会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

監査法人及び公認会計士の処分等について

監査法人及び公認会計士の処分等について

金融庁は、株式会社ペイントハウスと株式会社ゼンテック・テクノロジー・ジャパンの監査に関与した監査法人とその業務執行社員に対して、業務停止などの処分を行いました(2009年7月8日付)。

プレスリリースによる事案の概要は以下のとおりです。

「(1)ペイントハウス案件

ペイントハウスは、平成17年10月21日に社債管理会社との間で和解契約を締結したことにより、約117億円の債務免除が行われたが、当該債務免除益約117億円を、平成17年8月期に計上した重大な虚偽のある財務書類を作成していた。

赤坂、吉野両会計士は、債務免除の実現時期について、ペイントハウスの主張や法律専門家の意見書を入手したことなどから、社債権者及びペイントハウスの意思は8月末に債務を免除することにあると考え、平成17年8月末時点で債務免除は行われており、債務免除益を平成17年8月期に計上できる旨の判断を行った。

しかしながら、赤坂、吉野両公認会計士は社債権者の意思が8月末に債務免除をすることにあることを証明するために十分な監査証拠は収集していなかった。また、平成17年8月末に債務免除益を計上できるとの結論について複数の否定的な見解を入手していた。このため、債務免除益の実現時点について、更に別の法律専門家の意見を聴くなど、追加的な検討が必要であったところ、当該検討を怠り、債務免除益が平成17年8月末に計上できるとの誤った判断を行った。

(2)ゼンテック案件

ゼンテックは、①実態のない事業譲渡に基づくのれんの計上、②架空売上の計上、③売上の繰上計上、④債権譲渡契約の偽装による貸倒引当金計上の回避の方法により、重大な虚偽のある財務書類を作成していた。

森下会計士は、①について、実質的な事業譲渡が行われたと判断してのれんの計上を認めていたが、事業譲渡契約が締結されないまま相手方が営業を続けている状態で、ゼンテックの子会社の事業の実態の観察や事業譲渡契約の交渉状況の確認等を十分行わないまま、のれんの計上を認めていた。

また、②及び④について、取得した商品リストにない商品の売上や、ゼンテックの説明と契約書の記載内容の相違といった、入手した監査証拠間の矛盾について追加的な確認手続を行なっていなかった。

赤坂会計士は、総括的な立場でゼンテックの監査に関与していたが、監査調書の査閲等を十分行わなかったことから、森下会計士が上記の事項について十分な監査手続を行わなかったことを看過した。」

業務停止期間は、監査法人が1カ月、会計士が3カ月から1年6カ月となっています。ゼンテックのみに関与した会計士は3カ月、ペイントハウスに関与した会計士は2人とも1年以上であり、ゼンテックの方は意図的な粉飾見逃しとまでは判定しなかった模様です。ペイントハウス案件については、事案の概要では債務免除益の計上時期に関する検討不足(いいかえると監査手続の不足)としながら、長期の業務停止であり、実質的には意図的な見逃しと判断しているのでしょう。

金融庁、3会計士に業務停止処分 不正決算で監査に過失

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その2
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