梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

苦難を活かし

2008年03月09日 08時22分41秒 | Weblog
「月の商いが300万円の時、700万円の引っ掛かりが発生してしまいました」「親父の起こしたスクラップ業を鋼材販売業に転換させたものの、18歳の時から一人で始めた商売は、約10年間は苦労の連続で地獄を見ました」

慎重に言葉を選びながら、雄弁ではありませんがとても説得力ある話し方をされる社長の体験談に、我々二人は聞き入ってしまいました。

去年の暮業界団体の集まりで、互いに取引も無く面識も薄かった三名が意気投合し、その一社に二人(私ともう一人)が会社訪問する約束をしていました。その約束を先週果たしました。

何故二人が興味を持ったかと言いますと、その会社はおおよそ鋼板加工で出来ない加工はない、またあらゆる鋼種の加工を手掛けていると言うのです。

「引っ掛からない商売をしよう、名刺を配らない商売をしよう」と自分に誓ったそうです。なぜならば売り込みに行けば既存がやっている価格よりも安くやらない限り新規では入れない。一方お客様から引き合いが来た商談は、こちらのペースで条件が提示出来ると言うのです。

「鋼材を無理に売らない、お客様が現在困っているものを上手く引き出す、これが商売」と考えを変えたそうです。その結果他社が出来ない加工や無理な納期の仕事が徐々に舞い込み、人の真似をしない信念を貫き、必死の努力で取り込んで行ったそうです。

お客様の口コミも多く、現在では約400社が販売先としてあり、その業種はまちまちで景気の波もあまり無いとのこと。10台のトラックのルート配送網があり、社内の受注体制も手厚く、きめ細かなデリバリーと納期対応は他社の追随を許しません。

「あの辛かった10年が無ければ今日のわが社はないでしょう」「子供三人には小さい頃から商売の話をしてました」「娘が二年前から手伝ってくれて、長男は今商社で特殊鋼を扱っていますが会社は継いでくれそうです」社長の嬉しそうな笑顔が強く残りました。
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