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監査基準委員会報告書「監査調書」公表

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日本公認会計士協会は、監査基準委員会報告書第36号「監査調書」を、2007年3月16日付で公表しました。

国際監査基準ISA230 "Audit Documentation"に対応する指針であり、従来の監査基準委員会報告書第16号「監査調書」は廃止されます。

公開草案のときのコメントと重なりますが、以下の2つのポイントが重要です。

1.「経験豊富な監査人」という考え方の導入

今までは実際に監査をやった者の説明を聞いて、監査手続や結論がわかる程度の調書でよかったものが、新しい報告書では、その監査に関与していない「経験豊富な監査人」がわかるレベルまで監査調書を整備しなければならなくなりました。

ということは会計士協会のレビューアーや金融庁の検査官が閲覧して、理解できるレベルの調書を作る必要があるということです。もっとも、「経験豊富な監査人」の定義では、(1)監査のプロセス、(2)一般に公正だと認められる監査の基準、(3)企業の事業内容に関連する経営環境、(4)企業の属する産業における監査及び財務報告に関する事項、を相当程度理解している者とされているので、(1)と(2)の条件で監査実務を経験している会計士にほぼ限られるのでしょう。

2.最終的な整理の期限

監査調書は監査報告書日から60日程度を超えない期限内に整理を完了し、それ以降の変更は変更の理由も添えて逐一記録しなければなりません(しかも削除・廃棄は不可)。従来は特に期限は定められていませんでした(といっても翌年度の監査が本格的に始めるまでには普通整理しているはずですが・・・)。

このあたりは、エンロン事件で監査人が書類をシュレッダーしたことが証拠隠滅と疑われたことが影響しているのでしょうか。

これと合わせて、以下の監査基準委員会報告書と品質管理基準委員会報告書の改正(監査調書に関する項目を追加したり修正したりするもの)も公表しています。

監査基準委員会報告書
・第17号「中間監査」
・第30号「評価したリスクに対応する監査人の手続」

品質管理基準委員会報告書
・第1号「監査事務所における品質管理」(60日程度という具体的な期限は第1号の方に書かれています。)

この品質管理基準委員会報告書では、監査調書の最終的な整理、監査調書の管理、監査調書の保存に関する方針・手続を各事務所が定めなければならないとされています。
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