テレビのコマーシャルが終わるとカメラは店の中に足を踏み入れていた。入り口の右側にレジカウンターがあり、その前にこの彼(手品師)が立っているのである。またその横に堂々たる風格の(嫁さんかと思いきや)従業員さんが立っている。
「おー、あいつもテレビに写るのか」
見ていると、その従業員さんが言う「息子さん手品が出来るんですよ」と。テレビのほうはあまり気乗りがしてなさそうだが目の前でこのように言われればこのように言うしかない「一つやってみてもらえませんか」
「いやー 人に見せるようなものではありませんから」と言って断ってくることを期待しているかのような口調だったのである。ところがこの時である「それじゃあ」と嬉しそうな顔で始めたのである。この時が彼のテレビ初デビューであった。テレビで見せた手品は上手くいったようで、カメラに向かって得意満面の笑みを浮かべていたのが頭に残っている。