ひびのきおく

かえでのつれづれな日常をつれづれに綴るなごみの時間。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

三島由紀夫のこと。

2006年01月25日 | 芝居のこと
大学の専攻は強いていうなら米文学でしたが、
指導教授の三島好きとわたしの芝居好きもあって、
家族の中ではわりと本を読まないわたしにしてはめずらしく
三島由紀夫は「好き」とはっきりいえる作家の一人です。

その作家の壮絶な死から昨年で35年。
そして81回目の誕生日から始まったのが劇団四季の『鹿鳴館』。
実はこの『鹿鳴館』も文学座の20周年記念公演として書き下ろされてからちょうど50年。
新たな演出で手がけるには実にいいタイミングであった気がします。
自由劇場はこじんまりとしていながら、造りもそこそこ豪華で
東京の劇場の中でいちばん好きな劇場です。
そんな空間で繰り広げられる華やかな三島作品は
いったいどんなものなのだろうと結構期待して観てきました。

結果としては善戦はしているけれど、ちょっと現代性が半端な感じでした。
うまく通じるかわかりませんが、「垢抜けないtpt」みたいです。
tptは「古典の中に現代性を抉り出す」というテーマを掲げて
『双頭の鷲』や『かもめ』などわりと手垢の付ききった作品を
見事にスタイリッシュにそして現代人の心にも突き刺さる普遍性を提示しましたが、
今回はそれと同じようなことをやろうとして、力及ばず、という印象を受けました。

謡わない抑えた台詞回し、墨絵を髣髴とさせるスマートで品格のある舞台、
そして古典的だけれども美しい衣裳の貴婦人たちと結構いい方向に打ったと思われますが、
全体的にちょっと煮え切らない演出が足を引っ張って二塁打止まり

役者さんは演出の範囲でかなりがんばっていらしたと思います。
特にどうしても謡い上げたくなってしまう三島の流麗な文体をよくぞここまでというくらいに
地に足を着けて語り尽くしたのはジロドゥやアヌイといった古典なれした四季ならでは。
どの役者も慣れない古風な言葉遣いを比較的違和感なくこなしていました。

以前蜷川演出『ハムレット』で鈴木杏のオフィリアを観たときに、
台詞をしゃべっていないとこんなにも上手いのに
しゃべるとどうして違和感があるのだろうと思ったことがありました。
彼女は今時の若い女優さんの中ではかなり上手い女優さんだと思いますし、
実際現代語のお芝居の台詞なら違和感はないのですが、シェイクスピアはだめなのです。
しかもその時に使った翻訳は確か2年位前にできた新しいもので、
たぶん現存するシェイクスピアのものでいちばん現代口語に近いものでした。
それでも違和感を拭えないのです。
それを考えると確かな技術であると思いました。

さて、個々の役者さんですが、まず影山:日下武史さん。
とてもよい役者さんですし、その飄々とした存在感は自分の感情を
何人にも悟られたくないという影山のキャラクターを非常に巧みに表現していました。
ただ、影山は明治政治家――維新が終わり日本が新しい政府、
新しい政治家によって大きく動いた時代の人です。
年齢も昨今の政治家よりぐっと若くてせいぜい40~50代でしょう。
それを考えると申し訳ないけれど日下さんには若さが足りない
これはもう、上手下手の問題ではないのですが、もう少し若い、
ぎらぎらとした野心の垣間見える影山が観たかったと思いました。

その向こうを張る夫人の朝子:野村玲子さん。
古くは名女優:杉村春子、そして依然ここにも書いた初代水谷八重子が演じた大役です。
後半のデコルテの着こなしはもちろんのこと、
初めて見る裾引きの和装もなかなか堂に入っていましたが、
どうしても感情が高ぶると甲高い少女っぽい声音になるのが気になりました。
新橋の芸妓上がりの伯爵夫人――どう考えてもその人生経験たるやなかなかのものでしょう。
確かに少女らしい天真爛漫な一面が残る魅力的な女性だとは思うのですが、
どうも「少女らしさが抜け切らない女」に見えてしまうのです。
微妙な差ですが前者と後者じゃ大違いです。
しかも悪いことに影山が若くないですからね。
きっともっとよくなるとは思いますが、大絶賛には至りません。

