
ふと見ると彼は八分の一に折り畳まれた2ドルと5ドルを手にしている。日本円で味を占めたからであろうか、先ほど失敗したドルでやり直そうとしているのかもしれない。果たして上手くいくのだろうか。
手品師は手にした2種類の紙幣を担当君の目の前に突き出し「左手を出して」と言った。担当君は聞こえなかったのか、それとも血の気が引いているのか反応すらなかったのである。すると手品師は彼の左手をむんずと掴んで手を突き出させ手の平を上にした。その上にした手の平に折り畳まれた2ドル、5ドルを置き、それらを軽く握らせ手をひっくり返した。手の甲を上にして拳を突き出すようにしたのである。
この一連の動作は担当君の意思ではなく総て手品師の意思であったということは言うまでもない。もう生贄だな。この段階で既に担当君の頭の中は真っ白である。