俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

6月11日(月)

2012-06-11 05:57:40 | Weblog
★バスの後ろ揺らし入りゆく青山河  正子
青山河とは、何と大きく艶やかに響くことばでしょう。そこへ、ちょうど頭を突っ込んだばかりのバスを捉え、その後ろ姿を詠まれた御句。「揺らし入りゆく」から、バスの、そして乗車する人々の、わくわくするような、武者震いするようなときめきを感じます。(川名ますみ)

○今日の俳句
賜りし銀の栞を短夜に/川名ますみ
瀟洒なデザインの銀の栞であろう、贈られた。本に挟んだ銀の栞をいとおしく思うのは、夜も深くならない、明け易い季節だからであろう。銀の栞にも短夜にも儚さがある。(高橋正子)

○夏薊(なつあざみ)

[夏薊/東京・椿山荘]

★ほこりだつ野路の雨あし夏薊/飯田蛇笏
★夏薊赭き湯道に噴き出せり/水原秋桜子
★野の雨は音なく至る夏薊 稲畑汀子
★夏薊体当たりして虻止まる/工藤博司
★真直ぐに立ち群生の夏薊/鈴木石花
★あをあをと上潮迫る夏薊/中田ゑみこ
★夏薊咲きし高さを昼の蝶/池内淳子
★牛の背の海真青なり夏薊/手島靖一
★断崖の引き寄す怒濤夏薊/大見川久代
★さかんなる雲の白さよ夏薊/糸井芳子

薊(あざみ)は、キク科アザミ属 (Cirsium) 及びそれに類する植物の総称。標準和名を単にアザミとする種はない。スコットランドの国花。葉は深い切れ込みがあるものが多い。また葉や総苞にトゲが多く、さわるととても痛いものが多い。頭状花序は管状花のみで作られていて、多くのキクのように周囲に花びら状の舌状花がならばない。花からは雄蘂や雌蘂が棒状に突き出し、これも針山のような景色となる。花色は赤紫色や紫色をしている。種子には長い冠毛がある。若いときには根出葉があり、次第に背が高くなり、茎葉を持つが、最後まで根出葉の残る種もある。草原や乾燥地、海岸などに出るが、森林内にはあまり出現しない。別名刺草。名前の由来は、アザム〈傷つける、驚きあきれる意〉がもとで、花を折ろうとするととげに刺されて驚くからという説がある。世界に250種以上があり、北半球に広く分布する。地方変異が非常に多く、日本では100種以上あるとされるが、現在も新種が見つかることがある。さらに種間の雑種もあるので、分類が難しい場合もある。

 俳句で単に「薊」といえば、春に咲く薊はまれであるにもかかわらず、春の季語である。薊は種類が非常に多く、夏秋の候に多く開花する。春に咲くのは「きつねあざみ」「のあざみ」ぐらいであり、夏薊は夏に咲く薊という意味と歳時記に解説がある。夏の朝、とくに高原などで出会う薊は涼しくてその色と形が可憐である。折り取ろうにも棘が痛くて躊躇する。だからそっと見て楽しむことが多い。子どもころ薊の丸い花を模様にした服を妹と揃いで着せられたことがあって、薊の花の印象が強く残っている。砥部焼の水差しを花瓶として使っているが、これに薊が一本絵付けされている。この絵付けを見れば、砥部の野山を思い出す。野にあってこその薊であろう。
   四国カルスト・回想
 ★乳牛の目覚めて鳴けり夏薊/高橋正子

◇生活する花たち「コスモス・花菖蒲・栗の花」(横浜・四季の森公園)
コメント (1)
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