主演二人は以上のような感じでしたが、個人的によいと思ったのは
大徳寺侯爵母子の末次美沙緒さんと濱田めぐみさんでした。
末次さんの母としての毅然とした態度はとてもすてきでしたし、
わりと爛漫で男勝りのイメージが強い濱田さんがすっかりお嬢様然と舞台に立っていて驚きました。
朝子のかつての恋人:清原の広瀬さんは無難で安定してました。
その息子:久雄の田邊さんはもう一歩ニヒリズムがほしかった。
書生姿はさわやかで思いのほかよったのですが、ちょっとまっすぐ育ちすぎた感があります。
これではあの終幕間際の彼の行動は想定の範囲内すぎて意外性がないかなと。

全体的は悪くない出来なので、ロングラン公演ということもあり、
キャストも変わるのではないかと期待して
しばらく経ってからもう一度観てみたいなと思います。
コメント (6)   この記事についてブログを書く
« ふつうの日。 | トップ | 三島由紀夫のつづき。 »

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (はまち)
2006-01-26 23:43:58
トラックバックありがとうございます!

初めてうかがわせていただきました。

私は三島作品は全く読んだことがありませんので、舞台化を機会に、原作に手をつけてみようかなと思っています。舞台の感想、かえで様と同感する部分がとっても多くて、そういう意味でもますます興味が向いているところです。また舞台にも行くつもりです(とはいえまだチケット手配してませんが)。

こちらにもまたおじゃまさせていただきますね。
いらっしゃいませ。 (かえで)
2006-01-27 10:58:36
コメントありがとうございます。

四季はもう20年くらい観ているのですが、

「きゃー○○さんすてきー!」みたいな領域は

どうやら抜けてしまったみたいなので

どうしても冷淡なレヴューになりがちですがお許しください。

まぁ、わたしの感想はどれも冷たい気がしますが・・・



『鹿鳴館』はとってもよい戯曲です。

ぜひ原作もお読みください。

ただ「三島由紀夫の最高傑作」かどうかは保障いたしかねますが・・・
はじめまして (まゆみ)
2006-01-28 22:49:53
トラックバック、ありがとうございます。

お若い方のようですが、四季暦20年ですか・・・凄いですね。私なんて昨年の3月からですので、まだまだ初心者です。今は、片っ端から観ている感じです。



役者さんを好きになって入った四季なんで、観方も今は「好き好き!!」みたいな感じでかなり贔屓目だと思います(^_^;)原作もほとんど読んでませんしね。

かえでさんの感想を読んで「凄い人だなぁー、深いなぁー」と・・・

いらっしゃいませ。 (かえで)
2006-01-29 18:06:35
コメントをいただきましてありがとうございます。

四季暦20年ってわたしの年齢だとかなりありえないですよね・・・

むしろちょっと恥ずかしいです・・・

偶然にも母が芝居好きだったのが幸いして今に至ります。

もっとも、母はそれがもとでわたしがやくざな仕事をしているのを

後悔しているみたいですけど、後の祭りです。



すごいなんてとんでもないです。

わたしもひどくミーハーなのでお気軽に遊びにきてください。
はじめまして。。 (Can)
2006-02-06 13:16:27
 かえでさん,こんにちは。 はじめまして。

 tbありがとうございました。

 かえでさんのレビューを読ませていただいて,まだまだだなぁと実感しました(^^;)

 私も四季暦が浅くてですね~。。ストプレ自体も初でした。

 今週,3度目を見てまいります。

 久雄が福井さんに交代されたので,また違った印象を受けるかな~と楽しみです(^^)
いっらしゃいませ。 (かえで)
2006-02-10 21:02:18
お返事遅くなりまして、申し訳ありません。

ご足労いただきありがとうございます。

もう3回目!なのですね。

わたしにはその熱意はもはやありません。

ぜひまた感想をお聞かせください。

コメントを投稿

芝居のこと」カテゴリの最新記事