会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

瀕死の東芝より先に死にかねない、監査法人の「危うい体質」(現代ビジネスより)

瀕死の東芝より先に死にかねない、監査法人の「危うい体質」

東芝の監査で「限定付き適正」意見となったことの意味を解説する記事。「日本の会計監査制度そのものが瓦解の危機に瀕している」と見ています。

「監査法人の役割は、有価証券報告書に記載される財務諸表が公正妥当な基準に従って、虚偽なく記載されているかをチェックすることである。財務諸表に一点の曇りもないときにだけ、監査法人は「無限定適正」意見をつけることになっている。

ところが、公表期限を1ヵ月半余りも遅らせて監査法人と協議を重ねたにもかかわらず、東芝は今回、その「無限定適正」を取得できなかったそのことを問題としなかったら、会計監査の意義が根本から揺らぐのではあるまいか。」

「監査証明書の意味するところは明らかだろう。2017年3月期に計上した損失のうちの相当程度ないしすべての金額は、前連結会計年度に計上すべきであったのに、それがなされなかった。つまり、2016年3月期に粉飾ないしは不適切な決算があったと広言しているのである。」

「東芝は、2016年3月期に計上すべき損失を記載せず、“損失隠し”を行うことで、この期末が3388億円の資産超過であったかのようにみせかけたからだ。もし損失が適正に計上されていれば、この期にすでに債務超過に陥っていたことになる。」

会計監査人が過年度決算の巨額粉飾を正々堂々と指摘しているのに、誰もそのことを深刻に受け止めていないというのは、まさに異常事態でしょう。

それどころか、記事によれば、公認会計士業界全体であらた監査法人たたきをやっていたそうです。

「さらに深刻なのは、2016年10~12月期四半期報告書で「意見不表明」としていたPwCあらた監査法人が、今回は「限定付き」ながら、「適正」という意見を与えて譲歩したことである。

この背景として、2016年3月期決算に“お墨つき”を与えていた前監査人(新日本監査法人)を含めた公認会計士業界全体が、「(監査で)高額報酬を得ているのに意見を表明しないのはおかしい」と、「意見不表明」を行ったPwCあらた監査法人批判の大合唱をしていたことを指摘しなければならない。

当時の監査法人の判断が問われることで、またしても不祥事の糾弾がくり返されることを会計士業界が嫌い、それが一種の力として働いたことは明らかだ。」

この部分の真偽はわかりませんが、東芝側の情報リークによる対あらたのネガティブキャンペーンに影響された部分が大きいようにも思われます。

あらたと米国PwCの関係についてもふれています。

「そうしたなかで、最終的に「限定付き」ながらも「適正意見」がついたことについて、

「(PwCあらた監査法人の親会社に相当する米国側の)プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、『意見不表明』から『不適正』に踏み込むよう指示したものの、日本サイドが国内の空気に配慮して日本的な事なかれ主義に陥って譲歩した」(事情通の公認会計士)

といった見方が絶えない。」

あらたと米国のPwCが親子関係というのは不正確でしょう。実際の力関係は別として、両事務所ともPwCというグローバル・ネットワーク組織に加盟し、その中では対等の立場のはずです。東芝の監査の関係では、むしろ、東芝の監査を担当しているあらた監査法人の方が、米国子会社を担当していた米国PwCに対して指示を行い、報告を受ける関係だったはずです。米国PwCからあらたの方に東芝の監査意見について指示するというのは考えられません。グローバル組織としての品質管理の観点から、あらたに対して何か言ってくるということはあるのかもしれませんが...。

ただ、問題のウェスチングハウス社の監査の結果がどうだったのかは、興味があるところです。それは、監査人(たぶん米国PwC)が米国監査基準と米国PwCのマニュアルなどに基づき東芝の監査意見とは無関係に(忖度なしに?)判断しているはずであり、東芝の監査報告書に書いてないような情報が監査報告書に含まれている可能性はありそうです。

(監査基準上、監査報告書では他の監査人(構成単位の監査人)(このケースではウェスチングハウス社の監査人)に言及できないことになっています。東芝の監査報告書を見ても、ウェスチングハウス社のみの監査結果は示されていません。)
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