会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

もんじゅ実用化断念、廃棄物減量の研究拠点に(読売より)

もんじゅ実用化断念、廃棄物減量の研究拠点に

高速増殖炉もんじゅの実用化断念が決定したという記事。

「政府の革新的エネルギー・環境戦略で、高速増殖炉の実用化を断念し、「もんじゅ」(福井県敦賀市)の役割を「廃棄物の減容、有害度の低減などを目指した研究を行う」に切り替えることが決定された。」

もんじゅは日本原子力開発機構という独立行政法人が保有しているようです。高速増殖炉として使うことをあきらめて全く別の用途に転用するわけですから、これが一般企業であれば、減損の兆候となり、少なくとも減損処理の検討は行わなければならないところですが、独立行政法人の場合はどうなのでしょうか。

「独立行政法人会計基準」(PDFファイル)をみると、別冊として「固定資産の減損に係る独立行政法人会計基準」が含まれており、減損会計は独法にも適用されているようです。

この別冊では減損の兆候として以下のものが列挙されています。

(1) 固定資産が使用されている業務の実績が、中期計画の想定に照らし、著しく低下しているか、あるいは、低下する見込みであること。

(2) 固定資産が使用されている範囲又は方法について、当該資産の使用可能性を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みであること。

(3)固定資産が使用されている業務に関連して、業務運営の環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みであること。

(4)固定資産の市場価格が著しく下落したこと。

(5)独立行政法人自らが、固定資産の全部又は一部につき、使用しないという決定を行ったこと。

今回のケースにあてはめてみると、当初の計画に反して増殖炉として使われなかったという実績からするとまず(1)に該当し、転用ということであれば「固定資産が使用されている範囲又は方法」の変更ですので(2)にも該当し、廃棄物減量の研究のための容器としての価値しかなくなるのであれば、時価は著しく下落するでしょうから(4)にも該当するでしょう(簡単に入手できる「市場価格」はないかもしれませんが)。転用に伴い、使用しない部分が当然発生するでしょうから(5)にも該当し、再処理計画自体が先行き不透明ということになるので(3)の「業務運営の環境が著しく悪化」にも該当しそうです。したがって、少なくとも減損処理の検討は行わなければなりません。

減損損失の認識や測定に関する規定は、一般の減損会計基準とは、微妙に異なっているようですが、このケースで減損処理を行わないということは、常識的にはあり得ないように思われます。

この独法のサイトによれば、「もんじゅ」の事業費(支出額)は、建設費だけで5,860億円だそうです。財務情報のページで平成22年度の財務諸表をみると、有形固定資産全体でも6300億円程度なので、減損処理を行ったとしても驚くような金額にはならないのかもしれません。



(平成23年度の財務諸表はなぜかまだウェブサイト上で開示されていません。)
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