会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会の中間整理(東京証券取引所)

従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会の中間整理

東京証券取引所の「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」は、「支配株主及び実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社における少数株主保護の在り方等に関する中間整理」という報告書を、2020年9月1日に公表しました。

別紙なども含めて全15ページです。概要を1ページにまとめた資料もあります。

概要資料によると...

上場後に支配株主を有することとなった場合を中心に、少数株主保護が適切に機能していないと考えられる事例が散見される(支配株主には該当しないが、実質的な支配力を持つ株主(「支配的な株主」)を有する場合においても同様)という背景から、「少数株主保護の枠組みや適用範囲に関する今後の検討課題を整理」したとのことです。

具体的には、以下のような事項を挙げています。

(情報開示)

✓ 上場会社のガバナンスに関する合意や、利益相反やその監督・コントロールの考え方・方針等を含めた情報開示の充実

(手続)

✓ 特別委員会に期待される役割も踏まえた、支配株主が上場子会社の非公開化を目的とした公開買付けを行う局面における少数株主保護の枠組み

(ガバナンス)

✓ 独立社外取締役の選任等

(適用範囲)

✓ 「支配株主」に適用される少数株主保護の枠組みの「支配的な株主」への拡大

東証の少数株主保護手続き、親子上場以外にも適用へ(日経)

「東証は親会社との利益相反を防ぐための方策や取引内容などを開示するよう求めており、こうした対象を持ち株比率や人事面などで実質的に支配力を持つ会社が存在するケースにも拡大する方向だ。

さらに上場企業が実質的な支配力を持つ会社と取締役の指名権などで合意している場合がある。このうち投資判断に重要な影響を及ぼすような契約の開示を求める方針だ。東証は新たなルールをつくるのか、現行規則の運用を改めるのかを検討していく。こうした契約の例として日産自動車が仏ルノーとの関係を取り決めた協定などがある。」

現行の有報でも、経営上の重要な契約等を記載する箇所があります。支配株主や支配的な株主が関係する重要契約は、当然そこに書くべきと思われます。

日経記事でふれている日産・ルノー間の協定がどのように開示されているかをみてみました。


(日産自動車2020年3月期有報より)

「契約の内容」といいながら、契約の名称しか書いていないという、手抜き開示です。契約内容をある程度詳しく書くべきでしょう。報道では、それなりに協定内容が報じられており、有報に書かない理由は思いつきません。また、ルノーとの契約は1999年3月27日のものを挙げていますが、その後、ルノーの持分割合は増加しており、契約内容に変更があると推測されますが、当初の契約しか挙げていないというのは不思議です。日産・ゴーン事件後のガバナンス見直しで、ルノーとの関係も大きく変わっているはずですが、それについてもふれていません。

金融庁は、こういう手抜き開示をきちんと指導して改善させるべきでしょう。当初から、きちんと開示されていれば、ルノー・日産連合のガバナンスに対する社会の関心が高まり、事件も防げたかもしれません。
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