経営破綻したしょうゆ製造会社、サンビシが、先物取引などの失敗で巨額の損失を出した実質的な子会社8社を連結決算の対象から外し債務超過状態を隠したとして、前社長と前財務担当常務が逮捕されたという記事。
「及部前社長らは97年から、及部前社長が社長を兼ねていた「サンビシ商事」に独断で資金を貸し付け、商事の子会社の資金運用会社「サンビシエイ・エム・エス」(AMS)などを通じて「日経225先物」というデリバティブ(金融派生商品)取引などを展開した。しかし、最終的にAMS名義の取引だけで約31億6千万円の赤字を出していた。
(中略)
商事の株のうちサンビシの保有分はわずかだが、サンビシグループの関係者が持つ分を合わせると議決権を有する株式の過半数を超えていた。このため県警は、商事はサンビシの子会社にあたり連結対象に含むべきだったと判断した。取引に使われたほかの7社も同様とした。 」
別の報道によれば、監査法人の事務所も捜査を受けたようです。
関連記事(記事中のリンクは切れています。)
これは、2005年10月にこの会社が破綻したときに当サイトにて書いたものです。このときは、問題のサンビシ商事は、社長の個人会社であると想定してコメントしています。
しかし、今回の逮捕容疑は、支配力基準に基づく子会社であるとみなして、連結外しの粉飾だということのようです。
たしかに役員の派遣や貸付という事実から、支配従属関係があったのかもしれません。しかし、仮にサンビシ商事の株式の過半数を社長(またはその親族)が保有し、デリバティブ取引でもうけが出ていれば社長が配当を受けるというようなスキームであれば、サンビシ商事を支配していたのはサンビシではなく社長であるということになります(他の個人や会社に支配されている会社を子会社とすることはできないはず)。
もちろんその場合でも、サンビシは債務保証や貸し付けに対する貸倒を見積もって引当金を計上する必要があり、それが十分になされていなければ粉飾決算です。また、社長らは自分の会社の利益のために、多数の他の株主がいるサンビシに損害を与えたということで(粉飾より罪が重い)背任の疑いも出てきます。
いずれにしても不正であり微妙な違いかもしれませんが、会計的には、監査人の責任にも影響するある程度大きな問題です。単純に連結外しで片づけないでほしいと思います。
最近の「不正経理」カテゴリーもっと見る
開新高校など運営の学校法人元職員、20年間で2億円横領か…弁済する意思示す(読売より)
AI新興企業オルツの粉飾決算疑惑 グロース市場改革の行方にも影響か(日経ビジネスより)

過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出および過年度の決算短信等の一部訂正に関するお知らせ(パーク24)ー英国版タイムズパーキングの運営件数および運営台数に重要な誤りー
過年度決算短信等の訂正に関するお知らせ(日本ルツボ)-仕掛品の計上金額が過大であり売上原価の計上金額が過小であったことが社内の確認により判明ー
当社米国子会社における資金流出事案に関するお知らせ(TOA)

産業用ドローン「ACSL」前代表が不正流用、借金返済に1.5億円(朝日より)
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事