歳時記での季語は、「萱草(カンゾウ)の花」、「忘草(わすれぐさ)」。


◇生活する花たち「百合・紫陽花・青梅」(横浜日吉本町)

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6月14日(木)

2012-06-14 10:46:00 | Weblog
★朝影のみどりの深き夏ポプラ  正子
ポプラがつくる朝影にいらっしゃるのでしょうか。晴れ渡った日のポプラは、より一層みどりが深く感じられ、夏本番を迎える季節の勢いが感じられます。 (高橋秀之)

○今日の俳句
植田水夕暮れの陽は真ん丸く/高橋秀之
植田に映る「夕暮れの陽」が、「真ん丸く」、おだやかで、まだ明るい夕暮れの情感をよく詠んでいる。「夕暮れの陽」、「真ん丸く」は、言葉より心が優先されていてよい。(高橋正子)

○辣韮(らっきょう)

[らっきょうの花/ネットより転載]

★辣韮も置きある納屋の這入口/高浜虚子
★九頭竜に辣韮洗ひの屑流れ/高浜年尾
★大安吉日らっきょうの飴色/長久保通繪
★辣韮の花咲く土や農土葬/飯田蛇笏
★佐久山やらっきょの花に蝶がつく/細見綾子

 らっきょうを今年も漬けた。特にらっきょうが好きというわけではないが、年中行事のように、漬けている。たいてい鳴門産の小粒のらっきょうを使う。このらっきょうは、他の産地より高めで、今年は1キロ1480円したが、粒が小さくて食べやすい。漬けて3年経ったものでも、カリッとしている。漬けるのは毎年1キロで、カレーライスと食べるか、思いついたときに食べる程度。震災後、災害用に食糧や水などをストックして置くことが勧められているが、らっきょうや梅干しなどは、食の守り神のようなものだ。
 らっきょうは、臭い匂いに似あわず、紫の花火のような小花を秋に咲かせる。なかなかかわいい。収穫は梅雨のころである。子どものころは、農家ではどこでもらっきょうを植えていた。梅雨のころ掘り起こして、らっきょう漬けとなる。掘り起こしたらっきょうは、一つひとつ根と葉を切り落として、汚い薄皮を丁寧にはがす。この作業は祖母と子どもの私の仕事であったが、指の先が固まったように黒く汚れるし、根気のいる仕事であった。母屋と納屋の間の風通しのよいところで作業をした。洗って漬けるのは、母の仕事であった。井戸水で洗えば、きらきらと真っ白になる。それを梅干し同様、甕に漬けて保存食となるわけだ。

ラッキョウ(辣韮、薤、辣韭、学名 Allium chinense syn. Allium bakeri)は、ユリ科(ネギ科とする場合もある)の多年草・野菜。別名は「オオニラ」、「サトニラ」。中国、ヒマラヤ地方が原産。白色または紫色を帯びた白色の鱗茎を食用とする。特有の強い匂いと辛味を持つ。この匂いはニンニクやニラと同じアリル硫化物である。主に塩漬け、甘酢漬け、醤油漬けで食べる。カレーライスのつけあわせ(薬味)として、福神漬とならんでポピュラーな存在である。また薬効も多いとされている。大乗仏教において摂食が避けられることのある五葷のひとつである。


◇生活する花たち「あじさい①・あじさい②・白シラン」(北鎌倉・東慶寺)
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6月13日(水)

2012-06-13 23:43:16 | Weblog
★額あじさい雪崩れてついに水に触る   正子
川辺に咲いている額あじさいが、その重みで崩れるように撓み、ついに水面に触れました。川面に覆いかぶさるように咲いている額あじさいの光景を想像いたしました。(藤田裕子)

○今日の俳句
夏つばめ舞う朝うれしき時もてり/藤田裕子
「うれしき」という感動を率直にそのまま述べた。初夏であり、朝である。「うれしき時」である。感動には、言葉の技巧の必要がない。それがいいのだ。(高橋信之)

○本を読む
広井良典著「コミュニティを問いなおす」――つながり・都市・日本社会の未来 (ちくま新書 2009年8月10日第1刷発行)を読む。

[内容]
戦後の日本社会で人々は、会社や家族という「共同体」を築き、生活の基盤としてきた。だが、そうした「関係性」のあり方を可能にした経済成長の時代が終わるとともに、個人の社会的孤立は深刻化している。「個人」がしっかりと独立しつつ、いかにして新たなコミュニティを創造するか―この問いの探究こそが、わが国の未来そして地球社会の今後を展望するうえでの中心的課題となろう。本書は、都市、グローバル化、社会保障、地域再生、ケア、科学、公共政策などの多様な観点から、新たな「つながり」の形を掘り下げる大胆な試みである。

[目次]
コミュニティへの問い
第1部 視座
都市・城壁・市民―都市とコミュニティ
コミュニティの中心―空間とコミュニティ
ローカルからの出発―グローバル化とコミュニティ
第2部 社会システム
都市計画と福祉国家―土地/公共性とコミュニティ
ストックをめぐる社会保障―資本主義/社会主義とコミュニティ)
第3部 原理
ケアとしての科学―科学とコミュニティ
独我論を超えて
地球倫理の可能性―コミュニティと現代

[著者]
広井 良典(ヒロイ ヨシノリ)
1961年岡山市生まれ。東京大学・同大学院修士課程修了後、厚生省勤務を経て96年より千葉大学法経学部助教授、2003年より同教授。この間マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。社会保障や環境、医療、都市・地域に関する政策研究から、時間、ケア等をめぐる哲学的考察まで、幅広い活動を行なっている。『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書)で第9回大佛次郎論壇賞を受賞。その他の著書に『ケアを問いなおす』『死生観を問いなおす』『持続可能な福祉社会』(以上、ちくま新書)、『日本の社会保障』(エコノミスト賞受賞)『定常型社会』(以上、岩波新書)、『グローバル定常型社会』『生命の政治学』(以上、岩波書店)、『ケア学』(医学書院)など多数。


○青梅

[青梅/横浜緑区寺山町]

★青梅に眉あつめたる美人哉/与謝野蕪村
★青梅に手をかけて寝る蛙かな/小林一茶
★溝またぎ飛び越えもして梅落とす/高浜虚子
★青梅をかむ時牙を感じけり/松根東洋城
★青梅や空しき籠に雨の糸/夏目漱石
★青梅や小房ながら清浄に/大谷句佛
★青梅を洗ひ上げたり何の安堵/細見綾子
★明け烏実梅ごろごろ落ちていて/寺井谷子
★青梅を齧る子に道たづねけり/大串章
★青梅の青の充実日が冥し/岡本眸
★庭師去りしあと青梅のころころと/林翔
★青梅の育ち盛りの児のごとし/村越化石

