怪人クンのムフフ日記

ムフフ、ムフフ、時々オヨヨの〝怪人クンワールド〟炸裂!
あの大物も、この人も。愉快な仲間続々登場!

“創り続ける”という恐怖。“やめる”という恐怖。

2006年06月04日 | Weblog
<6月3日(土)>

このブログを思い切ってぶっ壊す。破壊する。葬る。そうは思ってもできない自分がいる。
1年365日休まず毎日書いていると、そういう気が起こらないほうがおかしい。1週間でも2週間でもいい。放り出したい衝動に駆られる時がある。心の片隅にそれは絶えずつきまとっている。
書き続けるにはエネルギーがいる。集中力とノリとリズムと勢いも必要だ。瞬間、今だ!頭に文章がひらめく。こういう時のそれは弾ける。瞬発力があるので、書いているとランニング・ハイのようにスラスラ文字が浮かび上がり、キーを叩くしぐさもまるでピアニストのように華麗な動きを見せる。これが怪人クンの指捌き?嘘だろ?我を疑うものだ。

終わりなきストーリー。最終回のないドラマはだれる。ブログもそう。終幕があるから一語一句に魂を込める。書く側、読む側にも緊張関係が生まれ、互いを刺激し合うのだ。いつまでも続くものにありがたみはない。
正直、ここ数日の怪人クンは“なんとか書いている”といった状態に陥っている。文章も弾けてない。プロレスで言うなら、フラフラになってリングに上がり相手に攻め込まれながらも、一瞬の隙を突いての逆さ押さえ込みやリングアウト勝ちをかろうじてもぎ取っているようなもの。会心の勝利がない。そんな自分に焦りはないが、真っ白なキャンバスを文字で埋めることに気持ちが向いてしまい、大切な“何か”を忘れかけているような感は否めない。終わりなきことに退屈したのか?
読者は鋭い。敏感だ。ゆえに怖い。中には、この頃の怪人クンを同じ心中で読んでいる人もいるかもしれない。スランプという表現はおこがましいが、そんなところだ。
こんな時は思い切ってインターバルをとる。間を置く。20カウント以内なら、リング下で呼吸を整えることも許されるのだ。特権は使ったほうがいいに決まっている。
それでも、休まず書き続けるのはなぜなんだろう?リングを降りないのはどうしてなのか?ズバリ、書かかなくなる自分が怖いのだ。やめてしまうということが…。創り続けることも怖いが、やめることはもっと怖い。たった一度でもプレッシャーに負けたら、自身が錆びてしまうようで。

かつて、あるテレビ番組にゲスト出演した古舘伊知郎氏は言った。
「僕の実況には“間”(ま)がないでしょ?次々言葉を繋げますよね?NHKのアナウンサーなんかを見てると、間だらけじゃないですか?一語しゃべると沈黙。また一語で沈黙。あれが僕にはできないんですよ。怖くてダメなんです」。怪人クンも古舘氏と同じなのだ。この気持ち、モノを創る(創り続ける)世界にいる人間には痛いほどわかってもらえると思う。

夕闇。あと10分足らずで18時になるというのに日記の更新ができない。途中まではできていたが、それから先が書き出せなかった。後半部分でキーを叩く手が止まっていた。ピンク色の薔薇との待ち合わせは30分後に迫っているのだ。何とか書き上げた時は18:03だった。アップ完了。パソコンをシャットダウンさせた。怪人クンの事務所を飛び出し、JR静岡駅へ一目散。人々が行き来する。地下街の1つが通行止めになっていた。仕方なくいつもと違う道筋で駅構内へと入った。静岡駅は現在、地下街だけじゃなく、構内のあちらこちらで補修工事用が行われているのだ。
18:40、在来線の階段から乗客たちが一斉に降りてくる。ひとりの女性と目があった。
「あ、なにぃ~。久しぶりじゃん」と彼女。
「よう、元気そうじゃん」と怪人クン。互いの動きは止まっていたが、その横を足を速め人々が通りすぎていく。
彼女は昨年初春まで“妖怪酒場”に勤めていたが、現在はこの街の老舗クラブで働いている。積極的に仕掛ける話術で妖怪酒場ではなかなかの人気嬢だった。いつも豹柄のドレスを着ていたので“女豹”と呼んでいた。そんな彼女も大の猪木信者である。
「ちょっと、ちょっとこれ見て」。女豹が立ち止まり、バッグの中からあるものを取り出した。この道を行けば…「道」の詩が書かれたライターだった。
「じゃぁね」と言って歩み出した女豹。
「がんばれよ」。彼女が視界から消えるとすぐ後ろに薔薇がいた。
「誰?知り合い?」
「夜の女だ」。
「ふ~ん」。
タクシーに乗り込み安倍藁(「A-WARA」)に向かった。19時。超満員でいつもの個室には入れず、入口からすぐの水槽前のカウンター席に通される。ここもなかなかオシャレな席だ。暖簾で仕切られていたので個室気分は変わらない。目の前にはたくさんのアユが上に下に、右に左に泳いでいた。豆乳割で乾杯。アユの塩焼き、はんぺんフライ、サラダ、豆腐、串焼き、カッペリーニ(冷製パスタ)などが順々に運ばれてくる。それらをつまみながら会話を楽しむ。その席で薔薇からある知らせを受けた。
「え?マジ?そうか!」
今はまだ詳しく書けないが、“その時”が来たらドッカーン!と書く。
20:30には舞台を店に移して第2Rがスタート。まだ早い時間というのもあり空席が目立っていた。それにしてもだ。周りを見渡すと、どのキャストもみな同じに見えてならない。化粧、髪形、ドレス。変わり映えしない。ただひとり、薔薇だけが異様な光を放っていた。彼女は何かが違う。これは怪人クンがオキニだからお世辞を言っているわけじゃない。『黒い太陽』(新藤冬樹・著)を読んでからというもの、小説にダブらせて現実を見てしまう。自然と怪人クンの目も厳しくなる。
60分はあっという間に終わった。食事と店。薔薇とのデートに2万円弱を遣ったが、そんなことはいちいち気にしない。

22時。もう一軒立ち寄った。“ネコの足跡”だ。おなじみ♪ムムム~のおじさんの歌声と女性たちの笑顔が迎えてくれた。奥の壁際の席に座る。この時、店内は8割の入り。ネコママは和服姿。焼酎の水割りを2杯。こちらも60分で切り上げる。帰り際、入口の外まで見送ってくれたネコママに訊いてみた。最近になって気がついたのだが、彼女はあるタレントに似ている。目元、口元がとくに。
「ねぇ、ほしのあきに似てるって言われない?」
「言われる、言われる。でも私、その人のことよく知らないんだよね」。
「グラビア・アイドルだよ」。
そういうとネコママの顔がほのかに赤く染まった…。


※水槽の中で泳ぐアユ(写真)。