奥山章雄・中央青山監査法人元理事長に聞く
新日本監査法人への行政処分について、奥山章雄・中央青山監査法人元理事長にインタビューした記事。
「ーーカネボウと東芝の違いはどこにあると思うか。
カネボウでは会計士が決算書の粉飾に加担していたという刑事事件だった。一方、東芝では、会計士は加担していない。問題はトップがどこまで関与していたかだ。
トップ主導で粉飾をやっていたとすれば、新日本監査法人が見抜くのは難しい。2015年7月に公表された調査委員会の報告書を読んだが、工事進行基準や半導体の在庫評価など、どれも手がこんでいて、会計士には分からないようにやっていた気配がある。
もし、中央青山が残っていたら、こうした問題は起きなかったかもしれない。あの頃、カネボウの件で反省し、トップから新入社員研修、品質管理運動など、すべての体制を変えた。うまく法人が残っていたら、稼働していったと思う。」
全体として、新日本を一方的に非難するという感じではありませんが、厳しい発言もあります。
「ーー東芝が会見を繰り返して、トップが説明にあたったのに対し、新日本は一度も会見を開かず、2016年1月末に英公一(はなぶさ・こういち)理事長が退任する。これで説明責任を果たしたと思うか?
少しだらしないのではないか。私のときは大勢の報道陣に叩かれながら、一人で3時間の会見を頑張り抜いた。1月に金融庁に改善策を提出した後に会見はすべきだ。」
新日本へのアドバイス...
「ーー中央青山の教訓は新日本に生かされていると感じるか?
当時、一番ひどいと思ったのは2006年5月に、同年7月〜9月までの業務停止命令が発表されたことだ。3月期決算の会社は6月に株主総会を開催する。会社としては問題なく株主総会を乗り切ろうと思っているのに、業務停止になった監査会社として再任することができるか。
しかも当時の商法上のルールでは、業務停止期間が2か月以上になると、一時監査人を選任しなければ、継続監査とはいえないということだった。あの時、腹立たしく思っていた会社が大部分だったはず。中央青山を選んでくれた会社もあったが。そうではない会社も多かった。
今回、金融庁の処分が決まったことで、新日本は問題点がなかったか、精査すべき。特に監査法人として、東芝のここは把握できなかったが今後はこうした対応をする、という問題点と、改善策の徹底的な「見える化」をすべきだ。
12月期や3月期を本決算とする企業は多い。私が監査役を務める会社でも、新日本を監査法人として使っているが、何が問題か分からないままでは、監査法人の選任を株主総会に諮れない。問題と対応策が明確になれば、「改善するなら協力します」という判断になる。
新日本には中央青山から1000人以上が転籍した。私の改革が浸透したかわからないが、対応策は伝わっているだろう。直っていないところがあれば改善してほしい。」
東芝の粉飾発覚から半年以上たっているので、問題点の洗い出しと改善策策定、法人内への徹底はできていなければおかしいということになるでしょう。
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