店頭にも青梅が並ぶ季節になった。梅酒用の瓶と、氷砂糖と、ホワイトリカーと店頭に並べてあると、今年も梅酒を作りたくなる。毎年わが家では梅酒を作っている。多量に飲まないから、ひと瓶でいいのだが、一か月ほど前から去年のものを飲み始めた。青梅1キロに、ホワイトリカー一升(教わった時の習慣で一升と覚えている)、氷砂糖を800グラム入れている。甘いかなと思うが、普通氷砂糖は1キロなので、8割としている。私は風邪をひくと熱が下がるに従って咳が出始めなかなか止まらなくなる。最近、偶然なにかの本で読んで、梅酒は咳にも効くとあったので、寝る前薄めて飲んだら、たまたまなのか、咳き込むような咳が翌朝には止まった。本当に助かった。
 梅干しは紀州から取り寄せたものを毎年お中元、お歳暮と長らく頂いて過ごしていたので、作らなくなって、今は買うばかりである。私が作ったのはこれまでで一度だけ。生家では、梅干しを買うことなど考えられなかった。梅干し用に摘んだ梅が土間の籠に入れられて、昼夜いい香りを放って食べたいほどであったが、根拠は知らないが、これは、ひどい腹痛を起こすので食べてはいけないと言われていた。先日97歳で亡くなった母は結構大量に梅干しを甕につけていた。茶色い釉に、たらりと黒い釉を模様に垂らした例の甕である。だれがあれほどの梅干しを食べていたのかと今は思うのだが。梅雨が明けると、土用干しと言って梅干しを筵に広げて日に当てて、それから紫蘇と漬けこまれた。赤紫蘇ももちろん畑で育てていて、子どもは紫蘇の葉をむしる手伝いをした。赤紫蘇が出来るのを待って入れているような気もした。梅干し、味噌、たくあん作りは、年中行事のようでもあった。

★青梅の土間に昼夜を匂いけり/高橋正子
★青梅の瓶にしずまる夜の青さ/高橋正子
★青梅のなかの熟れたる梅匂う/高橋正子

 梅干し(うめぼし)とは、ウメの果実を塩漬けした後に日干しにしたもので、漬物の一種である。日本ではおにぎりや弁当に使われるなど身近な食品である。なお、塩漬けのみで日干しを行っていないものは梅漬けという。梅干しの製造には、6月頃に収穫する熟したウメを用いる(梅酒では熟していない青梅を用いる)。ウメを塩漬けにした後3日ほど日干しにする。これを「土用干し」という。この状態のものを「白干し」と呼び、これは保存性に優れており、塩分が20%前後となる。土用干しののち本漬けしたものが伝統的な梅干しである。なお、梅干しがシソで赤く着色されるようになったのは江戸時代になってからとされる。梅干しは健康食品としても知られる。
 酒(うめしゅ)は、一般的に6月頃に収穫される青梅を、蒸留酒(ホワイトリカー、焼酎が一般的)に漬け込むことで作られる混成酒(アルコール飲料)である。家庭でも作れることから、古来より民間で健康に良い酒として親しまれており、近年では食前酒としても飲まれている。日本では、果実酒である事から酒税法によって、日本酒やみりんなどのアルコール度数が20度未満の酒で作る事は違法であり禁止されている。


◇生活する花たち「梅花空木・昼咲月見草・キモノケイトウ」(横浜市緑区北八朔)
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6月12日(火)

2012-06-12 05:25:21 | Weblog
 東京幡ヶ谷
★下町の空に乾ける子の白シャツ  正子
夏の強烈な太陽のもと、あけっぴろげの下町の家々の様子が鮮明にわかる景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
水替えて目高の水になじまざる/小口泰與 
替えたばかりの澄んだ水に、目高が落ち着かない様子でぴちぴち動く。普段は、目を凝らさなければ姿が捉えにくい目高だが、それと対比すれば、水はより澄み、目高はより生き生きとしている。(高橋正子)

○花菖蒲

[花菖蒲/横浜・四季の森公園]

★何某の院のあととや花菖蒲/高浜虚子
★日の出前にぬれしや菖蒲花ゆたか/渡辺水巴
★菖蒲園かがむうしろも花昏れて/橋本多佳子
★風吹きゆかす花びら薄き花菖蒲/高橋信之
★菖蒲田の中へ木道まっすぐに/高橋信之

 こどもの頃、菖蒲と言えば、生家の裏の池の黄菖蒲しか知らなかった。端午の節供には父がどこからか菖蒲を刈ってきて、いつも花がないなあと思った記憶がある。花菖蒲と菖蒲湯に使う菖蒲は違うものということだ。花菖蒲をよく知るようになったのは、嵯峨御流のお花を習ってからである。葉の特徴、花の向き、葉の組み方など手にとって良く見た。生花として活けるときは、水から出たばかりの葉もそれらしく、葉もきれいに組みなおして、花も尖った方を前にして活けるなどした。昭和40年代から50年代にかけて、松山近郊に菖蒲園があちこちできた。道後温泉から奥道後へゆく途中の山手に広い菖蒲園が開園となって見に出かけたことがある。もとは田圃であったのであろう。満目の菖蒲の花が風に翻るさまは、静かながらも華やかな世界である。足元を気にしながら、たいていは傘をさして、菖蒲園を巡る。近くでは、横浜の四季の森公園にも小規模ながら菖蒲園がある。菖蒲園というより菖蒲田という感じだ。山の水を引き込んである。ほとりの小川には蛍が飛び交うということだ。昨日6月11日、信之先生が、写真を撮りに出かけたら、ちょうど花菖蒲が咲き始め、それもかなり咲いていた。我が家のあたりは曇りであったし、天気予報も穏やかな曇りとあるので、傘を持たずに出かけたが、やはり山である四季の森公園は雨で、雨滴のついた花菖蒲の写真が出来上がった。色も紫、白、うすいピンク、それらの絞りなど、多彩。梅雨を迎えて花菖蒲、紫陽花と花が溢れている日本である。
 
