金融庁の企業会計審議会会計部会(2月14日開催)の議事録が公開されています。
審議会の安藤会長が、この会議をもって会長を退任するということで、比較的長いコメントを残しています(議事録の最後の方です)。
企業会計審議会のこの10年についてのふりかえり、IFRS対応問題、企業会計審議会とは何か、「企業会計原則」のことなどについて、述べています。
最後の「企業会計原則」に関するコメント。
「35年もたったままにしておいていいのか、という危機感が私にはあるんです。教育現場で使われ続けている会計法規集の冒頭に、「企業会計原則」は載っております。ところが、公認会計士協会から出されている会計監査六法を見ますと、基本基準関係の最後のほうにしか企業会計原則は載っていないんです。そういう状態であります。企業会計原則の内容はその後の個別基準によって穴だらけになってしまって、そのままではとても使えません。これは皆さんご存じです。ということは、教育現場で、はっきり言えば、会計教育のいわば根本教典、基本教典がないということなんです。よく仏教界では般若心経とかいいますが、それに相当するものがない。最近、簿記会計を学習する人口が減っているという現象は、このことと無関係ではないような気がしてならない。私が学生時代は企業会計原則があったので、先生も学生も院生もそれを学んで盛り上がったんですよ。共通の土俵となる根本教典があった。それを失ってしまっているのが今の状態ということで、私の提案したいことは、いわば「新企業会計原則」を何とか作れないか。今すぐは無理かもしれないけれども、不可能ではないと思っております。
会計基準の改訂・新設、これは日本基準レベルで考えていただいていいのですけれども、今はちょっと一服状態にあるのではないか。いわば落ち着いた状態にある今であればこれは不可能ではないと思います。ただし、IFRSの任意適用も進んでいますし、JMISもありますし、あるいは米国基準の適用企業もあるというのが日本の現状です。ここから、もう少し様子を見て、もっと落ち着いてからでもいいような気もしますが、会計教育の立場からすれば少しでも早いほうがよい。簿記会計の学習者、教育者のために、企業会計原則に代わるものが必要です。新企業会計原則をつくってほしいということです。
それをどうやってつくるのかということまで言わせてもらえれば、夢物語だと思われても構いませんがこれはやはり企業会計基準委員会で検討、策定していただいて、最後はぜひ古式に則って企業会計審議会会計部会及び総会で了承するのが望ましいと思います。これは個別基準ではありませんから、根本教典だということであれば、この場を使って、審議会でそういう儀式はやったほうがいいのではないかと思います。こうして新企業会計原則ができれば、教育現場は大助かりです。会計はこの新企業会計原則を学べば大体わかる、大枠がわかる。やっぱりそういうものがないと困る。これは、私ばかりでなく、学会関係者がおられるので、おわかりいただけると思います。」
気持ちはわかるような気もしますが、実務的には、今のままでよいのでは。
悪い例が監査基準です。会計士協会の監査基準委員会報告書(ほとんど国際監査基準の翻訳)と、企業会計審議会の監査基準の2本立てになっており、混乱を招いています。同じようなこと(ただし微妙に言葉が違う)が書いてある部分もあり、基準の体系として美しくありません。また、今の協会報告書は、以前のものと違ってわかりやすく整理されており、教育目的でも使えると思います。したがって、審議会の基準の方は廃止して、協会報告書に一本化すべきでしょう。(そうすると審議会のやる仕事がますますなくなるわけですが)
会議の本論では、特に何かを決めたということはないようですが、国際人材育成やのれんの会計処理(償却期間の話など)について、議論が盛り上がっていたようです。
前者については、辛口の意見も...
「...1番目の国際的な意見発信できる人材と、2番目の実際に国際会計の実務を担える人材というのは、かなりイメージとしても違うと感じています。...ここは「国際会計」人材となっていますが、切り離しますと、英語がしゃべれるという人を集めてもしようがなくて、英語がしゃべれて、IFRSを学習したということでは、国際的な場で意見発信する、論陣を張るということはなかなか難しいわけなので、実際にこれを運用していく場合には、特に2つの目的のうち前者についてはよほど慎重に対応すべきだと思います。英語のほうは今、コミュニケーションツールで常識というか、リテラシーになっているので、そちらに重きを置いて運用するということの弊害が過去のレッスンになっているのだと思います。...」(辻山委員の発言より)
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