会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ゴーン前会長、報酬開示制度の導入阻止を指示か 特捜部(朝日より)

ゴーン前会長、報酬開示制度の導入阻止を指示か 特捜部(記事前半のみ)

日産ゴーン事件のゴーン被告が、役員報酬の個別開示制度導入を阻止するため、部下に金融庁への働きかけを指示していたという記事。

「地検は前会長が制度導入を機に高額報酬を隠すようになったとみて、公判で経緯を立証する方針だ。

08年のリーマン・ショックの後、高額報酬への規制が世界的に強化される中、金融庁は10年2月、1億円以上の報酬を得た役員の名前と金額を有報に個別開示するよう義務づける内閣府令の改正案を公表した。

特捜部の調べでは、ゴーン前会長の年間報酬は来日した99年度の約3億円から08年度は約26億円に増えていた。前会長は報酬額が公になることを懸念。前代表取締役グレッグ・ケリー被告(62)=同法違反罪で起訴=や渉外担当の川口均・常務執行役員(現・専務執行役員)に金融庁などへの働きかけを指示したという。」

金融庁などへの働きかけをすること自体は、法律違反でも何でもないはずですが...。(金融庁の役人にわいろでも払っていたのなら別ですが)

それに、日産だけが反対していたわけではなく、経済界はだいたいが反対していて、当時の大臣が強硬だったためしぶしぶ認めたという状況だったと記憶しています。

当時の大臣も最近のインタビューに答えて、反対が強かったことをうかがわせるような発言をしています。

ゴーン逮捕の“仕掛け人”は亀井静香元金融相だった「日産幹部は日本男児として恥を知れ」(AERA)(2018年12月)(特別背任容疑による再逮捕前)

「当時は経済界から「個々の企業の問題で政府が介入する必要はない」といった反発もあって、批判を受けた。それでも金融庁の部下に「やれ!」と言って実現させた。」

有罪にできるのか疑問視する発言や日産幹部への批判なども...

「──現時点では、「闇」と思えるほどの罪状は明らかになっていません。少なく記載した報酬は、会長退任後にコンサルタント契約などをして受け取ろうとしていて、会社の取締役会などで正式に決定したものではないと報じられています。

退任後の報酬を現役時代に約束していたからって、そんなの本当にもらえるかわからないよ。それで有罪にできるのかね。それにしても、私が作ったガイドラインでひっかける(逮捕する)とはね。これだけで終わってしまったら、私も後味が悪いな。」

「司法取引の最大の怖さは、えん罪を生むこと。あるいは、謀略によって他人をおとしいれることができる。殺人とは違って、経済犯罪は物証が少ない。経済犯罪での司法取引は、特に問題がある。」

今回の事件で最も悪いのは、日産の幹部だ。親分が逮捕されたのに、西川広人社長以下、幹部たちは平気な顔をしている。ましてや、親分を裏切って捜査機関に協力したなんて許せない。ゴーンさんの金の使い方が荒いなら、なぜ、逮捕される前に「親分、これはマズいです」とアドバイスしてあげなかったのか。企業統治がまったくなってない。

日産の幹部には法的な責任はないかもしれんが、経営陣として、こういった状況になるまで放置していた道義的責任はある。「日本男児として恥を知れ」と言いたい。」

検察による情報操作だと思われますが、それは別として、金融庁への反対工作の実態が、裁判で明らかになるのは、おもしろいとおもいます。

役員報酬個別開示導入の際のパブコメでも、反対意見がかなり寄せられています(賛成意見、開示のさらなる拡充を求める意見などもある)。反対意見が全部、日産のものというわけではないでしょう。

コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(PDFファイル)(「「企業内容等の開示に関する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について」(2010年3月)(金融庁)より)

ちなみに、この資料をみてみると、役員退職後の顧問報酬についての意見・回答がありました(コメント80番)。

(コメント)

「提出会社の取締役または監査役であった者が当該事業年度末までに退職した場合に、その後、提出会社の顧問(一般的な顧問、あるいは税務・法律顧問等)として顧問報酬を得ている場合には取締役又は監査役としての職務執行ではないと考えられるので、開示の対象には算入されないとの理解でよいか。 」

(金融庁回答)

「ご意見のとおり、提出会社の顧問としての対価として報酬を受領している部分については、基本的に提出会社の役員としての報酬等に該当しないと考えられます。 」

ゴーン氏の場合、隠していたとされる報酬は、退職後の顧問報酬として受け取るものだったと報じられています。そうだとすると、この金融庁回答に従った場合、開示不要ということになるのではないでしょうか。

ゴーン前会長が様々な工作指示 報酬隠し、検察主張判明(朝日)(記事冒頭のみ)

「日産前会長カルロス・ゴーン被告(65)をめぐる役員報酬の虚偽記載事件について、東京地検が公判で立証を予定する内容の全容が判明した。19年間にわたる実際の報酬は計約314億500万円に上るとし、「高額報酬」批判を避けるため、様々な工作を側近に指示したと主張する方針だ。無罪を主張する弁護側は証拠を精査して反論を組み立てる。」

300億円超(隠していたとされる(支払っていない)金額を含むものです)というのは、たしかに大きな金額ですが、ソフトバンクは、2年で辞めた副社長に300億円超を支払っています(ゴーン氏の場合と違って実際に支払っている)。

ソフトバンク、アローラ氏に退職金68億円 報酬総額2年弱で310億円超(DOL)
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