★菖蒲田に山から水を引き入れし/高橋正子

花菖蒲(ハナショウブ、Iris ensata var. ensata)はアヤメ科アヤメ属の多年草である。 ハナショウブはノハナショウブ(学名I. ensata var. spontanea)の園芸種である。6月ごろに花を咲かせる。花の色は、白、ピンク、紫、青、黄など多数あり、絞りや覆輪などとの組み合わせを含めると5,000種類あるといわれている。大別すると、江戸系、伊勢系、肥後系の3系統に分類でき、古典園芸植物でもあるが、昨今の改良で系統色が薄まっている。他にも原種の特徴を強く残す山形県長井市で伝えられてきた長井古種や、海外、特にアメリカでも育種が進んでいる外国系がある。近年の考察では、おそらく東北地方でノハナショウブの色変わり種が選抜され、戦国時代か江戸時代はじめまでに栽培品種化したものとされている。これが江戸に持ち込まれ、後の三系統につながった。長井古種は、江戸に持ち込まれる以前の原形を留めたものと考えられている。一般的にショウブというと、ハナショウブを指すことが多い。しかし、菖蒲湯に使われるショウブは、ショウブ科またはサトイモ科に分類される別種の植物である。(フリー百科事典「ウィキペディア」より)


◇生活する花たち「紫陽花・立葵・百日草」(横浜・四季の森公園)

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6月11日(月)

2012-06-11 05:57:40 | Weblog
★バスの後ろ揺らし入りゆく青山河  正子
青山河とは、何と大きく艶やかに響くことばでしょう。そこへ、ちょうど頭を突っ込んだばかりのバスを捉え、その後ろ姿を詠まれた御句。「揺らし入りゆく」から、バスの、そして乗車する人々の、わくわくするような、武者震いするようなときめきを感じます。(川名ますみ)

○今日の俳句
賜りし銀の栞を短夜に/川名ますみ
瀟洒なデザインの銀の栞であろう、贈られた。本に挟んだ銀の栞をいとおしく思うのは、夜も深くならない、明け易い季節だからであろう。銀の栞にも短夜にも儚さがある。(高橋正子)

○夏薊(なつあざみ)

[夏薊/東京・椿山荘]

★ほこりだつ野路の雨あし夏薊/飯田蛇笏
★夏薊赭き湯道に噴き出せり/水原秋桜子
★野の雨は音なく至る夏薊 稲畑汀子
★夏薊体当たりして虻止まる/工藤博司
★真直ぐに立ち群生の夏薊/鈴木石花
★あをあをと上潮迫る夏薊/中田ゑみこ
★夏薊咲きし高さを昼の蝶/池内淳子
★牛の背の海真青なり夏薊/手島靖一
★断崖の引き寄す怒濤夏薊/大見川久代
★さかんなる雲の白さよ夏薊/糸井芳子

薊(あざみ)は、キク科アザミ属 (Cirsium) 及びそれに類する植物の総称。標準和名を単にアザミとする種はない。スコットランドの国花。葉は深い切れ込みがあるものが多い。また葉や総苞にトゲが多く、さわるととても痛いものが多い。頭状花序は管状花のみで作られていて、多くのキクのように周囲に花びら状の舌状花がならばない。花からは雄蘂や雌蘂が棒状に突き出し、これも針山のような景色となる。花色は赤紫色や紫色をしている。種子には長い冠毛がある。若いときには根出葉があり、次第に背が高くなり、茎葉を持つが、最後まで根出葉の残る種もある。草原や乾燥地、海岸などに出るが、森林内にはあまり出現しない。別名刺草。名前の由来は、アザム〈傷つける、驚きあきれる意〉がもとで、花を折ろうとするととげに刺されて驚くからという説がある。世界に250種以上があり、北半球に広く分布する。地方変異が非常に多く、日本では100種以上あるとされるが、現在も新種が見つかることがある。さらに種間の雑種もあるので、分類が難しい場合もある。

 俳句で単に「薊」といえば、春に咲く薊はまれであるにもかかわらず、春の季語である。薊は種類が非常に多く、夏秋の候に多く開花する。春に咲くのは「きつねあざみ」「のあざみ」ぐらいであり、夏薊は夏に咲く薊という意味と歳時記に解説がある。夏の朝、とくに高原などで出会う薊は涼しくてその色と形が可憐である。折り取ろうにも棘が痛くて躊躇する。だからそっと見て楽しむことが多い。子どもころ薊の丸い花を模様にした服を妹と揃いで着せられたことがあって、薊の花の印象が強く残っている。砥部焼の水差しを花瓶として使っているが、これに薊が一本絵付けされている。この絵付けを見れば、砥部の野山を思い出す。野にあってこその薊であろう。
   四国カルスト・回想
 ★乳牛の目覚めて鳴けり夏薊/高橋正子

◇生活する花たち「コスモス・花菖蒲・栗の花」(横浜・四季の森公園)
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6月10日(日)

2012-06-10 04:40:19 | Weblog
★明け易し山の水栓使いしあと  正子
夏の山荘に滞在されたのでしょうか。早い山の夜明け、そのすがすがしい空気の中で山の清水を使われました。鳥の声が聞こえ、気持ちが晴れ晴れとします。冷涼な山の夜明けの空気が伝わってきます。 (多田有花)

○今日の俳句
郭公や頂上まではあとわずか/多田有花‏
登ってきて、あとわずかとなったところで、郭公の声を聞いた。山の緑にこだまする郭公の声に励まされ、自然を満喫する作者の姿が涼しげだ。(高橋正子)

○捩花(ねじばな)・文字摺草

[捩花/日吉本町]

★ねじ花をゆかしと思へ峡燕/角川源義
★見えて来る距離見えぬ距離文字摺草/稲畑汀子
★文字摺草ありし辺りへ杖運ぶ/村越化石
★捩花に今年よき年数咲きて/宮津昭彦
★捩花のそよぎ送電塔真下/笹家栄子
★不器用な青春なりし捩り花/岩岡中正
★白く咲くコップの中の捩り花/新妻奎子
★捩花の影は一筋素直なる 藤岡紫水
★捩り花きちんと捩れ自決の地/山田正子

