村山斉 Kavli IPMU機構長、飛岡幸作高エネルギー加速器研究機構(KEK)博士研究員らは、2012年に欧州合同原子核研究機構(CERN)で発見されたヒッグス粒子の質量と超対称性理論から期待される質量の値の矛盾点を解決しながら、理論の自然さを保つことに成功したと発表した。
現在素粒子のふるまいを最もよく説明するとされる標準理論には、いくつかの問題点がある。この問題点を解決する理論として、超対称性理論は有力な理論とされている。
しかし、超対称性理論の最も基本的なモデルで期待されていたヒッグス粒子の質量は、2012年に観測されたヒッグス粒子の質量よりも小さく、理論と観測結果との間に困難が指摘されている。
これを解決するため、様々な拡張を行った超対称性理論のモデルが数多く提唱されてきた。
しかし、従来の理論では、観測されたヒッグス粒子の質量を説明するため導入される「超対称性の破れ」の値を大きくすると、理論が非常に不自然になってしまうという問題があった。
今回の論文で示された成果は、ディラック型の2つの新しい超対称性粒子を導入することにより、超対称性の破れの値が大きくても、理論を不自然にするような影響を与えないということを証明出来たこと。
これにより、理論の自然さを保ったまま観測されたヒッグス粒子の質量を説明できた。