会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

堀江被告実刑、判決理由の要旨

asahi.com:堀江被告実刑、判決理由の要旨〓-〓社会

ライブドア前社長に対する東京地裁判決の理由要旨です。気になる点についてコメントします。

「(ライブドア株売却に介在した)投資事業組合は脱法目的に結成されたもので、実質的にはライブドアファイナンスがライブドア株を売却した。」

「そのスキームは企業会計が十分整備されていない投資事業組合を悪用し脱法を企図したことは明らかだ。スキームの発覚を防ぐために、日付をさかのぼらせて組成した投資事業組合を介在させて複雑化するなど、粉飾の手口は巧妙だ。」

会計士的発想からすると、企業会計が十分整備されていないグレーゾーンであれば、あやしい会計処理・開示であっても、クロと決めつけることはできないのではないか、とも思われますが、裁判所の判断はもっと厳しいということになります。会計基準の解釈も文言にとらわれた形式的な解釈ではダメであり、取引の実態をみなければならないということで、監査人の責任はますます重くなります。

某メガバンクのように、子会社と逆さ合併をして、含み損を損益計算書を通さずこっそり消してしまうといった、会計基準が十分整備されていないことを悪用するような仕掛けは、法律的にも到底認められないと考えなければなりません。

監査関与先に金融機関から持ち込まれるあやしげな流動化スキームについても、悪用・脱法の企図がないか、監査人は十分検討する必要があります。

「LDMにおける架空売り上げの計上以外の点については、いずれも宮内が中心となって計画、実行したもので、検察官が主張するように被告が最高責任者として各犯行を主導したとまでは認められないことなど、被告のために斟酌(しんしゃく)すべき事情を最大限に考慮しても、実刑をもって臨まざるを得ない。」

会社の経営トップは、不正を自ら主導した場合だけでなく、部下が計画、実行した不正を見逃した場合でも、刑事上の責任を最大限負うということになります。しかし、白黒が簡単につくような問題であればいいのですが、会計基準違反かどうかといった専門的な判断にまで責任を負わせるのは酷な感じもします。まともな会社であれば、意図がはっきりしない、必要以上に複雑な取引には、会社として関わらないというのが、トラブルを避けるもっともよい方法だと思います。

「弁護人は検察官と宮内らとの間で、宮内らの別件を公訴提起しない代わりに検察官の主張に沿った供述をする旨の黙契が成立しているなどと主張する。確かに、宮内らがライブドア株を売却して得た金員の一部を個人的に費消したことが強く疑われる状況にはある。 」

個人的な費消というのは横領のことです。ここまでいわれたら、横領罪で調べないわけにはいかないでしょう(会社の現経営陣も告発せざるを得ません)。

投資ファンド悪用を認定 ライブドア判決
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