会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「役員報酬」の虚偽、初の刑事立件に波紋 割れる議論(朝日より)

「役員報酬」の虚偽、初の刑事立件に波紋 割れる議論(記事前半のみ)

日産ゴーン事件で、役員報酬の開示は「重要な事項」なのかどうかで、見方が分かれているという記事。

「日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕は、有価証券報告書への「役員報酬の虚偽記載」を刑事事件にする初めてのケースになった。少なく見せかけたとされる役員報酬は、刑事処罰に値するほどの「重要な事項」なのか――。専門家や市場関係者の間で見方が割れている。」

「有価証券報告書には、決算から経営戦略までさまざまな情報が記される。ただ、虚偽記載のすべてが刑事罰の対象になるわけではない。金融商品取引法では、「重要な事項」について虚偽の記載がある場合に処罰対象となる。」

もっともな議論だと思います。

会計士の立場からすると、やはり、財務諸表の利益や純資産に大きな影響があるような虚偽記載(粉飾決算)は「重要な事項」の虚偽記載と思われます。役員報酬も重要だから開示項目に入っているのでしょうが、懲役刑や多額の罰金・課徴金を課すべきような「重要な事項」なのでしょうか。

今までも、粉飾決算以外で、虚偽記載が刑事処分の対象となったのは、西武鉄道の事件だけではないでしょうか。たしか大株主の状況の虚偽記載だったと思いますが、上場廃止になるかどうかに影響する記載だったので、問題になったのだと思います。日産ゴーン事件の役員報酬は、どう考えても投資判断に大きな影響を与えるものではないでしょう。むしろ、役員報酬の金額が大きい方が、儲かっている余裕のある会社だということで、高く評価されることだってあるでしょう。例えば、ソフトバンクがごく短期間で退任してしまった外国人役員に数百億円の役員報酬を払ったということがありましたが、その件で、ソフトバンクの株価が大きく下がったという話は聞きません。

それに、役員報酬開示が、投資判断に重要な影響を与えるような事項であれば、なぜ日産は、すみやかに訂正報告書を出して、開示の不備を是正しないのでしょうか。東芝の粉飾のように全社的事項ではないわけですから、すぐに訂正はできるはずです。(ゴーン氏が逮捕されて、会社として事情が聞けず、訂正できないのだとすれば、本末転倒と言わざるを得ません。)

「役員報酬虚偽記載」初の事件化 悪質性、分かれる見解 ゴーン容疑者あす起訴(東京)

「これまで罪に問われてきたのは、ライブドア元社長や旧カネボウ経営陣の粉飾決算事件、オリンパス元会長らの損失隠し事件などで、利益や資産などが重要事項とみなされた。役員報酬が刑罰の対象になったケースは、金融庁の担当者も「聞いたことがない」といい、「案件ごとに判断するしかない」とする。

実際、役員報酬が重要事項に当たるのか、定まった見解はない。ある投資家は「役員報酬は一応チェックする程度。投資する上で、主な参考情報とすることはない」と言い切る。証券市場に詳しい弁護士も「役員報酬が投資判断に大きな影響を与えるかどうかは疑問だ」と、重要事項との見方に否定的だ。

一方で、大和総研の横山淳主任研究員は「正当な理由なくトップが高額な報酬を得ている会社は信頼されない。部下たちが仕事へのやる気を保てているか否かの判断材料にもなる」と重視する。」

コメント一覧

FSA
ソフトバンクについては、報酬について、開示した上での市場価格の形成です。日産については、非開示だったことが明らかになった後で、株価は下落しています。投資家に判断材料を与えない姿勢が問題だと思います。(高額な役員報酬を知られたくないというゴーン前会長の判断こそ、日産の役員報酬が「重要な事項」であることを物語っているのではないでしょうか。)
a
ゴーンが報酬をお手盛りで決めてたっていうのは内部統制上の大問題なんじゃないですか?
下請け会社から搾り取った利益をゴーンがお手盛りで好きなだけ受け取ってたら、協力会社の協力態度に影響出るだろうし、投資情報としては重要なんじゃないの?
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