タカタが不良エアバッグ問題で、米司法省と和解し、和解金を10億ドル支払うことになったという記事。
「米司法省は13日(日本時間14日未明)、タカタのエアバッグ大規模リコール(回収・無償修理)問題に関連し、同社が和解金10億ドル(約1150億円)を支払うことで合意したと発表した。この問題に関連してタカタ元幹部3人を訴追した。」
「タカタ製エアバッグの異常破裂による死者は2016年10月までに米国内で11人に上る。タカタは取引先である自動車メーカーへの試験データの報告に不備があった責任を認めた。
10億ドルの内訳は、罰金約2500万ドルのほか、自動車メーカーに対する賠償が約8億5000万ドル、エアバッグ事故被害者らへの賠償が約1億2500万ドル。すでに米運輸省と最大2億ドルの民事制裁金支払いでも合意しており、刑事・民事両面で協議が決着する。」
会社のプレスリリース。財務面での影響については特にふれていないようです。
米国司法省との合意について(タカタ)(PDFファイル)
「本合意について裁判所から承認を得ることを条件に、弊社は、本合意に基づき、自動車メーカー様に対して提供した試験データ及びその報告の不備について通信詐欺一件の有罪を認め、2,500 万ドル(邦貨換算 2,875 百万円 1 ドル 115 円で算出 以下同じ)の罰金を支払います。これとは別にタカタ製インフレータの不具合によって被害に遭われ、まだ補償を受けていない方々のため、及び今後の被害の可能性に備え、1 億 2,500 万ドル(14,375 百万円)の補償基金を設立いたします。この他に、不備のあった試験データ及び報告を受けた自動車メーカー様又は相安定化硝酸アンモニウムを使用したタカタ製インフレータを購入した自動車メーカー様のために 8 億 5,000 万ドル(97,750 百万円)の補償基金の設立をすることにも合意しました。
この他、弊社は、コンプライアンス体制を強化すること、今後 3 年間、弊社が法令上及び倫理上の義務を遵守しているかを監視し、米国司法省に報告する独立監査人を受け入れることに合意しております。 」
和解金のうち罰金部分はわずかだったようです。
補償基金の部分は、将来自動車メイカーなどに賠償しなければならない金額からは差し引けるのでしょう。しかし、差し引けるといっても、自動車メーカーへの賠償分については、直近の決算では、見積り不能ということで十分な引き当てがなされていないようですから、やはりそのまま負債に計上しなければならないのでしょう。
四半期報告書(第2四半期)(タカタ)(PDFファイル)
↑
四半期レビュー報告書の強調事項でたっぷり書き込んでいます。第3四半期はどうなるのでしょう。
Takata Corporation Agrees to Plead Guilty and Pay $1 Billion in Criminal Penalties for Airbag Scheme(米司法省)
タカタは、利益と生産スケジュールを安全性より優先して、製品の安全性に関連する重要なテストのデータを、繰り返し、かつ、組織的に偽っていたといって、非難しています。
“For more than a decade, Takata repeatedly and systematically falsified critical test data related to the safety of its products, putting profits and production schedules ahead of safety,” said Fraud Section Chief Weissmann.
タカタ、再生の道険しく 巨額リコール費の分担協議難航(東京)
日経記事では、「試験データの報告に不備」で済ませていますが、実際は、意図的な不正だったようです。
「「XXするしかない」「XXしてください」。米司法省の文書によると、タカタの元幹部三人らは、検査データの不正操作を「XX」という隠語を使って表現していた。三人らが社内でやりとりしていたという電子メールには、たびたび「XX」の文字が記され、不正操作が常態化していた様子がうかがえる。
二〇〇四年二月、〇五年の二~四月には、三人のうち一人が不正操作したことを報告するメールに対して、「XX(不正操作)するしかなかった」と他の人が同調する場面などがあった。〇五年六月ごろには、一人が不正操作について「一緒に橋を渡るしかない」と他の二人に迫るケースもみられた。」
自動車メーカーとの費用分担については...
「一兆円規模に上る見通しとなっているリコール費用の分担を巡る議論もタカタと自動車メーカーで平行線のままだ。経営再建に向けた最大の課題だが、米司法省との和解後も協議が円滑に進むかは不透明だ。タカタの一六年九月末の連結純資産は千二百四十億円にとどまっている。自動車メーカーとの協議で安易に過失責任を受け入れれば、巨額のリコール費用がのしかかり、経営再建は遠のく。」
こちらは、なぜか会社寄りの記事。
タカタ再建険しく 元幹部起訴、財務への打撃は限定的(日経)
「「前例がないほど、タカタに配慮する内容を勝ち取れた」。同社関係者は今回の司法取引の内容をこう説明する。10億ドルという和解金の総額こそ大きいものの、米司法省に科された罰金は2500万ドルのみ。残りは取引先の自動車メーカーや異常破裂事故の被害者らへの補償など、もともとタカタが払うべき負担額を計上したものだという。
合意後、速やかに払わなければならないのは罰金と被害者らへの補償基金への拠出1億2500万ドル。自動車メーカーへの補償基金8億5千万ドルはタカタがこれから選定するスポンサーが負担する見込み。タカタの手元資金は16年9月末時点で701億円あり、今回の合意内容が資金繰りに与える影響は「それほど深刻ではない」(同)。」
米司法省のプレスリリースでは、自動車メーカーへの補償基金も含めて、タカタが負担するように読めますが...。スポンサーが負担するというのは、今後のタカタとスポンサーの間の交渉の話であり、会計上は、タカタの負担として処理するのでは。
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
有価証券報告書の株主総会前開示について~投資家に対する有用で効率的な情報提供に向けて~(日本経済団体連合会)

不動産会社「レーサム」元会長ら 覚醒剤等所持の疑いで逮捕(NHKより)
2025 年 3 月期決算発表の延期に関するお知らせ(「一部の職員による試験データに係る不正」、「補償及び再試験費用等の発生が見込まれ、特別損失を計上する可能性」)(トランスジェニックグループ)
有報の総会前開示、6割超へ?(経営財務より)
苫小牧信用金庫に対する行政処分について(「長年に亘り経営を実質的に支配してきた元非常勤理事による風通しの悪い組織文化」)(金融庁)
いなげや株の対価巡り法廷闘争 13%価格差に株主反発(日経より)
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事