会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

米減税、日本企業も影響 車3社の純利益8000億円増(日経より)

米減税、日本企業も影響 車3社の純利益8000億円増
アナリストが試算
(記事冒頭のみ)

米国の税制改革法は、日本企業にも大きな影響を及ぼしそうだという記事。米国で大きな投資を行っている自動車会社や米携帯子会社スプリントを抱えるソフトバンクは、繰延税金負債の取り崩しで、大きな利益を計上するようです。

「アナリストの試算では、税制改革がトヨタ自動車など自動車3社の2018年3月期の純利益を計8000億円程度押し上げる効果がある。」

「ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリストが各社の金融事業の開示資料をもとに試算した。トヨタ自動車で約2900億円、ホンダで約3200億円、日産自動車で約2000億円の一時的な押し上げ要因になると推定する。三菱UFJモルガン・スタンレー証券も、ホンダの今期純利益の予想を3000億円引き上げた。

自動車各社の業績を上振れさせる理由は、税務会計と企業会計のズレを調整する「税効果会計」にある。減税により、将来の税負担の増加につながる「繰り延べ税金負債」が減少するからだ。

繰り延べ税金負債は税率を基に計算する。連邦法人税に州税を加えた米国の実効税率は従来40%程度だったが今回26%程度に低下した。将来の税負担も3分の1程度減った計算だ。

これまでに自動車各社の繰り延べ税金負債が膨らんだ背景には、米国の投資促進策がある。固定資産を取得した初年度に50%まで減価償却費として税務会計上の損金(経費)に算入できた。「税金の後払い」が可能となり、投資資金の回収を早められる利点がある。

米国では法人でも個人でもリース契約での自動車購入が一般的。日本の自動車各社は米国市場で販売台数を伸ばす一方、投資促進策を活用してリース車両など固定資産の減価償却を前倒しで実施してきた。

この場合、税効果会計では、繰り延べ税金負債を貸借対照表に計上する。トヨタの米金融子会社であるトヨタモータークレジット社(TMCC)の17年6月末の繰り延べ税金負債は81億ドル(約9000億円)だった。

ほかにもソフトバンクグループや信越化学工業など米国での事業規模が大きい企業に影響が及びそうだ。ソフトバンクの米携帯子会社スプリントは17年9月末時点で繰り延べ税金負債を147億ドル抱える。5000億円規模の利益押し上げ効果がありそうだ。」

「減価償却を前倒しで実施」というのは、正確には、会計上は定額法などで規則正しく減価償却しているのに対し、税務上、投資優遇などで、それよりも前倒しの償却を認めていて、その差異の影響を繰延税金負債に計上していたということでしょう。税率が3分の2になるということですから、繰延税金負債の3分の1は取り崩して利益になるという計算です。

米国子会社・関連会社で大きな繰延税金資産・負債を持っている企業は、税率引き下げ以外の影響も含めて、決算への影響を計算しているところでしょう。

米国の減税で決算にプラスの影響が出ると発表したのは、今のところ、マネックスぐらいのようです。

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