捩花(ネジバナ)は、ラン科ネジバナ属の小型の多年草。別名がモジズリソウ(綟摺草)。湿っていて日当たりの良い、背の低い草地に良く生育する。花色は通常桃色で、小さな花を多数細長い花茎に密着させるようにつけるが、その花が花茎の周りに螺旋状に並んで咲く「ねじれた花序」が和名の由来である。「ネジレバナ」、「ネジリバナ」、「ねじり草(そう)」とも呼ばれる事もある。学名のSpiranthes(スピランセス)は、ギリシャ語の 「speira(螺旋(らせん))+ anthos(花)」に由来する。花茎から伸びる子房は緑色で、茎に沿って上に伸び、その先端につく花は真横に向かって咲く。花茎の高さは10-40 cm。 花は小さく、5弁がピンク、唇弁が白。花のつく位置が茎の周りに螺旋状であるため、花茎の周りにピンクの花が螺旋階段のように並ぶことになる。この螺旋は右巻きと左巻きの両方が見られる。白花や緑色の個体もしばしば見られる。コハナバチのような小形のハナバチなどが花粉塊を運んで他花受粉が起こると考えられるが、長期にわたって花粉塊が運び去られないと、これが崩壊して柱頭に降りかかり、自家受粉を成立させることが知られている。開花時期は4-9月。葉は柔らかく厚みがあり、根出状に数枚つける。冬期は楕円形だが生育期間中は細長く伸びる。根は極めて太短く、細めのサツマイモのような形で数本しかない。ごく稀に真っ白い花をつける個体(シロネジバナ)が見られ、園芸愛好家に特に好まれる。日本全土[7]、ヨーロッパ東部からシベリアにかけて、温帯・熱帯アジア全域、オセアニアなどに広く分布する。ラン科ではめずらしく、芝生や土手、都市公園等の人間の生活圏に近い所で普通に見ることができる。この為、ともすれば花の綺麗な雑草として扱われ、芝刈り機で刈り取られてしまう。他方、その花の可愛らしさから、昔から愛でられ、愛好家主催の展示即売会等で、山野草として販売される事もある。昭和の終わり頃、当時の野生ランブームの中で管状の葉や斑入りなどの変異個体を収集するのが流行したが、後述のように単独栽培や株分けによるクローン増殖が困難なこともあって、ごく一部を除いて保存されていない。

 もじずり草は、「湿っていて日当たりの良い、背の低い草地によく生育する」ということであるから、こういう土地は、生活圏の思わぬところにある。田圃が埋め立てられて住宅地とされる場合が多いが、そういった団地などのクローバーや芝生のなかにもじずり草がよく咲いている。愛媛の砥部に住んでいたときは、家の裏手の遊歩道に、ぽつぽつと咲いていた。日吉本町では、近くのUR機構の公団の広場に一面に咲いている。この一面に咲く花を踏まないよう写真を撮りながら歩いていると、団地の老婦人が、何があるのかと声をかけてくることがある。「もじずり草ですよ。ねじばなですよ。」というが、「何のことだか。」と言う表情を返してくる。多くの住人は気付いて居ないのかもしれないが、それこそ一面に咲いているのである。もちろん、かわいらしい。盆栽風に鉢植えにして身近に置けば、可愛いだろう。

★もじずりの抜き出し草もみな低し/高橋正子
★もじずりの螺旋しっかり空へ巻く/高橋正子

○昨日関東甲信越も入梅しました。今朝は日曜日で、ようやく夕べは安眠でき、二週間ぶりに風邪が抜けた感じです。近所の公団の広場にもじずり草を探しにでかけましたが、去年あれほどあった花が今年は一本も見つかりませんでした。去年は6月21日に写真を撮っていますけれど。
○梅酒とらっきょうをつけました。
★青梅と氷砂糖と瓶に透け/高橋正子

生活する花たち「沙羅・姫沙羅・紫陽花」(横浜日吉本町)

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6月9日(土)

2012-06-09 02:34:00 | Weblog
★蛍ぶくろ霧濃きときは詩を生むや  正子
蛍袋は下向きに咲き中はがらんどう。蛍をこの花に入れて遊んだと言う謂われが有る様ですね。濃い霧となれば尚の事、その先が見えない所に灯す蛍袋を想像すると益々メルヘンの世界に誘われます。霧の名の付く歌詞や詩も多く詠まれて居る様に詩を生む情景が揃い既に御句に詩情を感じました。(佃 康水)

○今日の俳句
車窓から月のたゆとう大植田/佃 康水
米どころを列車で走っている時であろう。折しも月がかかり、たゆたっている大植田を目の当たりにすることができた。月のかかる植田がのびやかに詠まれている。(高橋正子)

○智久さんの結婚披露宴
 祝辞と乾杯の発声
(高橋信之)
 智久さん、亜紀子さん、ご結婚おめでとうございます。ご両親をはじめご参加の皆さん、おめでとうございます。乾杯の前に新郎新婦のことなどを少しご紹介させていただきます。
 新郎の智久君は、私たちの俳句雑誌の同人でして、俳句をほとんど毎日、携帯で送っていただいています。年に一度の「インターネット俳句コンテスト」にもご投句頂き、一昨年の第十九回コンテストでは。金賞を受賞いたしました。それは、「かき氷分け合う海の眩しさに」という句です。この句は、「かき氷分け合う」と「海の眩しさに」との二つに分けることができ、前半は、「分け合う」という生活の中での行為に多くの選者の評価を得ました。後半は、「海」、そして「眩しさ」にある開放的で明るい自然を詠んで多くの選者の評価を得ました。選者の間では、かき氷を分け合う相手は誰か、と話題になりましたので、直接本人にお聞きしました。彼女がいること、亜紀子さんのことを話していただきました。智久君の俳句の良さは、よい生活からよい俳句が生まれたということで、お二人のよい関係からよい俳句が生まれました。それがとても明るいので、たいへん嬉しく思っています。
 それでは、乾杯を致します。ご準備はよろしゅうございますか。お二人の幸せとご両家のますますのご繁栄を願って、乾杯!

正子の報告
 智久さん、亜紀子さん、ご結婚おめでとうございます。
 安藤智久さんの結婚式の披露宴が静岡県の三島市であり、信之先生と私と出席いたしました。朝11時22分新横浜発の新幹線ひかりで三島まで乗車。会場の「みしまプラザホテル」には12時過ぎ到着しました。会場には伊豆や湯ヶ島の山葵組合、地元消防団やご友人、ご親戚の方々、また、ご新婦の方からも大勢ご来席で、みなさんで200名は越えておられたのでしょうか。盛大で心温まる結婚式でした。またお料理には立派な山葵におろし金が添えて出され、さすがと思いました。山葵の食べ方摺り方を隣に座られた中伊豆山葵組合副会長の荻原さんに教わりました。萩原さんのお父さんは俳人で自宅に句碑があり、その句を智久さんがいい句だといってくれたというエピソードも伺いました。ご自身も松山城を旅行したときに投句した句が入賞されて、記念品が送られてきたことなどを話されました。俳句の話をしてくださった方は他にも二人おられ、ご縁を思いした。山葵組合青年部のパワー溢れる活動を知ることができ、智久さんがそのリーダーとしてご活躍のことも知りました。信之先生は「乾杯の発声」と祝辞を述べました。会場入り口には俳句関係では、第十九回インターネット俳句コンテストの金賞の賞状、トロフィー、金メダルが飾ってありました。地元湯ヶ島でご活躍の智久さんご夫妻に前途明るいものを大いに感じて帰りました。
余談ですが、式の始まる前に二人が旅行された長崎の孔子廟で、「孝」「廉」「恥」のどれを自分たちの生活指針とするかというクイズがありました。俳句の精神から言えば、これしかないと「廉」と書いて投票しました。大正解でした。「清廉」の「廉」ですから。

