病室から見る外は関門海峡の西端である。大小さまざまな船が引きも切らず東奔西走し、ここが流通の大動脈であることを見せつけている。東へ目を転じると巌流島から関門橋を望み、決闘と平安時代の幕を引いた決戦の舞台がある。ここの潮流がそれぞれの運命を決めたのである。
コンテナをこぼれんばかりに山積みにした大きな船が西の海に向かって行く。どこまで行くのか判る訳もないが、その大きな船はだんだんと小さくなって終には視力の限界を超えて消え失せてしまうのである。当然この様な経験は誰にでもあることだが、この現象を元にしたある論拠を考えてみよう。あっ、今の私は術後から数日が経っていて病室から海を望んでいるわけだが。