ペンギン夫婦の山と旅

住み慣れた大和「氷」山の日常から、時には海外まで飛び出すペンギン夫婦の山と旅の日記です

天理・竜王山(2012.10.3)

2012-10-05 09:56:43 | 山日記

 

竜王と名の付く山は「コンサイス日本山名辞典」で見るだけでも23座ある。殆どが水神を祀る山で、山麓の農村とのかかわりが深いことを伺わせる。中でも天理市と桜井市にまたがる竜王山は、家から近くて気軽に行ける山なので年に何度も登ることが多い。 今日は1月の初登り以来、急に思い立って出かけた。
【コースタイム】 長岳寺07:25…不動石仏08:10…林道に出る08:40…頂上09:05~09:30…不動石仏10:07…長岳寺10:55
 

日本最古の官道「山辺の道」のほぼ中間にある柳本の長岳寺。淳和天皇の勅願で空海が天長元年(824)に大和(おおやまと)神社の神宮寺として創建したという古い由緒を持ち、地元では「釜口(かまのくち)のお大師さん」として信仰が篤い。まだ先着車が二台あるだけの駐車場に車を置かせて貰い、寛永17年(1640)再建という大門を潜る。
 

すぐに境内を出て山辺の道に入り、T字路で別れて山に向かう。空には雲が多いが雨の心配はまず無さそうだ。柿畑の中の舗装路で急坂を上がっていく。果樹畑で収穫作業をしていた女性に挨拶すると、「良かったら持っていって。渋柿やけど、よう熟したんは美味しいよ」と真っ赤な大きな柿を4個も下さった。
 

早速一つを口にして、残りは大事にビニール袋に入れて皮が破れないようそっとザックに収める。柿畑を抜けると土道に変わり、小さな石仏がポツンと立つところから山道になる。石仏の横のブリキ板に「ハチに注意」と大きく赤字で書いてあった。
 

切り通し状になった急坂に階段が延々と続く。しばらく勾配が緩んだと思うと、再び木の階段道や土嚢を階段状に積んだ道になる。いつも手入れされているが、大雨が降るとすぐまた荒れてしまうようだ。イノシシの掘り返した跡もあちこちに見られる。じっとりと湿気を含み、水が流れている所もあって汗が滴り落ちてくる。「不快指数100やなあ」と♀ペンは背中を濡らすのを嫌って、人目がないのを幸いにザックをお腹の方に回して、得意のカンガルースタイルで歩く。
 

U字に抉れた岩が露出している所もあるが、この山の地質は花崗岩が主なので滑らないのが幸いである。固定ザイルが張ってあるところを過ぎると、ベンチがあり、しばらく勾配が緩む。急な登りでこの不動さんに出会うと、山頂までほぼ半分の道程になる。
 

ヒノキの植林帯に入ると尾根道に出て、しばらくは水平な道になる。右に長岳寺奥ノ院への道を分けると、また階段道になる。しかし休まずにゆっくり登り続けてきたので、少しも苦しさを感じない。
 

最後の急坂を過ぎると勾配が緩み、両側から雑木が覆いかぶさってトンネルのようになっている。ここを抜けると指導標の立つ所が天理ダムから登ってくる車道との出合で、トイレや展望台、案内図などがある。左に緩く下ると北城址、天理ダムに通じているが、今日は右の南城址に向かう。

竜王山頂部には竜王社も二つある。古くから山麓の村がそれぞれに祀ってきたものだが、現在でもこの辺りは藤井町、田町、柳本町の境界が複雑に入り組んでいる。これは車道脇の田竜王社。少し車道を歩いて、右手の大きな説明板のある所から山道に入る。長谷への道を左に分け、昔の砦の跡らしい見晴らしの良いところにでる。さらに何段か平坦地と短い石段を登ると、南城本丸址の広場に出る。

山頂に着くと、橿原から来たという方がベンチでメモを取っておられた。よく登られているそうで「今日は思ったより霞んでいて明石大橋の写真が撮れない」と残念そうだった。しばらく立ち話をして下って行かれたが、私より3歳年長とは思えぬ若々しさに驚いた。

山城は戦国時代に十市氏が築いたが、その規模は上杉謙信の春日山城に匹敵する大規模なものだったという。その本丸跡からの展望はさすがに見事である。こちらは信貴山から生駒山に続く山並み。その下に矢田丘陵が長く伸びている。
 

大和平野に緑の島のように浮かぶ古墳群。その向こうに右から二上山、葛城山、金剛山の峰々が並んでいる。手前の説明版が新しく綺麗になった。
 

三角点横のベンチに腰を下ろしてティータイム。先ほど頂いたカキは甘くてとてもジューシー、その上種がなく美味しかった。空には次第に青空が拡がり見晴らしもよくなってきたが、先ほどから大きなハチが二人の周りをブンブン飛び回っている。長居は無用と20分ほどで頂上を後にする。
 

帰りは護摩を焚いた跡の残る柳本竜王社の横の道を下る。今日は私たちがこの道を初めて通るらしくクモの巣に悩まされながら下る。車道が近くなって人声がして女性二人が登ってきた。車道の分岐で左(南)側の竜王古墳群を通る道に入るつもりだったが、先ほど頂上で道が崩れていると聞いたので、元来た道を帰ることにした。
 

帰りは日が射してきて湿気も少なくなり、風も出てきて朝とは段違いに快適な下りになった。調子良くどんどん下って不動さんを過ぎる。この頃から時々、登ってくる人に出会うようになる。

「今日は登山の日と聞いて、朝の家事を済ませて登ってきた」とおっしゃった地元の女性は、私たちが「郡山から来た」と聞いて「ひょっとしてペンギンさん?」と訊ねられた。何と10年も前からホームページやBLOGを見て下さっている方で、私たちのレポートを参考にして山を歩かれたこともあるとか…。「出会えてよかった」と言っていただいて、こちらこそ思わぬ出会いが嬉しかった。お名前を聞かなかったが、またどこかの山で会えますように…。
 

長岳寺門前の「根上がり松」。下に並ぶ石仏の中には室町時代の古いものも混じっているとか…。非常に快調に登り下りして、♀ペンは「これならもう一度登れる」という。近くの白山(シロヤマ)にでも足を延ばそうかとも思ったが、今日は自重してこのまま帰ることにした。新しい出会いもあり、楽しい半日の山歩きだった。