★芍薬のうすいピンクが祝いの卓に/高橋信之
★婚へ向かう車窓梅雨入りの小雨降る/高橋信之
★婚へ走る列車の窓つと青葉/高橋正子
★梅雨に入る婚の灯のゆらぎけり/高橋正子

 3月14日智久さん、亜紀子さん来訪
★スイートピー活け婚約の君ら待つ/高橋信之
★春風吹くかもてなしのケーキの匂い/高橋信之
★花束のように手渡され花わさび/高橋正子

http://pirikara.blog.ocn.ne.jp/amagi/

○石楠花

[石楠花/横浜北八朔]

★石楠花に碁の音響く山深し/高浜虚子
★石楠花に手を触れしめず霧通ふ/臼田亞浪
★石楠花の山気澄まして暮れゆくか/臼田亞浪
★石楠花のまざまざと夢滅びぬる/臼田亞浪
★石楠花の紅ほのかなる微雨の中/飯田蛇笏
★石楠花に聚碧園の樟落葉/飯田蛇笏
★石楠花に三千院の筧水/飯田蛇笏
★石楠花に馬酔木の蜂のつく日かな/原 石鼎
★石楠の谷ありいまだ雪をしき/山口青邨
★石楠花や雲の巻舒を目のあたり/阿波野青畝
★石楠花を隠さう雲の急にして/阿波野青畝

 石楠花(シャクナゲ)は、ツツジ科ツツジ属 (Rhododendron) 無鱗片シャクナゲ亜属、無鱗片シャクナゲ節の総称である。主に低木だが、高木になるものもある。また、日本ではその多くのものがツツジと称される有鱗片シャクナゲ亜属のものを欧米では Rhododendron と呼んでいるので注意が必要である。ただし、有鱗片シャクナゲのなかでも、ビレア(マレーシアシャクナゲ)の仲間は、カワカミシャクナゲのように、日本でもシャクナゲと呼んでいる。Rhododendron としては主として北半球の亜寒帯から熱帯山地までのきわめて広い範囲に分布し、南限は赤道を越えて南半球のニューギニア・オーストラリアに達する。特にヒマラヤ周辺には非常に多くの種が分布する。いずれも派手で大きな花に特徴がある。花の色は白あるいは赤系統が多いが、黄色の場合もある。シャクナゲは常緑広葉樹にもかかわらず寒冷地にまで分布している。寒冷地に分布する種類のなかには、葉の裏側を中にした筒状にして越冬するハクサンシャクナゲなどがある。日本にも数多くの種類のシャクナゲが自生しているが、その多くは変種であり、種のレベルでは4種または6種に集約される。このほか、園芸用品種として数多くの外国産のシャクナゲが日本に導入されており、各地で植栽されている。
 「石楠花」と言ってすぐ思い浮かぶのが、我々「花冠」の師系である臼田亜浪が創刊した俳誌「石楠」だ。これによって、私は石楠花という花の存在を知った。日本にも世界にも石楠花と呼ばれる花は沢山あり、園芸種もあり平地にも育つにも関わらず、山の花と思ってしまう。山登りをして山気に澄んだ大ぶりで派手な花に出会ったらさぞうれしいだろうと思ったりもしていた。たまに、黄色い石楠花を見るが、淡いピンクの石楠花が石楠花らしい。「夏の思い出」という尾瀬を詠んだ歌があるが、その歌詩に「しゃくなげ色にたそがれる」という箇所がある。一昨年尾瀬で八月の終わりの日を楽しんだとき、夕方の空が「しゃくなげ色」だったのを思い出す。先日北八朔町を鶴見川沿いに歩いた時に遠くではあるが、赤系の石楠花を景観木のように沢山植えているのを見たが、ヨーロッパ的な、あるいは、アメリカ的な感じがした。

★石楠花に深山の風の吹き起こる/高橋正子

◇生活する花たち「紫陽花(墨田の花火)・百合・枇杷」(横浜日吉本町)
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6月8日(金)

2012-06-08 02:08:45 | Weblog
★祭笛山あじさいも街中に  正子
「山あじさい」というのは額紫陽花に似ているのでしょうか。私には判別できないのですが、想像を逞しくすれば野生種に近い紫陽花なのかなとも思っています。夏祭りは本来とても雅なものと聞きますが、そんな中に素朴な美しさをもつ山あじさいが、いっそうの色どりを添えて明るく目に映ります。 (小西 宏)

○今日の俳句
夏めいて棟上の風木の香り/小西 宏
夏めいて光があふれるようになる。ここちよい風が「棟上」の「木の香」を運んで、すがすがしく、さわやかな気持ちが広がる。(高橋正子)

○百合

[百合/横浜日吉本町]

★山百合を捧げて泳ぎ来る子あり/富安風生
★夜を徹す百合の香にあり書き継げり/岡本眸
★一月の百合を捧げて祈りけり/稲畑汀子
★いよよ咲く百合よ歓喜の蘂放ち/林翔
★百合といふ百合が鉄砲百合の島/宮津昭彦

 百合は、ユリ目ユリ科のうち主としてユリ属(学名:Lilium)の多年草の総称である。属名の Lilium はラテン語でユリの意。アジアを中心にヨーロッパ、北アメリカなどの亜熱帯から温帯、亜寒帯にかけて広く分布しており、原種は100種以上を数える。 山岳地帯を含む森林や草原に自生することが多いが、数種は湿地に自生する。L. arboricolaは唯一の着生植物である。 一般的に、石灰質でない弱酸性の土壌を好む。代表的な種に、ヤマユリ、オニユリ、カノコユリ、ササユリ、テッポウユリ、オトメユリなどがある。鱗茎(球根)を有する。茎を高く伸ばし、夏に漏斗状の花を咲かせる。欧米ではユリの品種改良の歴史は新しく、19世紀に日本や中国からヤマユリやカノコユリなどの原種が紹介されてからである。日本では、江戸時代初期からスカシユリが栽培されてきた。現在ではさまざまな色や形の品種が作り出され、世界中で愛されている。
 子どものころは、百合と言えば梅雨の走りのころから咲く白い鉄砲百合と夏休みに咲く赤い鬼百合の二つであった。今はカサブランカのような豪華な百合やさまざまな色のすかし百合の仲間がたくさんあるようである。昭和30年代だったと思う。父が前の畑に百合の花を売るために植えた。そのころは売る花は菊に限って農家が栽培していたようだが、父は鉄砲百合に挑戦して、うまく咲かせた。蕾のときに切り取られるが、白がかった緑色の蕾と鋏で切り取る音が目に耳に残っている。咲いてしまった花は学校に持っていった。鉄砲百合の花は生活の花となっていた。
 もう7,8年前になるだろうか。瀬戸内海が遠くみえる松山のマンションのベランダでカサブランカを育てた。その芽は、筍ほどで、百合の芽とは思えなかった。たしかにカサブランカの花であった。
 夏休みのころ咲く赤い百合は、すぐ前の伯父の家にあって、垂らした簾に似合っていた。冷房もない時代、それも涼しい景色だった。旅をすれば、切通しのがけなどに白い百合が咲いている。白百合は、清純さの代表ともなって、祈りの花としても欠かせない。 
  富士登山のとき・河口湖
★白百合のまばらに咲いて富士裾野/高橋正子

