俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

6月15日(金)

2012-06-15 16:32:12 | Weblog
★朴の花栃の花見てゆたけしや  正子
栃の花も素敵ですが、朴の花の真っ白でしかも香りがよく高貴な花姿はしばらく眺め香りを楽しんでいますと、とても満ち足りた気分になります。全てに大ぶりながら豊かな気品に満ちている様子がとてもよく読み込まれていると思いいます。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
姫女苑風の高さに揃いけり/桑本栄太郎
「風の高さに揃いけり」に姫女苑のやさしさを見て秀逸。(高橋正子)

○萱草(カンゾウ)の花・忘草(わすれぐさ)

[野萱草/横浜日吉本町]

★萱草の花とばかりやわすれ草/来山
★切かけし椋のくさりやわすれ草/百萌
★生れ代るも物憂からましわすれ草/夏目漱石
★萱草の一輪咲きぬ草の中/夏目漱石
★萱草も咲いたばつてん別れかな/芥川龍之介
★安達太良の梅雨も仕舞や甘草花/前田普羅
★大岩に萱草咲きぬ園の口/富安風生
★甘草を折つて帰れる裏戸かな/山口青邨

 萱草の花は、百合の花に似ていて、「kanzo」という音は花の姿にふさわしくないと思う。中国から生薬として伝播したのこともあって、そのように呼ばれるのだろう。梅雨のころ、ちょっと田舎びたところを歩いていると、遠くにオレンジ色がかった黄色い花が草の中や、青葉の下陰に見つかる。山裾の藪のような草の茂みにもある。梅雨の雨の中、青葉の下で、強烈な印象である。だから、薬になるのかと思う。この花を見れば、いつも似た花のニッコウキスゲやユウスゲの花を思う。思考がそのようにシフトする。萱草の花はリアリストで、キスゲの花はロマンチストという印象だ。高原を渡る風に咲き競うニッコウキスゲは、下界をわすれさせてくれそうだし、夕方から咲くユウスゲも高原で出会えば、どんなに素敵な夢が見られるかと思う。似た花の八重の藪萱草は、自分の姿を見るようで、なんだか、落ち着いて見ておれないのが常だ。

★風よりも萱草の花かがやきぬ/高橋正子
★萱草の花に凋みしきのうの花/高橋正子

野萱草(ノカンゾウ)は、ユリ目ユリ科ワスレグサ属の多年草。夏、日本全国の野原の湿った場所で、花茎の先に橙色の一重の花を咲かせる。ワスレグサ(忘れ草)の変異体で、他のワスレグサ属の花と同様、一日花ですので朝咲いて夕方には萎びます。花の色には濃淡があり、赤みがかかっているものはベニカンゾウ(紅菅草)と呼ばれます。葉は細長く弓なりに曲がります。花や若葉、芽は食用となり、全草及び蕾を乾したものは金針菜という生薬になります。似た花に、八重咲きのヤブカンゾウ(藪萱草)、高原で黄花を咲かせるニッコウキスゲ(日光黄菅)、夕方から咲くユウスゲ(夕菅)などがあります。草丈は70~90cm、開花期は7~8月、花弁は6枚。歳時記での季語は、「萱草(カンゾウ)の花」、「忘草(わすれぐさ)」。


◇生活する花たち「百合・紫陽花・青梅」(横浜日吉本町)

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1 コメント

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お礼と好きな句鑑賞 (桑本栄太郎)
2012-06-19 19:05:06
正子先生
★姫女苑風の高さに揃いけり・・・の句を今日の俳句にお選び頂き、過分なるコメントも頂戴しまして大変有難うございます。背の低い咲き始めのころはうす紫の色でしたが、季節の進みと共に背丈が伸び、白い花が一斉に風を受けていました。

(好きな句鑑賞)
★朴の花栃の花見てゆたけしや 正子
栃の花も素敵ですが、朴の花の真っ白でしかも香りがよく高貴な花姿はしばらく眺め香りを楽しんでいますと、とても満ち足りた気分になります。全てに大ぶりながら豊かな気品に満ちている様子がとてもよく読み込まれていると思いいます。
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