金融庁と東京証券取引所が設置した「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」は、その意見書(4)として「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」という報告書を、2019年4月24日に公表しました。
次回スチュワードシップ・コード改訂などを見据えた当面の課題について、検討の方向性を示したものとのことです。
以下のような内容となっています(報告書より抜粋)。
○スチュワードシップ
1.運用機関
「個別の議決権行使に係る賛否の理由や、企業との対話活動及びその結果やコードの各原則の実施状況の自己評価等に関する説明や情報提供の充実を運用機関に促すことが重要である。」
「運用機関がESG要素等を含むサステナビリティーを巡る課題に関する対話を行う場合には、投資戦略と整合的で、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に結び付くものとなるよう意識することが期待される。」
2.企業年金等のアセットオーナー
「依然として、スチュワードシップ・コードの受入れを行う企業年金は少数に留まっており、その背景として、企業年金の意義や責任に関する認識不足からスチュワードシップ活動の範囲や程度が十分に理解されていない等の指摘がある。」
3.サービスプロバイダー
(1)議決権行使助言会社
「議決権行使助言会社において、十分かつ適切な人的・組織的体制の整備と、それを含む助言策定プロセスの具体的な公表が行われるとともに、企業の開示情報のみに基づくばかりでなく、必要に応じ自ら企業と積極的に意見交換しつつ助言を行うことが期待される。」
「運用機関についても、企業との相互理解を深め、建設的な対話に資するため、議決権行使助言会社の活用の状況について、利用する議決権行使助言会社名や運用機関における助言内容の確認の体制、具体的な活用方法等に関する説明や情報提供を促すことが重要である。」
(2)運用コンサルタント
「自らの利益相反管理体制の整備やその取組状況についての説明等を行い、こうした取組みを通じて、インベストメント・チェーン全体の機能向上を図ることが重要である。」
○コーポレートガバナンス
1.監査に対する信頼性の確保
「内部監査が一定の独立性をもって有効に機能するよう、独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会などに対しても直接報告が行われる仕組みの確立を促すことが重要である。」
2.グループガバナンスの在り方
「我が国のグループ経営について、事業ポートフォリオの見直しを含むグループ全体としての最適な経営資源の配分や、子会社のリスク管理が十分に行われていないのではないかとの指摘があるほか、支配株主やそれに準ずる主要株主のいる上場会社(いわゆる上場子会社等)においては支配株主等と一般株主との間に構造的な利益相反リスクがあるため、取締役会の独立性を高める必要があること等が指摘されている。」
「上場子会社等のガバナンスの問題をはじめとするグループガバナンスの議論において、とりわけ、上場子会社等に関しては、その合理性に関する親会社の説明責任を強化することや、東京証券取引所の独立性基準の見直しも念頭に置いて、支配株主等から独立性がある社外取締役の比率を高めるなど、上場子会社等のガバナンス体制を厳格化することが求められている。」
○おわりに
「コーポレートガバナンスは金融商品取引所における株式市場の構造の在り方と密接な関連を有する。今後、フォローアップ会議において、市場構造の見直しの動向を踏まえ、各市場の性格が明確化されていく中で、それにふさわしいガバナンスの在り方等も念頭に置きつつ、コーポレートガバナンス改革の更なる進展に向けた議論を進める必要がある。」
内部監査のあり方、子会社上場の問題(支配株主と一般株主の利益相反)(日産問題とも関係がある?)、株式市場の構造(東証1部企業が多すぎる問題)などの点が気になります。
上場企業とスポーツ選手の「時価」(十字路)(日経)
「市場活性化を狙った東証の市場区分の再編論議が始まった。問題の一つは、東証1部といいながら時価総額が数十億円の企業でも放置されたまま残っていることだ。時価の小ささは実力の乏しさと期待の低さの表れ。しかも退場がほとんどない。あえていえば退屈な市場になっている。」
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