◇生活する花たち「百合・夏椿・青ぶどう」(横浜日吉本町)
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6月7日(木)

2012-06-07 02:32:16 | Weblog
★天草の乾いた軽さを腕が抱く  正子
正子先生が天草を煮出して作ってくださった風味豊かな心太、忘れられない美味しさです。腕に抱かれた天草の「乾いた軽さ」に、嵩のある天草のありようや天草の磯の香りまでが伝わります。これから作り出される心太を思い心楽しくなります。(藤田洋子)

○今日の俳句
雨雲の山を離れて合歓の花/藤田洋子
合歓の花を的確に捉えている。愛媛の久万高原などに出かけると、垂れていた雨雲が山を離れていって、合歓の花があきらかに浮かびあがってくるが、このようなところに合歓は自生する。(高橋正子)

○雛罌粟(ひなげし)・ポピー

[ひなげし/横浜日吉本町]

★我心或時軽し罌粟の花/高浜虚子
★咲きやんで雛罌粟雨に打たれ居り/前田普羅
★ひなげしの花びらを吹きかむりたる/高野素十
★ひなげしや妻ともつかで美しき/日野草城
★遅れ苗もうひなげしの花となる/阿波野青畝
★陽に倦みて雛罌粟いよよくれなゐに/木下夕爾
★ひなげしの揺れて風あることを知る/高橋信之

 雛芥子(ヒナゲシ、学名:Papaver rhoeas)は、ヨーロッパ原産のケシ科の一年草。グビジンソウ(虞美人草)、シャーレイポピー (Shirley poppy) とも呼ばれる。耐寒性の一年草で、草丈50cm~1m位になる。葉は根生葉で、羽状の切れ込みがあり無毛である。初夏に花茎を出し、上の方でよく分枝し、茎の先に直径5~10cmの赤・白・ピンクなどの4弁花を開く。現在タネとして売られているものには、八重咲きの品種が多い。ケシやオニゲシに比べるとずっと華奢で、薄い紙で作った造花のようにも見える。移植を嫌うので、9月下旬から10月中旬頃に、花壇に直まきする。覆土はタネが見え隠れする程度でよい。かなり細かいタネなので、重ならないように丁寧に蒔き、発芽してきたら間引いて、株間が30cmくらいになるようにする。
 
 「ひなげし」と言えば、ずいぶん昔から付き合ってきた。呼び方も自分でも「ひなげし」から「ポピー」に変わった。漱石にも『虞美人草』という小説があるが、この呼び方もいい。紙のように薄い花びらと、少し湾曲した茎と愛らしい花の形が絵になる。ひなげしを始めて育てたのは、愛媛の砥部に住んでいたとき。土地が100坪少しあったので、花は種から蒔いて、野菜は西瓜やトマトじゃが芋まで育てたころだ。二人の子供が小学生と幼稚園のときに花壇を作って、ポピーの種を蒔いた。土がよくなかったのか、苗はひ弱だったが、葉が育ち茎が伸び、いろんな色の花をつけた。八重より一重が好みだが、切り花にしてガラスの細口の花瓶に生けると絵のように様になる。ひなげしで思い出すのは、テレビで見た映画「ラストエンペラー」。なぜがひなげしの花と重なる。

★ラストエンペラーポピーの花は紙みたい/高橋正子

◇生活する花たち「姫沙羅・紫陽花・南天の花」(横浜日吉本町)

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6月6日(水)

2012-06-06 16:45:53 | Weblog
 鎌倉街道
★昼顔を眸に映し旅ひとり  正子
前書きにある鎌倉街道。ときに歴史に思いを馳せ、ひとり歩かれる道沿いには、うすいピンクの昼顔がやさしく咲きついでいます。見逃してしまいそうなほど淡い花ですが、しっかりと眸に映して前進です。「眸に映し」が昼顔との距離をいっそう近づけて新鮮です。 (小川和子)

○今日の俳句
青芒ひかり合いつつ野を充たす/小川和子
野一面の青芒を「ひかり合いつつ」「野を充たす」と、動きをもって、いきいきと詠んだ。積極的な視線がいい。(高橋正子)

○沙羅(しゃら)の花(夏椿)

[沙羅/横浜日吉本町]

★沙羅の花捨身の落花惜しみなし/石田波郷
★咲くよりも落花の多し夏椿/松崎鉄之介
★夏椿思へばそんなやうなひと/行方克巳
★亡き母のものに着替へん沙羅の花/斉藤志野

夏椿(ナツツバキ、学名:Stewartia pseudocamellia)は、ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。別名はシャラノキ(娑羅樹)。
仏教の聖樹、フタバガキ科の娑羅双樹(さらそうじゅ)に擬せられ、この名がついたといわれる。原産地は日本から朝鮮半島南部にかけてであり、日本では宮城県以西の本州、四国、九州に自生し、よく栽培もされる。樹高は10m程度になる。樹皮は帯紅色でツルツルしており「サルスベリ」の別名もある(石川県など)。葉は楕円形で、長さ10cm程度。ツバキのように肉厚の光沢のある葉ではなく、秋には落葉する。花期は6月~7月初旬である。花の大きさは直径5cm程度で、花びらは5枚で白く雄しべの花糸が黄色い。朝に開花し、夕方には落花する一日花である。ナツツバキより花の小さいヒメシャラ(Stewartia monadelpha)も山地に自生し、栽培もされる。 ナツツバキ属(Stewartia)は東アジアと北アメリカに8種ほど分布する。

