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★科学技術ニュース★理研、発光バイオセンサーにより動物間コミュニケーションの新戦略を発見 

2018-08-07 09:32:38 |    生物・医学

 理化学研究所(理研)の研究チームは、発光バイオセンサーを利用して、動物の神経活動と行動の同時計測システムを開発し、動物間コミュニケーションの新戦略を発見した。

 同研究成果は、より自然に近い環境下で自由行動する動物の神経活動をリアルタイムで観察可能にしたもので、今後、謎に包まれた動物のコミュニケーション戦略のさらなる発見とその神経基盤の解明に貢献すると期待できる。

 多くの動物は、同種とコミュニケーションをとるために、社会的および性的行動を調節するフェロモンなどを放出している。なかでも、キイロショウジョウバエ(ハエ)では、オスのフェロモン「cVA」によりさまざまな行動が調節されているが、cVAがいつどこで放出され、どのように受容されているかはほとんど分かっていなかった。

 そこで同研究チームは、cVAに特異的に応答する神経細胞に発光バイオセンサーを発現させ、自由に行動するハエからリアルタイムで神経活動を計測するシステムを開発した。

 その結果、cVAはオスのマーキング行動を通して、腹部先端から放出される分泌物に多く含まれることが分かった。さらにこの分泌物は、オスとメス双方を惹きつけ、求愛行動の場を作り出すことを見いだした。

 cVAは長年研究されてきたが、それが消化管由来の分泌物に含まれ、マーキング行動により特定のタイミングで積極的に放出され、社会的コミュニケーションに利用されていることが初めて明らかになった。

 今回開発した発光バイオセンサーを用いたシステムは、自然環境により近い状況で動物を自由に行動させ、特定の神経細胞の活動を可視化できるという利点がある。

 このようなアプローチにより、動物がどのようにして情報交換をするのかといったコミュニケーションの戦略や、どのようにして複数の同種を見分けるのかという個体認識のメカニズムの理解につながると期待できる。また、近年発展しているゲノム編集の技術と同システムを組み合わせることで、ハエに限らずさまざまな動物において社会的行動の神経基盤を解明できる可能性がひらける。 


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