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■科学技術書<ブックレビュー>■「光とは何か」(江馬一弘著/宝島社)

2014-12-02 12:19:49 |    物理

書名:光とは何か

著者:江馬一弘

発行:宝島社(宝島社新書)

目次:第1章 あなたが光と「出会う」とき
    第2章 光の性質を知ろう
    第3章 色のしくみを知ろう
    第4章 光の正体はなにか
    第5章 光の最新テクノロジーに触れよう

 光は、身近な存在だけに、「光とは何か?」と問われても、「電磁波の中の可視光線のこと」ぐらいしか答えが浮かばない。「最初に光ありき」ではないが、光はこの宇宙開闢から40万年経った時に、“宇宙の晴れあがり”現象が起こり、宇宙のかなたに向かって長い旅に出ることになる。そして、この宇宙には、光速を超える速度は存在しないという。光速で飛ぶ飛行物体から、光速で飛び立っても、速度はやはり光速だというから、凡人には到底理解することができない種類の話だと考えざるを得ない。こんなこともあり、人はあまり光について深く考えようとしない。これが、重力だと物を上から落とすと、すとんと落ちるので、「何か目に見えないものが作用しているのでは」と思考が及ぶ。しかし、光については、目に見えることがかえって災いして、人は光について考えることを停止しまいがちで、全て当たり前だと、疑問を差し挟むことはあまりしない。

 「光とは何か」(江馬一弘著/宝島社)は、光について考えてみたいという人達にとっては、絶好の書籍である。まったく専門知識を持ち合わせてなくても、難なく読み進めれ、読み終えた際には、知らず知らずのうちに光についての知識が身についている状態になっている。図表も全てカラー化され、重要な個所はゴチック体で書かれているので、非常に理解しやすいようにつくられている。また、この本では、いくつかのクイズが出され、その回答を考えながら、光への理解力を向上させることができる。それらのクイズの一つに、「鏡に映った像は、左右だけが逆になり、上下が逆にならないのはなぜでしょうか?」というのがある。正解は本書を読んでいただくとして、このクイズの質問にはぎくりとさせられる。確かに、上下が逆に映る鏡なんて見たことがない。それでは何故左右だけが逆に映るのか?この問いの正解を読むと、如何に我々の“常識”というものが、あやふやなことが痛切に思い知らされる。

 さらに読み進むと、意外な事実を知らされる。我々はよく電球の光がまぶしいので手で遮ろうとする。そうすると光は遮られ、目はまぶしいとは感じなくなる。「ですが、この場合、まったく別の見方ができます。じつは電球からの光は、手のひらにさえぎられたり吸収されたりせず、手のひらを通り抜けて、私たちの目に飛び込んできているのです」とあるではないか。さっきの鏡のクイズと同様に、ごく普通の考えをする人にとっては、このことは容易には理解できない。しかし、これも同書を読むことによって正確に理解することができるようになる。もう一つの事例として、「鏡で反射した光は、入射した光とは『別のもの』になっている」ことが解説されている。入ってきた光が鏡に反射して、外に出ていくのであるから、入射光と反射光は同じもの、という考え方が我々の常識。これらの事例では、従来のニュートン力学だけでは理解できず、量子力学的知識が如何に欠かせないかが実感させられる。時代は刻々と進んでいるのである。

 同書は、光の基礎的知識を得るのに格好の書ばかりでなく、これからの日本の産業の発展にも欠かせない書なのである。それは、筆者もこの書の「まえがき」でも書いている通り、「21世紀は光の世紀」がキーワードとなるからである。以前「鉄は国家なり」と言われ、鉄を如何に産業に応用するかが最大の課題であった時代があった。次に来たのが石油である。石油をエネルギー源として活用したり、いち早く化学製品化した国が圧倒的な国力を持つことができた。そして次にやって来たのが20世紀に花開いたエレクトロニクス時代だ。それでは、21世紀は何の時代となるかというと、それは光とバイオである。既に光は、通信やコンピューターへの応用が急ピッチで進められ、21世紀に大きく花開こうとしてる。この時に当たり、若い人々が同書を読むことで光に興味を持ち、将来、わが国の光産業を発展させることは極めて重要なことだ。筆者の江馬一弘氏は、東京大学工学部物理工学科卒業。工学博士。専門は光物理。現在、上智大学理工学部教授。(勝 未来)

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