 これが夏椿だと最初に意識して見たのは、愛媛県の砥部動物園へ通じる道に植樹されたものであった。砥部動物園は初代園長の奇抜なアイデアが盛り込まれて、動物たちにも楽しむ我々にものびのびとした動物園であった。小高い山を切り開いて県立総合運動公園に隣接して造られているので、自然の地形や樹木が残されたところが多く、一日をゆっくり楽しめた。自宅からは15分ぐらい歩いての距離だったので、子どもたちも小さいときからよく連れて行った。その道すがら、汗ばんだ顔で見上げると、夏椿が咲いて、その出会いが大変嬉しかった。このとき、連れて行った句美子が「すいとうがおもいなあせをかいちゃった」というので、私の俳句ノートに書き留めた記憶がある。緑濃い葉に、白い小ぶりの花は、つつましく、奥深い花に思えた。
 今住んでいる日吉本町では、姫しゃらや夏椿を庭に植えている家が多い。都会風な家にも緑の葉と小ぶりの白い花が良く似合っている。
 植物とは全く違う話だが、まだ夏椿の花を見たことがないとき、かぎ針編みの模様に「夏椿」というのがあって、自分に似合うと思ったのだろう、この模様で製図までしてベストを編んでしばらく着た。

★夏椿葉かげ葉かげの白い花/高橋正子

◇生活する花たち「芍薬・紫陽花・蛍袋」(横浜日吉本町)
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6月5日(火)

2012-06-05 05:54:02 | Weblog
★緑陰に水湧きこぼる音尽きず   正子
暑い盛りの緑陰は心も体も休まる場所である。ましてや湧き出る泉の音が終日続く緑陰なればなおさらである。涼しさを与えてくれる句である。 (古田敬二)

○今日の俳句
葉桜の下をにぎやかランドセル/古田敬二
素直な写生だが、力のある句だ。新学期の学童たちに葉桜のいい季節が似合う。(高橋信之)

○第13回(紫陽花)フェイスブック句会入賞発表
【金賞】
★一枚の光り湛えて田が植わる/藤田洋子
田が静かに植えられていく様子が目に見えるようだ。水を湛えた田は、そのまま光りを湛えた田となる。(高橋正子)

ご挨拶
6月の第13回フェイスブック句会は、紫陽花句会と名付けましたが、このところ毎月フェイスブック句会が持てるようになり、喜んでおります。今回は、花冠同人以外のフェイスブックの「お友達」の方にもたくさんご参加いただき、賑やかな句会となりました。ご参加の皆さまには、投句、選句、コメントといただき、ありがとうございました。小西宏さんからは、次のようなお礼をいただき、フェイスブック句会をこのように受け止めてくださっていることを、ありがたく思いました。
<今月もまたフェイスブック句会をご開催くださり、たいへんありがとうございました。投句の時間も選句の時間もたっぷりとご用意してくださり、心ゆくまで句会を楽しむことができました。新しい方々もたくさん参加され、ますます賑やかになってきたことも、先生方のお心のおかげと感謝しております。>
フェイスブック句会も軌道に乗ったと思います。皆さまのご努力のおかげで、「やればできる」ということが証明された今回の句会でした。明るい季節のみずみずしい俳句を沢山ありがとうございました。信之先生には、管理運営を、互選句の集計は藤田洋子さんにお願いいたしました。世話人の皆さま、お世話ありがとうございました。これで第13回フェイスブック句会を終わります。次回をお楽しみに。(主宰/高橋正子)

▼入賞作品:
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d

○枇杷

[枇杷/横浜日吉本町]

★高僧も爺でおはしぬ枇杷を食す 虚子
★青峡の中に一樹の枇杷の鈴 風生
★飼猿を熱愛す枇杷のあるじかな 蛇笏
★枇杷の実の上白みして熟れにけり 石鼎
★降り歇まぬ雨雲低し枇杷熟れる 久女
★枇杷を吸ふをとめまぶしき顔をする 多佳子
★枇杷買ひて夜の深さに枇杷匂ふ 汀女
★枇杷の種赤く吐き出す基地の階 不死男

 枇杷(ビワ、学名: Eriobotrya japonica)は、バラ科の常緑高木およびその果実。中国南西部原産。英語の「loquat」は広東語「蘆橘」(ロウクワッ)に由来する。日本には古代に持ち込まれたと考えられている。またインドなどにも広がり、ビワを用いた様々な療法が生まれた。中国系移民がハワイに持ち込んだ他、日本からイスラエルやブラジルに広まった。トルコ、レバノン、ギリシャ、イタリア南部、スペイン、フランス南部、アフリカ北部などでも栽培される。葉は互生し、葉柄は短い。葉の形は20cm前後の長楕円形で厚くて堅く、表面が葉脈ごとに波打つ。縁には波状の鋸歯がある。花期は11~2月、白い地味な花をつける。花弁は5枚。葯には毛が密に生えている。自家受粉が可能で、初夏に卵形をした黄橙色の実をつける。果実は花たくが肥厚した偽果で、全体が薄い産毛に覆われている。長崎県、千葉県、鹿児島県などの温暖な地域での栽培が多いものの若干の耐寒性を持ち、寒冷地でも冬期の最低気温-10℃程度であれば生育・結実可能である。露地成熟は5月~6月。

 枇杷の実で思い出すことはいろいろある。昔は田舎には、どの家にもというほどではなかったにしろあちこちに枇杷の木があった。雨がちな季節に灯をともすような明るさを添えていた。晩秋、枇杷の花が匂い、小さな青い実をいつの間にかつけて、この実が熟れるのを待っていた。枇杷が熟れると籠いっぱい葉ごともぎ取っていた。おやつのない時代、子どもは枇杷が大好きで沢山食べたがったが、大人から制裁がかかった。衛生のよくない時代、赤痢や疫痢を恐れてのことであった。サザエさんの漫画にもそんな話がある。枇杷を買ってきて、子どもに内緒で夜、大人だけこっそり食べる話。ところが寝ぼけた子どもが起きてきて、急いで食卓の下に枇杷を隠したものの、結んだ口から枇杷の種がポロリとこぼれ、露見するという話。
もうひとつ、童謡に「枇杷の実が熟れるよ、ねんねこ、ねんねこ、ねんねこよ」「枇杷の木がゆれるよ、ねんねこ、ねんねこ、ねんねこよ」という歌詞があった。灯ともすような枇杷の実の色は、幼子をやすらかな眠りに誘うような色だ。
今は、茂木枇杷など、立派で高価な枇杷が果物屋に宝物のように箱に詰められて並んでいる。

★枇杷の実の熟れいろ雨に滲みたり/高橋正子


◇生活する花たち「山ぼうし・昼咲月見草・枇杷」(横浜日吉本町)
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6月4日(月)

2012-06-04 07:16:50 | Weblog
★明易し畳に二つ旅かばん  正子
平易で一読直ちに愉しい雰囲気に包まれる御句です。早くから明るくなるこの時季、旅行の準備もととのっています。さあ連れ立って出発、心も弾む夏の朝です。(河野啓一)

○今日の俳句
万緑やわが人生はかく愉し/河野啓一
一読、肩の力が抜けて、とても愉快になる。万緑を吹く風、万緑の光、万緑の色などを愉しと思う心軽い心境をすでにもっておられるからできた句。(高橋正子)

○苧環(おだまき)

[ヤマオダマキ/横浜日吉本町]

★をだまきや乾きてしろき吉野紙/水原秋桜子
★をだまきやどの子も誰も子を負ひて/橋本多佳子

 苧環(おだまき)は、キンポウゲ科オダマキ属。ラテン名のアキレギアやアクイレギア(Aquilegia)ということもある。本属の植物の総称がオダマキ(苧環)である。苧環は元来は機織りの際に麻糸をまいたもののことで、花の形からの連想である。日本、アジア、ヨーロッパに約70種くらい自生し、日本のものは山野草として愛好される一方、外国産のものには品種改良が行われ、園芸植物として広く市場に出回っているものがある。日本にはヤマオダマキ、ミヤマオダマキの2種が山地から高山にかけて分布する。ミヤマオダマキはむしろ山野草として栽培される。花の外側の花弁のようなものは、じつは花弁ではなく萼である。花弁はその内側にあって、ややまとまって筒状になる。花弁の基部からは角状の距が伸び、萼の間から突き出る。根出葉は普通2回三出複葉で細かく分かれ、先端には丸っこい小葉がつく。茎が高く伸びるものでは、やや小型の茎葉が出る。全草が有毒。

砥部の我が家には、ミヤマオダマキが玄関脇に植えてあった。玄関は北側にあって、アプローチが長かったので、そのアプローチに沿っていろいろ植物を植え、そのゆきどまり、つまり玄関脇にミヤマオダマキと都忘れを植えていた。株の広がらないキンメイチクの根もとに植えたのだが、これが来客の目を楽しませた。おだまきは春の季語。

★苧環は児のいる家にはさびしすぎ/高橋正子
★おだまきの青を春の青とせし/高橋正子

◇生活する花たち「ひなげし・おだまき・木苺」(横浜日吉本町)
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6月3日(日)

2012-06-03 03:55:39 | Weblog
★夜空あり虚々実々の心太  正子
夜食の心太を夜空の見えるところで食べようとしているのでしょうか。つるりとすべる心太ですが、虚々実々というのが、心太をうまく食べようとしている様子を感じました。 (高橋秀之)

○今日の俳句
新緑のうねり触れ合う音軽き/高橋秀之
新緑を風が吹くとうねりができる。新緑と新緑が触れあうと葉の軽やかな音がする。軽やかな音がよい。(高橋正子)

○ブルーベリー

[ブルーベリー/横浜日吉本町自宅]

★ブルーベリー食べし瞳や雲の峰/けい
★ブルーベリー摘む指細し半夏生/けい

今朝ブルーベリーを初収穫。たったの三粒で、一人ひとつぶずつ。市販のものに比べ、すっぱくて、噛めば実が弾ける。このすっぱさが野生味があって、おいしい。ちょうど、すっぱい蜜柑がおいしいように。順次熟れ次第いただく。ただいまフェイスブック紫陽花句会中だが、ベランダに息抜きに出て実をもいだ。

★六月に入りたる朝摘むブルーベリー/高橋正子
★六月の葉末に熟るるブルーベリー/高橋正子
★ブルーベリー新樹の冷えにすっぱかり/高橋正子

○そら豆
★そら豆はまことに青き味したり/細見綾子
★蚕豆の出廻るころの川の照/岡本眸

信之先生が五月三十日、植田を見に北八朔まで出かけた。お土産は植田の写真と田植の写真。それに産直の蚕豆と実豌豆、絹さや豌豆、スナップ豌豆を買ってきた。空豆はすぐ茹でて、実豌豆は、豆ご飯に、スナップ豌豆は卵とて食べた。絹さやが残っているが、ハムといためることにしている。
風邪の熱で3日ほどは、ふらふらしたお蔭で新聞や本などを読めた。ずっと昔の料理の本をめくっていたら、「クリームソースの蚕豆グラタン」というのがあった。焦げたチーズとぽつぽつ覗く蚕豆の緑がきれいでおいしそうだ。また蚕豆を買いに行ってもらって、今度はグラタンにしようと思う。

◇生活する花たち「白あやめ・白しらん・紫蘭」(北鎌倉・東慶寺)
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6月2日(土)

2012-06-02 06:25:53 | Weblog
★石楠花のうすくれないも昼下がり  正子
夏に咲きだすシャクナゲの花。暑い最中、昼下がりに咲いていた淡いくれないの花もしつかり咲いているなと思っていられるのでしょう。(祝恵子)

○今日の俳句
噴水のしぶき花にも吾らにも/祝恵子
噴水のしぶきが辺りに散るほど吹き上がり、そばに花が咲き、吾らがいる。楽しげで、涼しげな光景に気持ちが和む。(高橋正子)

○第13回(紫陽花)フェイスブック句会開催
①投句:当季雑詠(夏の句)を計3句、紫陽花など
②投句期間:2012年6月2日(土)午前0時~午後12時(24時)
③互選期間:6月3日(日)午前6時~午後12時(24時)
④入賞発表:6月4日(月)午前0時
⑤伝言・お礼等の投稿は、6月4日(月)午前0時~6月5日(火)午後10時
▼句会場は、facebookページ「インターネット俳句センター」:
http://www.facebook.com/IntanettoPaiJusenta
▼フェイスブック句会掲示板:
清記、入賞発表、今日の秀句等、フェイスブック句会のための掲示板
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d

○蛍袋

[蛍袋/東京・椿山荘]

★山の雨蛍袋も少し濡れ/高田風人子
★蛍袋うつむくときは詩を生むや/高橋正子

 蛍袋(ホタルブクロ、Campanula punctata Lam.)は、キキョウ科の多年草。初夏に大きな釣り鐘状の花を咲かせる。開けたやや乾燥した草原や道ばたなどによく見られる草本で、全体に毛が生えている。根出葉は長い柄があり、葉身はハート形。匍匐枝を横に出して増殖する。初夏に花茎を延ばす。高さは、最大80cmくらいにまでなり、数個の釣り鐘型の花を穂状につける。花は柄があって、うつむいて咲く。山間部では人里にも出現する野生植物であるが、美しいので山野草として栽培されることも多い。花色には赤紫のものと白とがあり、関東では赤紫が、関西では白が多い。

◇生活する花たち「紫陽花」(北鎌倉・東慶寺)

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